山口清次 医師 (やまぐちせいじ)

島根大学医学部附属病院

島根県出雲市塩冶町89-1

  • 小児科
  • 科長、教授

小児科 内科

専門

先天性代謝異常、有機酸・脂肪酸代謝異常症、新生児マススクリーニング

山口清次

小児科専門医、臨床遺伝指導医。1980年代初め、日本の小児科医としては早い段階から質量分析(GC/MS、タンデムマス)を用いた先天性代謝異常の研究をスタートさせたことで知られる。その実績から厚生労働省「新生児マススクリーニング研究班」の代表者となり、障害予防事業として新生児マススクリーニングに「タンデムマス分析」を導入する研究を推進、普及に尽力してきた。小児科における予防医学の確立に向け、発症予防の技術、早期発見の技術、さらに治療技術の向上に努め、国際的にも高い評価を得ている。

診療内容

日本では1977年よりすべての新生児に対する検査として、「マス・スクリーニング」が行われてきた。これは「ガスリーテスト」と呼ばれ、血液検査により先天性代謝異常の6疾患(フェニルケトン尿症、ホモシスチン尿症、メープルシロップ尿症、クレチン症、先天性副腎過形成、ガラクトース血症)があるかを調べるものであった。先天性代謝異常とは、生まれつき体内に酵素が欠損している状態で、代謝の流れ(栄養の消化・吸収)が障害されて体内に有害な物質が蓄積したり、必要な栄養がうまく消化・吸収できず、放置すると障害が生じる病気である。
先天性代謝異常に詳しい山口医師によると、これらの病気は決して多くはない稀少疾患であるという。「なかには突然死や急性脳症、発達遅滞を伴うこともありますが、稀な病気であるために専門医が少なく、一般小児科の医師にもなじみが少ないのが難点です」
山口医師は2004年より厚生労働省研究班の代表者として、ガスリーテストに代わる「タンデムマス法」の試験研究に携わり、全国への普及に尽力してきた。タンデムマス法はガスリーテストと同様の採血方法であるが、検査できる代謝異常が20種類以上にも増え、見逃しも少ない。アミノ酸血症のみならず、有機酸・脂肪酸代謝異常もスクリーニングできる。タンデムマス法は1990年代から開発され、2000年以降欧米を中心に普及しつつある。日本では数年前より新生児マススクリーニングへの導入が図られ、この研究班の研究成果をもとに2014年度からは全国の自治体に普及する見込みである。同院は同検査法の試験研究段階から関わってきただけに、全国からの診断依頼に加え、海外の病院・研究機関との共同研究も盛んである。
タンデムマス法の重要性について山口医師は次のように指摘する。「生まれつき異常(先天代謝異常)があっても、生後すぐに検査で病気が把握できれば、適切な生活指導・栄養指導を受けることによって正常な発育が期待できます。反対に、知らずに放置すればいつか発症して障害につながることが少なくないことも事実です。生後間もない時期に早期発見によって障害が防げるものなら、一人でも多くの子どもを救ってあげたいのです」
つまり先天性代謝異常の早期発見のために有効なのがタンデムマス法という訳だ。治療に際しては、治療用に作られた特殊ミルクや薬剤の投与、あるいは病気に応じた生活指導を受けることによって発症を防ぐことができる。
ただし、現時点ではすべての先天代謝異常の治療・予防法がある訳ではない。「マススクリーニング事業はただ検査するだけではなく、正確な情報を提供することが欠かせません。国内各地域で、ある程度の知識を持った中核となる医師を置いて、その人たちが患者の予後を把握しながら、全国的な医療ネットワークの窓口となり、どの地域でも一定の診療レベルを維持できるような体制が必須です」(山口医師)
疾病予防の観点から、今後の小児医療の方向性について山口医師はこう話す。「健康を守るということは“病気を治す”と“病気にさせない”の2つの意味を持ちます。小児科では子どもを病気にさせない、つまり【予防医学】が重要なテーマです。現在は少子化が大きな問題ですが、生まれた子どもたちの障害を予防し、あるいは障害福祉に力を入れて、万一障害のある子がうまれたときも国が責任を持ってサポートし、安心して産める社会こそが、少子化対策にもつながると思っています」

医師プロフィール

1975年3月 岐阜大学医学部 卒業
1977年1月 岐阜市民病院小児科
1978年4月 東京都立豊島病院小児科
1980年4月 岐阜市民病院小児科
1981年4月 岐阜大学医学部小児科助手
1982年 GCMSを用いた有機酸代謝異常症の診断に関する研究を開始
1984年 徳島大学酵素化学研究センター
1986年 世界で初めて有機酸代謝異常症の1つ、βケトチオラーゼ欠損症の原因を同定して報告
1987年6月 岐阜大学医学部小児科講師
1989年度 日本先天代謝異常学会IBM奨励賞
1992年 エール大学遺伝学研究所。極長鎖アシル-CoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症の世界初例を同定
1993年8月 島根医科大学小児科教授(大学統合により2003年10月島根大学医学部小児科教授)
2004年度 日本先天代謝異常学会賞
2012年度 日本医用マススペクトル学会・松本賞