心房細動治療において、カルシウム拮抗薬ジルチアゼムはレートコントロール薬としてよく処方されるが、血栓塞栓症の予防に用いられる直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)と併用するとDOACの排泄を阻害し、過剰な抗凝固作用を引き起こす可能性がある。米・Vanderbilt University School of MedicineのWayne A. Ray氏らは、DOACを投与されている高齢の心房細動患者を対象に、ジルチアゼム併用による重篤な出血イベントの発生を、シトクロムP450(CYP)3A4およびP-糖蛋白質を阻害しないβ遮断薬メトプロロールの併用と比較する後ろ向きコホート研究を実施。メトプロロール併用に比べ、ジルチアゼム併用で重篤な出血リスクが大幅に上昇することを、JAMA2024年4月15日オンライン版)に発表した(関連記事「SSRI+経口抗凝固薬で出血リスク3割増」、「フレイル合併AFにはDOACよりワルファリン!?」)。

メトプロロール併用と比較

 DOACとジルチアゼムの併用による過剰な抗凝固作用は、ジルチアゼムがCYP3A4とP-糖蛋白質を阻害することにより、それらの代謝を受けるDOACの血中濃度が上昇するためと考えられている。一方、メトプロロールはCYP3A4とP-糖蛋白質を阻害しない。

 そこでRay氏らは今回、DOACを投与されている高齢の心房細動患者における重篤な出血イベントの発生を、ジルチアゼム併用とメトプロロール併用で比較する後ろ向きコホート研究を行った。

 対象は、2012年1月1日~20年11月29日にアピキサバンまたはリバーロキサバンと、ジルチアゼムまたはメトプロロールの処方が開始された65歳以上の心房細動患者20万4,155例(平均年齢76.9±7.0歳、女性52.7%)。

 主要評価項目は、出血関連の入院と出血に伴う死亡の複合。副次評価項目は、主要評価項目の個別の要素、虚血性脳卒中または全身性塞栓症、主要な虚血性または出血性イベント(虚血性脳卒中、全身性塞栓症、頭蓋内出血または致命的な頭蓋外出血出血に伴う死亡)、出血に伴わない死亡とした。 ハザード比(HR)と率差(RD)は、重み付け法を用いて共変量の差に合わせて調整し算出した。

 365日後、Medicare登録からの除外、DOACまたはレートコントロール薬の処方日数が30日超、他の経口抗凝固薬またはレートコントロール薬の開始、複合イベントの発生、2020年11月30日のいずれかまで追跡した。データの解析は、2023年8月~24年2月に行った。

重篤な出血リスクはメトプロロール併用時の1.21倍

 ジルチアゼム群は5万3,275例、メトプロロール投与群は15万880例だった。両群とも34.1%にリバーロキサバンが、78.8%に標準用量の抗凝固薬が投与されていた。ジルチアゼム群の48.6%は開始用量が120mg/日以下だった。

 9万927人・年(中央値120日、四分位範囲(IQR)59〜821日)の追跡期間中に、主要評価項目とした複合イベントが5,269件(出血関連の入院3,869件、出血に伴う死亡1,400件)発生した。

 メトプロロール群に比べジルチアゼム群では、複合イベントの発生リスクが有意に高かった(3,709件 vs. 1,560件、1,000人・年当たりのRD 10.6、95%CI 7.0~14.2、HR 1.21、95%CI 1.13〜1.29)。また、出血関連の入院リスク(2,740件 vs. 1,129件、同8.2、5.1〜11.4、1.22、1.13〜1.31)、出血に伴う死亡リスク(969件 vs. 431件、同2.4、0.6~4.2、1.19、1.05〜1.34)も有意に高かった。

ジルチアゼム120mg/日超でさらにリスク上昇

 ジルチアゼムの用量別に検討したところ、複合イベントの発生リスクは初期用量が120mg/日以下の場合に比べ(1,000人・年当たりのRD 6.7、95%CI 2.0〜11.4、HR 1.13、95%CI 1.04〜1.24)、120mg/日超の場合(同15.1、10.2〜20.1、1.29、1.19〜1.39)で高かった。

 副次評価項目とした主要な虚血性または出血性イベントについて、初期用量が120mg/日以下ではリスク上昇はなかったが(1,000人・年当たりのRD -0.5、95%CI -4.0〜3.1、HR 0.98、95%CI 0.87〜1.11)、120mg/日超で有意なリスク上昇が示された(同4.4、0.7~8.0、1.14、1.02~1.27)。

 虚血性脳卒中または全身性塞栓症、出血に伴わない死亡リスクについては初期用量による有意差はなかった。

 以上から、Ray氏らは「アピキサバンまたはリバーロキサバンを投与している高齢の心房細動患者において、メトプロロール併用に比べジルチアゼム併用は、重篤な出血リスクの有意な上昇と関連していた。特に、ジルチアゼムの用量が120mg/日超でリスクはより高くなることが示された」と結論している。

(宇佐美陽子)