大阪大学大学院中性脂肪学共同研究講座特任教授の平野賢一氏、中性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)患者会(共同代表:川村郁子氏、望月稔仁氏、代表世話人:橋本千佳子氏)は2月26日、日本において見いだされた希少・難治性疾患であるTGCVに関する会見を厚生労働省で開いた。TGCVは重度心不全を来し、死亡例が発生し続けている。第54回厚生科学審議会疾病対策部会指定難病検討委員会では、専門家の意見や患者団体の声が受け入れられなかったという。平野氏らは引き続き1日も早い指定難病の認定取得に取り組む構えを見せた。(関連記事「中性脂肪蓄積心筋血管症、難病指定に決意」「TGCV、1日も早い難病指定を!」)
レジストリ研究でトリカプリン療法群の5年生存率は100%の成績
TGCVは、平野氏が2008年に見いだした細胞内におけるトリグリセライド(TG)の分解障害により心筋および血管平滑筋細胞にTGが蓄積する希少・難治性疾患(N Engl J Med 2008; 359: 2396-2398)。血中TG値や肥満とは無関係なため、心筋脂肪酸代謝シンチグラフィにより診断する。
昨年(2024年)10月時点における国内のTGCV患者は991例(全国の医療機関150カ所で診断)、うち死亡は145例(14.6%)確認された。TGCVは心不全、狭心症、不整脈などの症状を呈し、死亡に至ることもある重篤な心疾患だが、近年見いだされたため認知度が極めて低い。そこで同氏らは、TGCVへの対応の重要項目として、治療薬の早期承認および指定難病の認定に向け、取り組んでいる。
治療薬の早期承認については、母乳にも含まれTGCVにおける細胞内TGの分解障害を改善するトリカプリンを主成分とする治療候補薬CNT-01を同氏らが開発。2020年6月に先駆け医薬品指定/希少疾病用医薬品に指定され、国内で治験が進行中だ(関連記事「厚労省・3医薬品を先駆け審査対象に」「中性脂肪蓄積心筋血管症治療薬CNT-01の国内第Ⅱb/Ⅲ相を開始」「早期承認を目指す阪大発TGCV治療薬」)。
今年、同氏らはレジストリ研究の結果としてトリカプリンによる5年生存率を報告している(Nat Cardiovasc Res 2025年2月13日オンライン版)。それによると5年生存率は、非トリカプリン療法群の約70%に対し、トリカプリン療法群では100%と有意に高く(調整後ハザード比0.12、95%CI 0.02~0.93)、今後は承認申請後の速やかな承認が待たれる。
指定難病の認定要件を満たないとの判断には疑問も
指定難病の認定については、指定難病検討委員会において2021年、昨年の2回審議され、いずれも認定が⾒送られた。また患者会によると、昨年の検討委員会では平野氏ら専門家の意見や患者団体の声は受け入れられなかったという。
2021年にはTGCV患者70例(491例中14.3%)の死亡が確認されており、前述したように2020年から昨年までの死亡は計145例にも上った。橋本氏は、会員患者の苦悩として「死への恐怖」「TGCVが知られていない医療機関でのたらいまわし、(生活習慣病との混同による怠惰などの)心もとない言葉」「指定難病ではないため高額な医療費、生活・就業の不安」などを紹介。「検討委員会にはTGCV専門家の意見と難病患者の切実な声を受け止めていただくとともに、国には一刻も早い指定難病の認定をしてもらいたい」との患者会の総意を要望した。
指定難病の認定には、いわゆる難病法で定められた次の要件を満たす必要がある。
①発病の機構が明らかでない
②治療法が確立していない
③長期の療養を要する
④患者数が人口の0.1%程度に達していない
⑤客観的な診断基準等が確立している
平野氏は「要件のうち、複雑な症状を呈する患者のグループ化を目的とした⑤のみ満たしていないとの説明を受けている」と述べた。⑤については、日常診療で運用、予後予測、特異的治療(あると望ましい)を可能とするものとされている。
しかし、厚労省研究班により『中性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)診断基準』が策定されており、日本核医学会、中性脂肪学会、日本冠疾患学会、日本心血管インターベンション治療学会から承認を得ている。さらに診断に用いるBMIPPシンチグラフィによる洗い出し率の算出については、日本核医学会と日本心臓核医学会が推奨論文を発表。TGCV診断基準は国際的な学術誌にも掲載されている。
こうした点を踏まえ、同氏は「これからを生きる命を守るため、1日も早いTGCVの指定難病の承認と医薬品の早期承認を目指す」と取り組みの継続の意思を訴えた。
(編集部・田上玲子)
〔変更履歴2025年3月10日〕:発言者の記載が漏れていたため、追記しました