ぶどうの房の形状をした肺胞の壁にあたるところ(肺胞壁)に、なんらかの原因で炎症や障害が起こり、しだいに肺胞壁が厚くなるとともに硬い組織へと変化(線維化)する病気です。病原体が肺内に侵入して起こす通常の肺炎とは異なり、病気が伝染することはありません。線維化が進行すると息切れやせきがひどくなり、体力が低下します。
なお、原因が特定できない特発性間質性肺炎は国が指定する難病医療費助成制度対象疾病(指定難病)の一つです。
[原因]
間質性肺炎は特発性間質性肺炎と、関節リウマチなどの膠原(こうげん)病や鳥関連、薬剤、アスベスト曝露(ばくろ)などによるじん肺などの原因があきらかな間質性肺炎に分かれます。特発性間質性肺炎は、
胸部CT(コンピュータ断層撮影)検査で、蜂の巣状の所見が特徴的な特発性肺線維症とその他に分かれます。
特発性肺線維症以外の診断は手術で肺の一部の組織を採取して確定する必要があります。
最近エアコンなどの空調機や加湿器、および羽毛布団やダウンジャケット使用による
過敏性肺炎の報告がふえてきています。CT検査の所見など検査結果は間質性肺炎ととても類似しています。原因調査のため、環境因子の確認もとても重要です。
[症状][診断]
病気の初期には症状がないこともありますが、進行すると、たんのないせきや、坂道や階段をのぼるときなどの息苦しさがみられます。ゆっくり進行するケースでは、自分では症状の変化に気がつかないこともあります。健康診断の際に、
胸部単純X線検査を受けることによりはじめて間質性肺炎を指摘されることも多いです。
胸部単純X線検査では、左右の肺に淡いすりガラス様の陰影から粒状、網目状、リング状などさまざまな異常影がみられます。また、病気が進行した場合には肺が硬くなり、息を吸っても十分にひろがらず縮小化して、X線写真では横隔膜の陰影が挙上している像が観察されます。
胸部CT検査では、病巣の微細な陰影を観察することが可能です。病変の分布や性質をみることにより、どのような種類の間質性肺炎かを推測することができます。
血液検査では、白血球、CRP、LDHの増加がみられ、間質性肺炎の病勢を確認するにはKL-6、SP-Dなどがバイオマーカーとして役に立ち、病気の悪化とともに高値を示します。
呼吸機能検査では、低酸素状態を検出するための動脈血液ガス分析や酸素飽和度、肺活量、肺拡散能(DLco)など低下をしていないか確認します。労作時の呼吸困難、低酸素を認めるケースで予後不良であるとされます。診療では6分間歩行試験をおこない歩行などの労作での低酸素があるかを見極めます。自宅でパルスオキシメータを用いて、からだの酸素不足は測定できます。日常生活でも何かしらの労作で酸素飽和度が低下するようであれば間質性肺炎が進行性である可能性が高いため、治療導入を検討します。
さらに、類似の画像所見を認めることがある過敏性肺炎、サルコイドーシス、がん性リンパ管症など特有の病像を示す病気を除外するために、気管支鏡を用いて肺の細胞(気管支肺胞洗浄)や組織(経気管支肺生検)を採取することもあります。
[治療]
特発性以外の間質性肺炎では、原因となっている病気の治療に準じます。
特発性肺線維症では、呼吸機能悪化の進行抑制を目標に抗線維化薬であるニンテダニブやピルフェニドンを治療に用います。ニンテダニブは特発性以外の間質性肺炎でも線維化が進行しているあらゆる間質性肺炎で用いられます。特発性肺線維症以外の特発性間質性肺炎の治療は、炎症を軽減させるための副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬が一般的に使用されます。低酸素状態に進行した場合には、自宅でも酸素療法をおこないます(在宅酸素療法)。これは息切れなどの症状の改善と、心臓など酸素不足で負担を受ける臓器の負担軽減が目的です。
また、かぜや気管支炎などにかかることなどにより急激に悪化する、いわゆる急性増悪(ぞうあく)を生じることがあるので、かぜへの一般的な注意とインフルエンザや肺炎球菌のワクチンなどの予防接種による感染対策が必要です。最近では
COVID-19も同様に考えられており、新型コロナウイルス感染による間質性肺炎の悪化も懸念されます。急性増悪と判断されれば、ステロイド大量療法をおこないます。喫煙はこの病気を悪化させる要因であり、必ず禁煙が必要です。
(執筆・監修:順天堂大学大学院医学研究科 助教〔呼吸器内科学〕 加藤 元康)
医師を探す
- 診療科
-