児玉悟 医師 (こだまさとる)

大分大学医学部附属病院

大分県由布市挾間町医大ヶ丘1-1

  • 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
  • 外来医長、講師

耳鼻咽喉科 頭頸部外科

専門

鼻副鼻腔疾患、アレルギー疾患

児玉悟

内視鏡下副鼻腔・頭蓋底手術、鼻中隔外鼻形成術のエキスパートである。慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎、さらに外鼻変形を伴う鼻中隔弯曲症に対する手術に手腕を発揮している。内視鏡下鼻内手術の工夫・改良を重ね、鼻副鼻腔疾患から頭蓋底病変に適応を拡大している。京都大学内視鏡下鼻内手術解剖実習のインストラクターを務めるなど、技術の普及、教育にも努めている。研究面においても鼻科学、上気道粘膜免疫学が専門であり、1999年第4回国際扁桃粘膜免疫学会(ゲント)学会賞、2005年第25回ISIAN(サンパウロ)での学会賞、2011年第18回日本鼻科学会賞受賞、2011年第1回中塚医学賞(大分大学医学研究表彰)受賞など、国内外の学会でも活躍している。

診療内容

慢性副鼻腔炎、副鼻腔腫瘍に対する内視鏡下鼻内手術…副鼻腔とは鼻腔に囲まれた空洞を指し、慢性副鼻腔炎はその空洞に炎症が起きる疾患である。脳や目など重要な臓器が近くにあるので、手術には細心の注意を必要とする。「最近はハイビジョンを含めた内視鏡機器、CTなどの画像診断、ナビゲーション装置などの手術支援機器の発達により、内視鏡下副鼻腔手術は大きく発展しています」と児玉医師は言う。そういった最先端の手術機器に加え、児玉医師は常に手術手技の工夫や改良を行ない、治療成績の向上と体に負担の少ない患者にやさしい治療に努めている。手術のほとんどは全身麻酔下に行なわれる。
「慢性副鼻腔炎(いわゆる蓄膿)に対しては、副鼻腔の単洞化を基本としており、前頭洞などのアプローチが難しいと思われている部位に対しても、すべて鼻内からアプローチしています」(児玉医師)
副鼻腔は前頭洞、篩骨洞、上顎洞、蝶形洞の4つに分かれており、単洞化とは副鼻腔の骨の壁を取り払って複数の副鼻腔をひとつの大きな洞にすることである。前頭洞はとくに手術が難しいとされている。
「病態に合わせ手術方法を選択していますが、悪いところがすべて1回の手術で終わるよう心がけています。いまや鼻外切開を加えることはほとんどなく、また手術後に従来よく用いられてきた軟膏付きガーゼ(抜去時が苦痛となる)を挿入することもありません」(児玉医師)
術後の入院期間は1~7日間程度で、患者の希望に沿うようにしている。また「できるだけ術後は鼻洗浄によりセルフケアを行なって頂くようにしており、術後の鼻処置や通院も必要最小限にとどめています」と児玉医師。
「副鼻腔炎のみならず、腫瘍性疾患のうち、内反性乳頭腫に代表されるような良性腫瘍に対しては、顔面に外切開を加えることなく、すべて内視鏡下に切除しています。さらに嗅神経芽細胞腫に代表されるような鼻副鼻腔の悪性腫瘍(いわゆる“がん”)に対しても内視鏡下鼻内手術で切除可能と判断される症例に対しては積極的に鼻内手術を行なっており、放射線治療との組み合わせにより、良好な治療成績をあげています」(児玉医師)
内視鏡下鼻内手術のもう一つのメリットは頭蓋底病変やいわゆる脳腫瘍に対し、患者の負担が少なくなることにある。「従来の顕微鏡下手術に比べ、視野とワーキングスペースが優れているため、その適応は拡大しています。脳神経外科医とも協力して手術を行なっています」児玉医師は病院診療に加えて、内視鏡下鼻内手術の技術の向上と教育のために国内では年に2回開催される京都大学内視鏡下鼻内手術解剖実習(ベーシックコース、アドバンスコース)のインストラクターを務める傍ら、海外への研修にも積極的に参加し、世界水準、最先端の技術を習得すべく、手術技術を磨いている。
アレルギー性鼻炎に対する手術治療…「アレルギー性鼻炎の主な症状であるくしゃみ、鼻みず(鼻漏)、鼻づまり(鼻閉)は日常生活に大きな影響を及ぼします。アレルギー性鼻炎の治療は内服薬や点鼻薬が一般的ですが、患者さんの中にはお薬ではよくならない重症の方がいらっしゃいます。こうした重症の方に対しては積極的に手術治療を行なっています」と児玉医師は話す。「手術には外来での鼻粘膜焼灼術(局所麻酔)と入院での手術治療(全身麻酔)がありますが、治療効果という点では後者が圧倒的に優れています。手術方法は全身麻酔下に(痛みを感じることなく)、鼻中隔矯正術、粘膜下下鼻甲介骨切除術、後鼻神経切断術を同時に行なっています」(児玉医師)
鼻中隔は鼻腔を左右に隔てる壁で、これが曲がっていると鼻閉の原因になる。手術では弯曲した骨や軟骨を切除し、鼻中隔をまっすぐにする。下鼻甲介は鼻の中の粘膜ひだで、アレルギー性鼻炎では腫れがひどいことが多く、鼻閉の主原因となっている。「この手術では下鼻甲介の骨や粘膜下組織を減量し、鼻腔を拡げます。これらの2つの手術で重症の鼻閉は改善します。また鼻漏やくしゃみに対しては後鼻神経という神経を切断することで、過剰な鼻汁分泌やくしゃみを抑えることができます。鼻の本来の機能を損ねることのないよう、いずれも丁寧な手術を心がけています」(児玉医師)
手術はすべて内視鏡下で行なうので、患者への負担は少ない。手術時間は2~3時間で、1週間程度の入院が必要だが、希望により手術翌日の退院(短期滞在)も可能だ。「手術後、徐々に鼻症状は改善し、術後1ヵ月程度経過すると、かなり改善が得られ、日々の生活の中で快適さを実感されるようになると思います。お薬が不要になる場合がほとんどで、効果も長期間持続しますが、アレルギーそのものが治るわけではありませんので、わずかながら再燃もみられます」と児玉医師は話している。
外鼻変形を伴う鼻中隔弯曲症に対する手術…前述のように鼻中隔弯曲症は鼻閉をきたす代表的な疾患であり、鼻中隔矯正術は幅広い年代の耳鼻咽喉科医により、幅広い施設において行なわれている手術である。鼻中隔弯曲症の中には、特に重症例において外鼻(鼻の外へ突きだした部分)の変形を伴うこともあり、陳旧性(適切な治療を受けないまま時間が経過し慢性となった)外傷による鼻中隔弯曲症や鼻閉に対しては治療に難渋することも少なくないという。「このような外鼻変形を伴う鼻中隔弯曲症や前方の弯曲が顕著な症例では、通常の鼻内法による鼻中隔矯正術では、弯曲が残ってしまうこともあり、結果として鼻閉の改善が十分に得られず、術後に鼻閉の再発をきたすこともあります。また無理に前方の弯曲を処理しようとして鼻中隔軟骨の前方を過剰に切除すると術後に鞍鼻(鼻が低くなる)をきたすおそれがあります」と児玉医師。
もともと鼻中隔は軟骨と骨からなる平面的なものであるが、鼻中隔弯曲に関わる硬組織としては鼻骨や外鼻の軟骨が関与しており、外鼻形態も鼻閉に関与している。「したがって、一部の鼻中隔弯曲症では、その形態を平面的ではなく、立体的に考える必要があります。そういった外鼻変形を伴う鼻中隔弯曲症に対しては、外鼻と鼻中隔を立体的な一つの構造物と考え、両方を同時に矯正する鼻中隔外鼻形成術が有効です。鼻中隔の前端(鼻柱)にわずかに外切開を加えるものの、ほとんど傷は残りません。外鼻をまっすぐにするだけではなく、低い鼻を高くしたり(隆鼻)、鼻すじを通したり(鼻尖形成)、ワシ鼻を整えたり(整鼻)、症例に応じて、整容面にも配慮しています」(児玉医師)
ただし、手術の目的は鼻閉と整容の改善であり、美容が目的ではない。手術自体も保険適応となる。このような鼻中隔外鼻形成術は海外ではすでに一般的だが、日本では普及していなかった。そのため児玉医師は海外研修で手術技術を習得。日本の耳鼻咽喉科の中でいち早く診療をはじめた。症例数も全国トップである。同院への手術見学者も多く、また他施設への手術応援にも積極的に応じている。

医師プロフィール

1994年3月 福井医科大学(現福井大学)医学部卒業、医師
1994年4月 大分医科大学(現大分大学)耳鼻咽喉科入局
1996年4月 大阪大学微生物病研究所 研究生 (~1997年7月)
2000年6月 大分医科大学大学院 博士課程修了、医学博士
2000年7月 大分医科大学耳鼻咽喉科 助手
2002年10月 米国スタンフォード大学遺伝学分野 博士研究員 (~2003年12月)、(文部科学省長期在外研究員)
2006年11月 大分大学医学部耳鼻咽喉科 講師
現在に至る