こちら診察室 内視鏡検査・治療と予防医療
「血糖値が高い」と言われたら?
~放置できない糖尿病のリスク~ 【第9回】
◇血液・尿検査や諸症状で診断
糖尿病の診断は血液検査や尿検査、「しめじ」をはじめとした合併症の存在、口渇、多飲、多尿、体重減少などの症状を勘案した上で、高血糖状態が慢性的に続いていることによって下されます。診察時には今までの病歴、家族の既往歴なども尋ねられます。

四谷内科・内視鏡クリニックのホームページより
血液検査で注目すべき項目は二つあり、一つが血糖値、もう一つが赤血球中のヘモグロビンに結合したブドウ糖の量であるHbA1cです。
血糖値とは血液中に含まれるブドウ糖の量で、空腹時血糖値125ミリグラム(1デシリットル当たり)が糖尿病の基準として知られています。110~125ミリグラムは境界型や糖尿病予備軍と呼ばれ、すでに血糖値が上がり始めて異常が見られる可能性もあるため注意が必要です。境界型との結果が出た場合はすぐに専門医に相談してください。100~109ミリグラムは正常高値と呼ばれ、正常範囲内ながら血糖値はやや高めです。まれではありますが糖尿病や境界型の方もいますので、早めの精密検査を勧めます。
次にHbA1cです。赤血球は体内で作られて壊される過程を120日ごとに繰り返していますが、HbA1cを見ることで過去1~2カ月の平均血糖値を予測できます。HbA1c6.5%以上は糖尿病と考えてよく、6.0~6.4%を糖尿病予備軍、5.6~5.9%を正常高値と判断します。年齢とともにインスリンを分泌する力は落ちていくため、5.6%以上の正常高値を放置すると糖尿病へ進行していくリスクが高く、注意が必要です。
空腹時血糖値100ミリグラム、HbA1c5.6%以上と指摘された場合には糖尿病のリスクが高いと考え、精密検査を受けた方がよいでしょう。肥満と密接に関連する腹囲、脂肪肝との関連が見られる肝機能や血中脂質なども糖尿病を疑う材料となるので、検診結果が手元にある場合は確認してみてください。

出典:日本糖尿病学会・糖尿病診療ガイドライン2024
◇専門医に相談を
日本糖尿病学会のガイドラインでは、以下の二つに当てはまると糖尿病と診断されます。1回目の検査で疑いがあるとされてから2回目の検査で確定診断となるケースも多く、必ずしも1度で判断できるわけではありません。自分は疑いの段階にとどまったからと安心せず、専門医の判断を仰いでください。
● 空腹時血糖値、75グラム経口ブドウ糖負荷試験、随時血糖値のいずれかの異常
● HbA1cの値が異常、または典型的な糖尿病の症状ないし糖尿病性網膜症がある
血糖値が慢性的に高い状態が続くと全身の血管や神経に悪影響を及ぼすため、糖尿病は放置してはいけません。適切な対策を行えば健康的な生活を送ることは十分可能です。困り事・心配事があれば、ぜひ医師に相談してください。(了)

高木院長
高木謙太郎(たかぎ・けんたろう)
2007年東京慈恵会医科大学卒。同大学付属柏病院、東京都立墨東病院、東京都保健医療公社豊島病院などを経て22年5月に四谷内科・内視鏡クリニック(新宿区)を開業。「胃がん、大腸がんで亡くなる人をゼロに」をミッションに、人と人のつながりを大切にした、専門的で高度な医療を提供している。
【参照】
1. https://www.jds.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=2
2. Huxley R, et al.: BMJ, 2006; 332; 73‒78
3. Iso H, et al.: Diabetologia, 2004; 47; 2137-2144
4. 一般社団法人日本糖尿病学会:糖尿病合併症についてhttps://www.jds.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=3
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(2025/03/24 05:00)
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