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コロナ禍で二極化する運動習慣
~活動量増やすためにできること~ 医学博士 福田千晶

 新型コロナ感染拡大により、私たちの生活はいろいろ変化しました。外出を控えてステイホームを心掛けたり、職場によってはリモートワークになったりして、運動不足の人が増えましたが、最近は少し様子が変わってきたようです。

一生の健康管理に大事な運動習慣

 ◇最初は運動不足

 運動に関しては、スポーツクラブが一時的に閉鎖されたり、時間短縮営業になったりして、退会や休会しているという人もいます。学校や公共の施設のグラウンドやコートを借りて行っていたスポーツは、グラウンドやコートが使用不可になって、運動ができない状態になっている所も多いそうです。

 リモートワークでは、通勤での歩行がないので1日の歩数が1000歩にも満たないこともあります。そのため、人間ドックや健康診断の受診者でも、コロナ禍で体重が増加したり、検査結果が悪化したりしている人が目立ちます。

 しかし、今年の夏頃から、「こんなに運動不足ではいけない」「体重がすごく増えていて驚いた」「昨年、秋の人間ドックで検査値が悪化」などの気付きから、運動不足を反省して生活を改善し、コロナ禍でも実践できるように工夫して運動し始めた人たちがいます。

東京五輪も人々の運動意欲を刺激したかも=8月8日、札幌市

 ◇二極化する運動習慣

 私は人間ドックや健康診断の受診者を年間2万人近く診察していますから、いろいろな人の話を聞くことがあります。コロナ禍でも運動習慣がライフスタイルに組み込まれている人たちの話には、興味深い共通点があります。

・もともと運動習慣があった

 コロナ禍になる以前から運動習慣があった人は、体を動かすことが好きです。スポーツ施設の都合などで中断しているだけなので、最近は運動できるように工夫し始めています。

 リモートワークの人は、朝の仕事前にウオーキングやジョギングをしたり、仕事の合間に筋トレをしたりしているようです。緊急事態宣言が発出されている地域では、スポーツ施設は午後8時で閉まるので、そこに間に合うように、仕事を効率良く早めに終わらせるようになったという人もいます。そして「やはり体を動かすとスッキリする」となるのです。

・運動習慣はなかったが学生時代は運動部

 学生時代は運動部だったけど、社会人になってからは運動する機会がなかったという人もいます。このタイプの多くの人は、がっちり体形に脂肪が付いた小太りで、生活習慣病も指摘されています。活動的なのにステイホームで動くことが減り、さらに家飲みで飲酒量は増加傾向、その上、リモートワークになったら、ますます体重は増加します。血圧、血液検査での肝機能や、脂質や血糖値や尿酸値が悪化すると、いよいよ「このままではマズい」と気付きます。

 運動経験者は、ウオーキングやランニングは、やる気になれば簡単に開始できます。さらに、かつて部活などで行った、腹筋運動や背筋運動や腕立て伏せのような筋力強化運動も併せて行うこともできます。コロナ禍で、ますます運動不足になったことを機に、新たに運動することを始めたわけです。

 一人でバスケットボールやサッカーなどのスポーツはできなくても、当時は毎日のように行っていた走ることや筋力強化のやり方は分かっているので、現在の自分の体力や目的、ライフスタイルに合わせて運動することは決して難しいことではありません。このような人と診察室で出会うと「一生の健康管理のために、教育の一環としての運動経験は意味がある」と、つくづく思います。

今より10分多く体を動かすようにしてみよう

 ◇運動嫌いの人が体を動かすために

 一方、幼い頃から運動が苦手だったり、嫌いだったりした人もいます。病弱だったり、健康上の理由で小中学生時代も運動があまりできなかったりした人もいます。学校や家庭の教育方針で「運動部になんて入らないで勉強しなさい」と、運動を重視されなかった場合もあるでしょう。運動に対して苦手なもの、嫌いなもの、無駄なものという意識があり、マイナスイメージを抱いています。ですから、診察室で運動の継続をアドバイスしても「運動? 私には無理、無理! できませんよ」と、爆笑されたりします。

 リモートワークになると、体を動かすチャンスだった通勤で歩くこともなくなります。趣味の旅行や美術館巡りも控えがちです。買い物も感染予防のため、スーパーマーケットに行く頻度を減らしたり、通販を利用したりするなど、ますます運動不足になっています。

 このタイプの人々で、コロナ禍で新たに運動する習慣が付いた人は残念ながらあまりいません。この人たちに「運動しましょう」とアドバイスしても、効果的とは思えません。しかし、ごく少数派ですが、コロナ禍でも運動や活動量増加が実行できた人もいます。その人たちの話には、まねできることもありそうです。

・家から徒歩20~30分の場所にある神社、公園、図書館、コーヒーショップ、ヘルシーフードの小売店などを見つけ、そこまで歩いていく。往復で1時間くらいは、目的があると苦痛なく歩けることもある。

・家の近所を歩いてみると、意外な街の魅力に気付く。スマホで写真撮影などの楽しみが加わると継続しやすい。

・歩数計や、消費エネルギーや心拍数なども測定できる腕時計型の機器などを用いて、数値での実績をモチベーションにつなげる。

・窓ガラスやドアを拭く、風呂場の掃除、床を磨く、庭掃除、エレベーターは使わずに階段使用を厳守など、生活上の活動量を増やすことを頻回に行う。動作を大きくし、体も大きく動かし、運動の代わりにしたい。

・座っている時間を短縮する。仕事中やテレビを見ている時も、小まめに立ち上がって、ちょっとでも歩くように心掛ける。

 運動に縁がなかった人でも、このような工夫をして体を動かすように心掛け始めた人たちがいます。そんな人がさらに増えることを期待しています。

 ◇まずは「プラス10」から

 長引くコロナ禍で、二極化している運動習慣、相変わらず運動不足生活が続いている人もいっぱいいます。

 厚生労働省の「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」では、「1日60分、体を動かすこと」を推奨しています。ちなみに60分は、連続した時間でなくてもかまいません。

 いきなり60分は無理と感じるなら、まずは「+10(プラス・テン)」で、今より10分多く体を動かすように心掛けることを推奨しています。気合を入れて行う運動だけでなく、動画をお手本にダンスをしたり、家族でフィットネス系ゲームを楽しんだり、室内でできることもあります。

 コロナ禍でも行えた体を動かす習慣は、その後の人生でも継続しやすいはずです。二極化する運動習慣ですが、一人でも多くの人が「運動習慣有り」のグループに入ることを期待しています。(了)


福田千晶氏

 ▼福田千晶(ふくだ・ちあき)

 慶応義塾大学医学部卒業、医師として東京慈恵会医科大学病院リハビリテーション科勤務を経て、クリニックでの診療と産業医業務を行う。勤務医時代に、エッセーや論文のコンテストでの受賞などをきっかけに執筆活動も開始し、健康に関するテーマで著書や監修書は多数。

 日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本人間ドック学会人間ドック健診専門医、日本リハビリテーション医学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本体力医学会健康科学アドバイザー。


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