「医」の最前線 「新型コロナ流行」の本質~歴史地理の視点で読み解く~
これからの新型コロナ
~「第二のインフルエンザ」か「風邪の一つ」か~ (濱田篤郎・東京医科大学病院渡航者医療センター特任教授)【第72回(最終回)】
インフルエンザの予防接種を受ける小学生
◇第二のインフルエンザ
この二つのパターンであれば、当面、新型コロナはインフルエンザ型になっていくと考えます。
そもそも、現在の新型コロナの流行を見ると、それはインフルエンザに近いものになりつつあります。例えば、変異ウイルスが定期的に出現する傾向も似ていますし、重症度もほぼ同じになってきています。こうした状況から、これから先、新型コロナは第二のインフルエンザとしての対策を取ることが必要になるでしょう。
そして今後、人々の新型コロナウイルスに対する免疫が高まり、ウイルス側の変異も少なくなれば、将来的には風邪型に移行する可能性もあります。もし、乳幼児世代で免疫が低くなる場合は、麻疹や風疹のように小児の感染症として流行することも長期的にはあるかもしれません。
このように、当面、新型コロナはインフルエンザ型の呼吸器感染症になると考えられますが、インフルエンザとの違いも幾つかあります。まず、新型コロナは冬だけでなく夏にも流行することや、後遺症の出現が多いこと。また、高齢者などにウイルス性肺炎を起こすリスクがより高いことです。こうした違いも考えながら、新型コロナへの対策を続けていくことが必要です。
◇新たな未知のウイルスの流行も
新型コロナウイルスの流行は、過去に類を見ない珍しい出来事でした。今回はそれを何とか乗り越えられましたが、同様な未知のウイルスの世界的流行は今後も起きると予想されます。この件に関しては、本連載の第69回で解説してありますので、ご参照ください。(https://medical.jiji.com/column4/197)
新型コロナの流行は、感染症がこれからも私たちの健康上の脅威になることを再認識する、貴重な経験になりました。人類という生物が地球上で生存を続けるためには、常に感染症の脅威を意識しつつ、その対策を継続する必要があります。今回の流行には、そのような本質的な意味があることを知っていただければと思います。
本連載「新型コロナ流行の本質」は今回をもって終了いたします。来年1月からは新しい連載として「感染症・流行通信」を開始します。新型コロナだけでなく感染症全般の最新情報について、歴史地理の視点を織り交ぜながら解説する予定です。(了)
濱田特任教授
濱田 篤郎(はまだ・あつお)氏
東京医科大学病院渡航者医療センター特任教授。1981年東京慈恵会医科大学卒業後、米国Case Western Reserve大学留学。東京慈恵会医科大学で熱帯医学教室講師を経て、2004年に海外勤務健康管理センターの所長代理。10年7月より東京医科大学病院渡航者医療センター教授。21年4月より現職。渡航医学に精通し、海外渡航者の健康や感染症史に関する著書多数。新著は「パンデミックを生き抜く 中世ペストに学ぶ新型コロナ対策」(朝日新聞出版)。
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(2023/12/21 05:00)
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