2025年に新型ワクチン―インフルエンザ
~リスク大きい高齢者に朗報~

埼玉医科大学医学部国際医療センターの関雅文教授
◇「弱者」に大きなダメージ
関教授によれば、ワクチン接種の減少は世界的な傾向だという。背景には「インフルエンザは新型コロナウイルス感染症ほど大変ではない」という誤解があるようだ。インフルエンザはただの風邪とは違う。38度以上の高熱を発し、体の節々が痛いなどの全身症状が出る。特に、高齢者と子どもという「弱者」に対するダメージは大きい。
子どもではインフルエンザウイルス感染が原因で脳炎や脳症になる恐れがある。「まひや意識障害が残り、取り返しがつかないこともある」。このシーズンも脳炎と脳症の患者が報告されている。一方で高齢者にとって最も怖いインフルエンザの合併症は肺炎だ。肺炎による高齢者の死亡者数は、がんと心疾患を除くと、極めて多い。関教授は「インフルエンザに感染して肺にダメージを受けた後、肺炎球菌など細菌の感染で肺炎にかかると相乗効果で重篤な状態に陥りやすい」と警告する。
◇マスク、手洗いは変わらず大事
インフルエンザは数年あるいは数十年ごとに大きな流行を繰り返す。備えは毎年、必要だ。
インフルエンザの感染パターンはくしゃみやせきによる飛沫(ひまつ)感染が主だ。加えて、感染者が触ったドアノブなどに触れることで感染する接触感染もある。「新型コロナウイルス感染症で一時話題になったエアロゾルはどうか。関教授は「インフルエンザウイルスに関しては、いわゆるエアロゾル感染や空気感染は認められていない」と言う。新型コロナウイルス感染症以上に、マスク着用と手洗いやアルコールによる手指衛生が大事な予防対策であることは変わらない。
新型コロナウイルス感染症が5類に移行する前には、多くの人が冬になると始終、マスクを着けていた。関教授は「インフルエンザの流行時期だけでもマスクを着けてほしい。自分への感染を予防すると同時に、他人にうつさないという咳(せき)エチケットも大事だ」と強調する。
手洗いも効果的だ。手で咳やくしゃみを受け止めた手で触ったドアのノブに触れることにはリスクを伴う。関教授は「冬の乾燥した時期だと、くしゃみから飛び散ったウイルスは数分から1時間ほどは生存している可能性があると報告されている」と話す。
◇高齢者の感染・重症化予防に有効
インフルエンザの予防における第一選択肢がワクチン接種であることに変わりはない。2024年12月に日本での製造・販売が承認された新しいワクチンは、標準のワクチンに比べて含まれる抗原量が4倍の高用量ワクチンになっている。インフルエンザによる深刻な合併症のリスクが高い高齢者層のために開発され、既に海外で使われている。関教授は「高齢者の発症予防に関して優れた有効性を示し、臨床試験で肺炎などによる入院や関連する合併症のリスクをさらに低下させる可能性が示された」と言い、日本でも広く使用されることを期待している。(鈴木豊)
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(2025/04/02 05:00)
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