大屋祐輔 医師 (おおやゆうすけ)

琉球大学医学部附属病院

沖縄県中頭郡西原町字上原207

  • 第三内科(循環器・腎臓・神経内科)
  • 科長、教授

循環器科 腎臓内科 神経内科

専門

高血圧、循環器、腎臓、脳卒中を専門とし、老年病学、生活習慣病予防、食生活学についても詳しい。

大屋祐輔

脳卒中、高血圧、心筋梗塞等の心血管循疾患の大家で、特に臨床、基礎両面での高血圧の病態の研究に取り組み日本をリードする。血管平滑筋細胞および内皮細胞のイオンチャネルの研究のほか血管再生治療の開発にも携わる。沖縄で採れる「島野菜」及び沖縄の伝統食の健康増進効果についての介入研究「チャンプルースタディ」を、栄養疫学研究者らと共同で実施。メタボリックシンドローム予防の切り札として緑黄色野菜、芋・大豆類、海藻が豊富で減塩効果も高い沖縄伝統食を提唱する。

診療内容

大屋祐輔医師は、高血圧・循環器・腎臓・脳血管障害・生活習慣病などを専門分野とし、とくに、臨床、基礎両面での高血圧の病態の検討を行ってきた。老年病学、生活習慣病予防、食生活学についても詳しく、とくに沖縄で栽培される野菜の健康増進効果の調査する介入研究“チャンプルースタディ”を栄養疫学の研究者たちと共同で行っている。また、大屋医師が担当している同院第三内科では、高血圧・腎臓、循環器、脳卒中・神経など、高血圧に関連するほぼすべての診療領域をカバーしている。ここでは、各専門家が横断的に診療しており、高血圧の診断と評価、二次性高血圧の除外、治療抵抗性高血圧の治療、高血圧の合併症(心、腎、脳、血管)の治療を行っている。とくに治療抵抗性高血圧(作用のことなる3剤以上の降圧薬を服用しても目標血圧に達しない高血圧症)は全高血圧患者の5%~10%いると言われており、高血圧専門医による治療またはアドバイスを得ることが望ましい。
高血圧疾患は高脂血症、糖尿病とともに三大生活習慣病とわれるが、その中でも高血圧の患者数は最も多く4,000万人を超えるともいわれる。高血圧は身近な疾患といえ、油断しがちだが、放置すると糖尿病や脂質異常、さらには慢性腎臓病などを合併し、脳卒中や虚血性心疾患の発症リスクの高まる怖い病気である。高血圧診療について、大屋医師はその目的は単に血圧を下げるだけではなく、高血圧に伴う致命的な心血管イベントを予防し、寝たきりや半身麻痺にならずに元気に長寿を全うすることにあるとする。また、高血圧の治療は生活の質を保つものであるべきだとしている。
高血圧を引き起こす原因には、遺伝的な素因、食塩、ストレスなどの環境要因に加え、最近、内臓脂肪が深く関わっていることが注目されている。
内臓脂肪は肝臓、膵臓、骨格筋、血管壁、心臓等本来脂肪が蓄積しない部分に蓄積するので“異所性脂肪蓄積”と言われる。皮下脂肪にはエネルギー蓄積の役割があるが、内臓脂肪は皮下脂肪とはまったく異なった性質があり、悪玉ホルモンを分泌する分泌臓器としての機能を持ち、さまざまな代謝異常を起こすことがわかってきた。三大悪玉ホルモンといわれるのは、PAI-1(血栓の形成を促進させるホルモンで心筋梗塞のリスクファクター)、TNF-α(インスリン抵抗性を亢進させ、糖尿病を原因となる)、アンジオテンシノーゲン(動脈硬化や高血圧の原因となる)である。実際に皮下脂肪型の肥満に比べて、内臓脂肪型の肥満では血清コレステロールや中性脂肪が高くなり、HDLコレステロールが低下し、さらにはインスリン抵抗性が亢進し、血糖が上昇する。
肥満をそのまま放置すると脂質代謝異常、さらには耐糖能異常を合併して糖尿病や慢性腎臓病などさまざまな疾患が連続して発症し、ついには心筋梗塞、あるいは脳梗塞に至るが、この過程がドミノ倒しのように連続するために“メタボリックドミノ”といわれる。そのスタートのスイッチとなるのが内臓脂肪から分泌される悪玉ホルモンである。従って、メタボリックドミノに陥らないためには内臓脂肪をため込まないことであり、すでに発症している場合には薬物治療により、悪玉ホルモンの作用を封じ込めることが最も効果的であるといえる。
高血圧の原因ともなる悪玉ホルモンのアンジオテンシノーゲンはRA系という代謝経路を活性化させ、高血圧を引き起こす。このRA系を抑制する薬剤が開発されており、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)といわれる。ARBの中には強力な降圧効果のほか、糖・指針代謝の改善をはじめ、内臓脂肪を減少させるなどの相乗効果をもたらす薬剤が開発されている。テルミサルタンなどのいわゆるメタボサルタンといわれる薬剤で、内臓脂肪型の患者の降圧治療には最適であると考えられる。アンジオテンシンIIには悪玉受容体と善玉受容体の2種類の受容体があり、ARBは選択的に悪玉受容体のみを粗外するためである。ちなみにアンジオテンシンIIのレベルを低下させることで、悪玉、善玉受容体ともに抑制するのがACE阻害剤である。
CKD(慢性腎臓病のこと。数多くある腎臓病の総称で腎不全に至ると人工透析が必要になるのみならず、心筋梗塞や脳梗塞を発症しやすくなる)は高血圧の合併が多い。とくに蛋白尿のある場合はARBやACE阻害薬が用いられている。CKDには肥満も関連していることもわかってきたことから、大屋医師はCKDとの関連からも、肥満合併高血圧患者の治療にあたってもARBが第一選択薬の1つとし「高血圧の早期からARBによって積極的な治療を行うことで、高血圧の進展および高血圧に付随して起こってくる臓器障害を抑制することができるとしている。さらには、ARBは新規の糖尿病の発症を抑制する効果も得られなど肥満患者にとって、そのメリットは大きい」としている。
大屋医師は減塩についても忘れてはならないとし、治療抵抗性高血圧症の場合は複数の薬剤に加えて減塩に取り組むことにより大きな降圧効果が得られるとし、減塩の重要性を説いている。
コントロール不良の高血圧については、利尿薬の使用が著明な効果をあげるが、我が国においては、利用される頻度が少なく、医師の意識改善の努力が必要としている。
大屋医師の働くである沖縄県では内臓脂肪型肥満が急増しており2000年には平均寿命において、男性がそれまでの全国4位から26位に転落し“沖縄26ショック”と呼ばれ衝撃が走った。1963年に日本初のハンバーガーショップがオープンするなど米国式の高カロリー、高脂肪の食事がいち早く浸透し、食生活の激変がもたらされたことが肥満者を急増せさ、メタボリックシンドロームが一気に加速する原因ともなっている。沖縄の現状はやがて日本全土に拡がっていくものと推測され、日本の未来を暗示していると大屋医師は指摘する。
大屋医師はこうした沖縄県の現状打開に向けて沖縄の「島野菜」に着目し“チャンプルースタディ”として栄養疫学者らとともにその効果効用を調査研究している。
チャンプルースタディも回を重ねるうちに、島野菜だけに留まらず、沖縄の人々が伝統的に食べてきた日常食全体にその焦点が移り、沖縄の伝統食による減塩、降圧、Na摂取量の低下、体重減少などが認められ、健康食であることを実証するにいたっている。沖縄の伝統食の特徴は緑黄色野菜や芋類・大豆類、海藻が豊富で低カロリーであること、かつお節や昆布出汁を多用することで塩分摂取が抑えられていることなどがあげられる。
大屋医師は沖縄の伝統食は沖縄が再び長寿県として復活するための切り札として欠かせないものとし、そのエッセンスを国民全体に浸透させることは日本人全体の健康にも寄与するものと確信している。
大屋医師は沖縄26ショックの際に行われた、健康長寿県復活を目指す県民公開講座の第1回目のシンポジストとしても招かれ、その後も引き続き、高血圧治療、メタボリックシンドローム予防等についての医師向けや市民向けの講演を行うなど県民の健康増進、長寿復活のための啓蒙活動を積極的に行っている。また、大屋医師は沖縄県内の医師を含めた医療人の人材育成についても力を入れており、地域医療再生基金事業である医学・医療教育を行うクリニカルシュミレーションセンター構想計画のプロジェクトリーダーとして携わってきた。同センターは我が国における最高・最新の設備、機器を完備した医療職の学習・訓練の場であり、2012年3月に同院の敷地内に開設された。ここは、基本的なスキルを学ぶゾーンのほかに、救急医療を学ぶためのゾーン、専門的なスキルを学ぶためのゾーン等に分かれ、用途に応じたさまざまなシミュレーションを設置し、それらを使ってバーチャルな状態を作り、知識、技能、チーム医療を学ぶことができる。「シミュレーターを用いることで、安全かつ確実にさまざまなスキルや知識を身につけることで、実際の臨床の現場において落ち着いて対応することが可能となります。さらに、これらの取り組みは安全安心な医療の実現に大きく寄与します」と大屋医師は語っている。

医師プロフィール

1982年 九州大学医学部 卒業
1997年 シンシナチ大学(米国オハイオ州)医学部生理学教室へ留学
1988年 九州大学にて医学博士号取得
1989年 九州中央病院内科医長
1991年 九州歯科大学内科学助教授
1992年 九州大医学部第二内科勤務(助手、講師)
2002年 琉球大学医学部第三内科助教授(のちに准教授)
2009年 琉球大学大学院医学研究科循環器・腎臓・神経内科学講座教授、琉球大学医学部第三内科長

「高血圧」を専門とする医師