阪上雅史 医師 (さかがみまさふみ)

兵庫医科大学病院

兵庫県西宮市武庫川町1-1

  • 耳鼻咽喉科
  • 副院長
  • 診療部長、主任教授

耳鼻咽喉科 頭頸部外科

専門

難聴の診断と治療(特に中内耳手術・人工内耳)

阪上雅史

阪上雅史医師は中内耳手術を専門としており、耳手術数は全国の大学で最も多い。耳鼻咽喉科では、感覚医学(聴覚・平衡覚・嗅覚・味覚)と頭頸部外科を2本柱として幅広い分野を扱っており、曜日ごとに専門外来を設置。中耳・内耳手術、鼻・副鼻腔手術、頭蓋底手術では、より安全に行うためにナビゲーションシステムを導入し、良好な治療成績を上げている。標準的な医療を地元に還元するとともに、大学病院の高度先進医療の担い手となるべく全力を尽くしたいという。

診療内容

阪上医師が担当する耳外来では、中耳炎から老人性難聴まで、難聴、耳漏、耳痛、耳閉感、耳鳴、めまいなど、耳症状を有する疾患すべての診断・治療を行っている。
慢性中耳炎・真珠腫性中耳炎について:慢性中耳炎は大人に多く鼓膜穿孔、耳漏、伝音難聴を三主徴とする疾患で、風邪を引くと耳漏が出て、放置しておくと難聴が進んで行く疾患である。真珠腫性中耳炎は中耳真珠腫とも呼ばれるが、悪性腫瘍ではなく炎症疾患だが、慢性中耳炎に比べて炎症の度合いが強く、周囲の骨を溶かしていく。耳漏・伝音難聴の他、めまい、顔面神経麻痺、感音難聴、時には髄膜炎などの合併症がみられる怖い疾患である。両疾患とも、手術療法が基本となる。この手術は鼓室形成術と呼ばれ、病巣を清掃して鼓膜穿孔を閉鎖し(炎症を取る)、耳小骨連鎖を再形成して聴力を改善する機能手術である。同科では、年齢、罹病期間、聴力、炎症の度合、合併症などを考慮し、症例ごとに最適な手術法を選択している。耳手術総数は2007年249件、2008年294件、2009年350件、2010年360件、2011年381件、2012年335件、2013年343件、2014年347件、2015年355件、2016年357件であり、これは全国で3位、大学病院では1位(週間朝日より)となっている。鼓膜穿孔閉鎖率、聴力改善率ともに全国トップレベルである。
耳硬化症:3つ目の耳小骨であるアブミ骨が固着する変性疾患で、20歳以上の女性に難聴が徐々に起こってくる。治療はアブミ骨手術という手術療法しかないが、症例数が少ないため、欧米に比べて日本では手術成績が安定しなかった。最近、脚切断にレーザーを導入してから、術後のめまいもほとんどなく、安定した成績が出るようになった。耳硬化症なのに、感音難聴や老人性難聴と言われて放置されてきた多くの患者をアブミ骨手術で聴力改善してきた実績がある。
人工内耳(高度難聴-聾):人工内耳は臨床応用されてから30年、日本では保険適応になってから23年が経過。この間に日本全国で8,000人以上が人工内耳埋め込み術を受け、失った聴覚を取り戻す手術として定着。同科でも23年間に160例以上に人工内耳を埋め込み、良好な成績を得ている。現時点では、コクレア社の最新型のCI24RE(CA)型のContour Advanced electrodeやMed-EL社のsoft electrodeを使用。大人になってから聞こえを失った、あるいは補聴器が使えなくなった成人の患者は、人工内耳を埋め込むと会話が可能になり、電話で話せる患者も多数いる。最近では、補聴器と同じく、両耳に人口内耳を埋め込むことを始めており、方向感や雑音下での韻音聴取の成績が向上している。幼児難聴外来とタイアップして、先天性高度難聴の子供(1,000人に1人)にも安全に人工内耳を埋め込むことが可能だが、言語中枢が発達していないので言葉を覚えることに時間がかかる。そのため、言語療法士が母親と一緒に根気よく練習する。成人も子供も家族の協力が一番大事である。
急性化膿性中耳炎:風邪で鼻水が出た後、耳痛、耳漏、発熱がみられる1~3歳の乳幼児に多く見られる中耳炎。1~3歳の中耳炎で長引く場合は、同科への相談が勧められる。
滲出性中耳炎(痛みのない中耳炎):小学校就学前の4~6歳に多い痛みのない中耳炎である。難聴の程度は軽いが、すぐに軽快することは少なく、根気の要る治療が必要。中耳と鼻をつなぐ耳管の通りを良くする通気療法、中耳腔の滲出液を除く鼓膜切開や鼓膜チューブ留置術、鼻の通りを良くするための頻回の鼻処置、増悪因子を取り除くアデノイド切除術などを実施。頭蓋骨が大きくなる10歳前には治ることが多いが、約10%は真珠腫性中耳炎や癒着性中耳炎に進むため、4~6歳の治療は重要となる。また4~6歳は言葉を覚える時期なので、その意味でも治療は重要。
老人性難聴:誰でも年をとると聞こえが悪くなり、これを老人性難聴という。1)原因不明、2)両側性、3)徐々に悪くなる、4)高音が聞こえにくくなる、5)聴力レベルに比べて言葉の聞き取りが悪くなる、などの特徴がある。まれに、聴神経腫瘍などが後ろに存在することがあるので、耳レントゲン、MRIなどの精査が必要。残念ながら治療法はないため、補聴器が勧められる。補聴器は40~50万円する高価な物ほど良く聞こえるということはない。各人の聴力レベル、聴力型、生活環境に応じて合わす“フィッティング”が重要となる。同科では、毎週金曜午後に予約制で補聴器フィッティングを実施している。
突発性難聴:ある日突然片方の耳が聞こえなくなる難聴で、患者は発症時の様子を覚えていることが多い。耳鳴りやめまいを伴うことがある。原因不明で治療法は施設により若干異なるが、同科では安静とできるだけ早くステロイドの大量点滴投与を行う。予後は回復が3分の1、不完全回復が3分の1、非回復が3分の1で、1週間以内に治療を始めた症例は回復率が高く、めまいを伴う例や糖尿病を合併する例は回復率が悪いとされている。突発性難聴に罹患したら、できるだけ早くステロイドの大量投与を始めることが肝要となる。

医師プロフィール

1980年3月 大阪大学医学部 卒業
1984年3月 大阪大学医学部大学院医学系研究科卒業
1984年4月 香川医科大学助手
1986年6月 大阪大学医学部助手
1987年9月 ミネソタ大学医学部耳鼻咽喉科Research Fellow
1989年3月 帰国
1994年3月 大阪大学医学部講師
1994年11月 兵庫医科大学教授
2012年4月 兵庫医科大学病院副院長
2016年4月 学校法人兵庫医科大学理事