里見淳一郎 医師 (さとみじゅんいちろう)

徳島大学病院

徳島県徳島市蔵本町2-50-1

  • 脳神経外科
  • 准教授(副科長)

脳神経外科 外科

専門

血管内手術(動脈瘤コイリングや頸動脈ステントなど)、脳血管障害の外科手術、rt-PA療法

里見淳一郎

里見淳一郎医師は、脳卒中の急性期患者の緊急受け入れ施設として大学病院では草分けである同院脳卒中センターの副センター長を務める、脳血管障害急性期治療のスペシャリスト。頸動脈ステント留置術や脳動脈瘤コイル塞栓術など血管内治療の名手。脳神経外科手術(開頭脳動脈瘤クリッピング術、頚動脈内膜剥離術、脳血管バイパス手術)も提供しており、患者の病態に応じた治療選択に努めている。rt-PA動注療法をはじめ最先端の治療法やデバイスを積極的に導入し多くの患者を脳卒中から救出している。

診療内容

日本人の年間死亡率の第3位(10数万人)であり、寝たきりの最大原因(40%)ともなっているのが脳卒中である。今後さらに進む超高齢化社会に対応して、その予防や治療法の確立が重要な社会的課題となっている。
同院では脳卒中ケアユニット(SCU=Stroke Care Unit、Strokeとは脳卒中のこと)を1999年末に国立大学病院としては全国に先駆けて開設し、脳卒中の急性期患者を緊急で受け入れてきた。2005年からSCUを発展させた形で同院脳卒中センターを開設し、24時間体制で患者を受け入れている。里見医師は同センターの副センター長として現場の指揮官的な役割を担って治療に当たっている。
同センターには3テスラMRIという最高機種を導入しており、CTスキャンも320列マルチデイテクター搭載型を含む3台が稼働している。血管撮影装置はPhilips社製の血管撮影装置2台を加え、合計3台が稼働し、日本はもとより世界でトップクラスの画像診断が可能である。
同センターでは急性期脳血管障害を対象疾患として受け入れており、患者数は年々増加し、年間400人以上に達している。患者の検査には放射線科医師や技師の協力のもと、夜間でもCT検査やMRI検査が可能であり、脳卒中診断を瞬時にかつ正確にできる体制をしいている。
治療も最先端の技術を駆使し、開頭手術・血管外科以外にも血管内治療を積極的に導入し、より低侵襲で効果的な治療を行い、脳卒中の患者を少しでも早く社会復帰できるよう努力している。現在、侵襲の少ない治療法として注目されている頸動脈ステント留置術と脳動脈瘤コイル塞栓術は里見医師が力を入れている分野である。どちらも患者の負担が少なく、早期に社会復帰できるなどのメリットが大きい。
頸動脈ステント留置術は脳梗塞の原因の1つである内頸動脈狭窄症に対して行われ、血管内にカテーテルを入れて患部で風船のように膨らませて狭窄部を拡大、さらにステントという金網状の形状記憶合金を置き、血管を内側から拡張する方法である。従来法は手術で首の血管を切開し、内膜(動脈硬化)の剥離を行うが、この方法に比べて頸動脈ステント留置術は血管へのカテーテル挿入という侵襲の少ない方法ですむ。
脳動脈瘤コイル塞栓術はくも膜下出血の原因となる脳動脈瘤の治療法で、直径数㎜の動脈瘤にカテーテルを進め、そのカテーテルを通して白金製の軟らかいコイルを動脈瘤に詰めることで動脈瘤の破裂を予防するという方法である。開頭手術では到達の難しい脳の深部にある動脈瘤や全身状態の悪い患者にこの方法を用いて治療している。そのほかクリップ手術も行っているが、これは手術用顕微鏡を用いて脳動脈瘤を剥離、露出して動脈瘤の首の部分(ネック)にクリップをかける手術である。同センターでは動脈瘤の大きさ、形、脳のどの血管に存在するかなどさまざまな条件を考慮して患者にとってもっともよいと思われる方法を選択している。
里見医師は「カテーテル治療か、通常の手術を選択するか判断に迷うケースもあり、その場合はどうしても自分が得意な治療法を選択しがちですが、その患者にとっての最善の治療法はなにかを第一に考え、各国から集められる診療成績等を参考にあくまでも科学的根拠に基づいて選択します」と話している。
こうした血管内手術法は直接病変を触れながら治す手術と異なり、カテーテルを通した、いわば遠隔操作によって繊細な脳の血管の異常部分を修復するという難しさがある。そのため、日本脳神経血管内治療学会では専門的なトレーニングを積んだ医師のみが取得できる血管内治療の専門医制度を設けており、里見医師は指導医という立場から専門医の指導・育成にも当たっている。
2005年から新たな超急性期脳梗塞に対する治療薬として、rt-PA(遺伝子組み換え組織型プラスミノゲン・アクティベータ)という血栓溶解薬が許可され、同院では当初から積極的に使用し、良好な成績を上げている。この薬が投与できるタイミングは脳梗塞発症から4.5時間以内で、同院ではこの適応基準を満たせたばrt-PA療法を第一選択としている。このrt-PA療法適応外である場合は、血管内治療の血栓除去療法(カテーテルで脳の動脈の詰まった部分まで進め、専門の器械による血栓回収、血栓吸引、もしくは血栓溶解薬を直接注入して血栓を溶解。発症8時間以内が適応)を積極的に行っている。里見医師ら同科では、rt-PA療法と血管内治療との成績を比較検討(2005年10月から2010年10月までの5年間の109症例を対象)している。どちらの治療法も治療成績に遜色はなく、社会復帰する患者の割合は4割強であった。とくに中大脳動脈閉塞例においてはM2(中大脳動脈のM1に続く上行部分)閉塞例はどちらも術後の社会復帰が良好例が多く、M1(中大脳動脈の根元、水平部)閉塞例は血管内治療群に術後良好例が多かった。内頸動脈閉塞例では両者ともに成績はよくなかった。
このようにrt-PA療法が適応できなくても、MRIで血行再建の適応を満たす症例に対しては血管内治療によって良好な結果を得る症例が多く、詰まった血管の部位によっては血管内治療の方がより再開通する割合が高いなど、血管の種類やその閉塞部位によって治療法を選択することが良好な結果につながる可能性があると里見医師を示唆する。
rt-PA療法という新しい治療の実施のために同院では専門チームを構成、里見医師もその中心となって尽力している。この治療法の最大のメリットは動脈内への血栓溶解液の点滴のみで治療できることであり、この治療法の適応患者を増やすためには、発症からいかにすばやく医療機関まで搬送するかにかかっている。里見医師は「地域住民の方にrt-PAという新しい治療も含めて脳卒中についてよく知ってもらい、脳卒中と疑ったら、躊躇せず救急車を呼んでいただきたい」と話す。地域の医師、救急救命士、一般市民を巻き込んでの脳卒中及びその治療の周知徹底と、そのための啓発活動の必要性を説いている。

医師プロフィール

1992年3月 香川医科大学医学部 卒業
1992年4月 徳島大学医学部脳神経外科に入局
2000年4月 カナダのトロント大学に留学
2004年1月 徳島大学医学博士
2004年4月 秋田県立脳血管研究センタ-
2005 年10月 徳島赤十字病院
2008年10月 徳島大学医学部助教
2009年4月 徳島大学講師
2012年1月 徳島大学准教授、大学院医歯薬学研究部

「脳卒中」を専門とする医師