寺地敏郎 医師 (てらちとしろう)

上人病院

大分県別府市上人ヶ浜町9

  • 腎泌尿器外科外来
  • 名誉院長

泌尿器科 腎臓内科

専門

尿路性器腫瘍の診断と治療のほか前立腺肥大症や尿路結石などの泌尿器科疾患を専門とし、泌尿器腹腔鏡手術を得意とする。

寺地敏郎

寺地敏郎医師は、泌尿器科における腹腔鏡手術のパイオニア。京都大学医学部付属病院に在任中、1991年に腎がんの腹腔鏡手術を手がける。92年には副腎の腹腔鏡手術、99年には日本初の前立腺がんの腹腔鏡手術を実施する。世界最先端の腹腔鏡の手術法をいち早く導入すると同時に自身でも治療法を開発し腹腔鏡手術の普及に尽力し、日本の腹腔鏡手術を世界のトップクラスに押し上げる。患者との対話にこそ医師の本分があるとし、患者のQOLを重視する患者第一主義の治療がモットーである。同院泌尿器科のすべての腹腔鏡手術に立ち会って指導するなど術者の育成にも労を惜しまず取り組んでいる。

2017年より上人病院の名誉院長に就任し、腎泌尿器外科外来を開設。2018年1月には、腎泌尿器外科を専門とした新病院に生まれ変わり、最新式の低侵襲手術支援ロボット(da Vinci)、体外衝撃波結石破砕装置(ESWL)、尿路結石破砕用レーザー装置、前立腺切除用レーザー装置を導入する予定。

診療内容

寺地医師は、副腎・腎臓・尿管・膀胱・前立腺・精巣など尿路性器のがんの治療を中心に、前立腺肥大症や尿路結石の治療を得意とする。腹腔鏡手術のほか、膀胱鏡(TUR-P:経尿道的前立腺切除術やTUR-Bt:経尿道的膀胱腫瘍切除術等の前立腺肥大症、膀胱がん等の治療で用いられる)、尿管鏡(腎臓および尿管の内部を調べる検査や腎・尿管結石に対するレーザー治療などに用いられる)による治療のほか開放手術も数多く手がける泌尿器外科の名医である。
寺地医師が在籍する同院泌尿器科で最も多い手術は前立腺がんであり、そのほぼ100%が腹腔鏡手術で行われている。一般的な病院ではその割合が逆転し、開腹手術が中心であり、腹腔鏡手術の割合は10%ほどにとどまっている。寺地医師が腹腔鏡手術に力を入れる理由は以下のような点からである。
第1は傷が小さいので患者の負担が少ないことである。たとえば、前立腺疾患の開腹手術の場合は傷跡が5~15㎝以上にもなるが、腹腔鏡手術ではカメラや電気メスなどの手術器具を入れるための直径5~15ミリの穴を5カ所を開けるだけでよく、侵襲ははるかに少なく、痛みも少ない。
出血も開腹手術では300cc以上、多い時は2000ccを超える場合もあるが、腹腔鏡手術では200cc程度である。開腹手術の場合はあらかじめ800~1200ccの採血を行い、万が一の際に備えるので、患者の負担はさらに大きいといえる。
手術時間も腎がんでは平均2~3時間半ほどであり、いまや開腹手術よりも短く、寺地医師の場合は90分ほどで終了する。
腹腔鏡手術の場合は臓器が外気に直接触れないので、開腹手術に比べて術後の癒着が格段に少なく、将来、開腹手術が必要になったときでも手術がスムーズに行えるというメリットがある。
尿を排泄するための尿道カテーテルの留置も、開腹手術では1週間ぐらい必要だが、腹腔鏡であれば3~5日前後と短縮される。
術後の回復も腹腔鏡手術は早く、翌日には歩けるようになり1週間前後には退院することができる。開腹手術の場合は歩くまでには3~4日を要し、退院も2週間前後かかることを考えれば、腹腔鏡手術は患者の身体的負担が軽くすみ、社会復帰が早いといえる。
ただ、尿失禁の回復は腹腔鏡の方が少し遅れる傾向があるため、術後1ヶ月の時点では開腹手術の方がQOLはよいといえるが3ヶ月経つと同じになる。
腹腔鏡手術は患者にとって身体的にもまた、経済的にもメリットが大きく、さまざまな負担を取り除く治療法といえ、寺地医師は91年に腎がんの腹腔鏡手術を手がけて以来、副腎、前立腺疾患とその適応範囲を広げてきた。泌尿器科における腹腔鏡手術の可能性に挑戦してきたパイオニアである。いまや腎臓、副腎の疾患については腹腔鏡手術の設備の整う施設では標準的な手術方法ともなっているのは寺地医師の貢献が大きいといえる。
同院でも寺地医師が着任した2002年から前立腺と根治的腎摘出を筆頭に腹腔鏡手術が増加しており、寺地医師自身の個人通算手術数に関しても日本でもトップの一人といえる。
前立腺肥大症は50歳以上の男性の5人に1人にみられるともいわれ、頻尿や残尿感などの排尿障害が進行すると末期には尿閉となり、最悪の場合、腎不全を併発する危険性もある。
治療法には薬物療法では尿道が狭める働きをするα1受容体の働きを抑え、尿を出やすくするα1ブロッカーと前立腺そのものを小さくする「抗男性ホルモン薬」とがある。
疾患の初期段階はこうした薬物療法により症状を抑える治療を行うが、肥大が大きな場合には手術によって肥大した腺腫を摘出する。手術は開腹手術より侵襲の少ない内視鏡と高周波による電気メスによる経尿道的前立腺切除術(TUR-P)が標準的治療となっている。TUR-Pは尿道から内視鏡を挿入し、先端の電気メスで尿道の内側から肥大した腺腫を削る方法で、削られた腺腫の切片は膀胱内に落ちるのでそれを吸引して回収する。入院期間は3~7日である。
さらに低侵襲な手術法にホルミウム・レーザーを使用した方法がある。これは尿道から挿入した内視鏡を通して、レーザーファイバーを挿入してホルミウムヤグレーザーというレーザー光を照射して腺腫をくりぬくHoLEP(ホーレップ:前立腺核出術)という手術である。レーザー手術法は腺腫を取り除くと同時に止血を行うことができるので、外科手術はもとより電気メスによる治療に比べても出血量や痛みが少なくすむ。手術時間も短いので入院期間も3泊4日程度ですむ。
薬物療法か手術かの選択は、症状の程度のほか年齢や体力、病歴などを医師が総合的に診断するが、最終的に患者の意志が尊重される。その際、薬物療法は身体への侵襲や費用の面で負担が少ないが、治療が長期間に及ぶと手術より治療費が多くかかってしまう点なども考慮したい。
前立腺がんは前立腺の腺組織ががん化してくる病気で、前立腺が肥大するわけではない。残尿感や頻尿などの自覚症状がないまま進行するので発見が遅れるケースも多いが、腫瘍マーカーであるPSA値を検査することで容易に発見することができる。PSA値は4が基準で4~10がグレーゾーンで3~4割の人からがんがみつかる。そのほか肛門から指を入れて行う触診や腸から超音波機器を入れるエコー検査などを行ってがんの可能性が大きい場合は、前立腺組織を針で取ってがん細胞の有無を調べる生体検査を行う。
前立腺がんの治療には薬物療法、放射線療法、手術治療があり、がんの進行度合いや年齢を加味して治療方針を決定する。悪性度が低く、がんが小さいときにはしばらくは経過観察するという選択肢もある。
前立腺の中だけにがんがある場合には、手術や放射線療法が有効で完治させることもできる。腹腔鏡手術では下腹部に5カ所の穴を開け、そこから小さなカメラのついた器具、手術の操作をするための器具を入れ、手術の視野を確保するために二酸化炭素を注入し、モニターを見ながら手術を行う。前立腺全摘手術の場合は前立腺、精嚢腺を切除して膀胱と尿道をつなぎ合わせる手術となり、手術そのものは平均3時間程度終了する。
前立腺の外にがんが広がっているような場合には、内分泌療法と呼ばれる薬での治療が行われる。とくに75歳以上の高齢者の場合には薬物療法が推奨され、とくに内分泌療法は効果が非常に高く、10年以上再発も起こらない人も多い。
前立腺がんの腹腔鏡手術については2006年には保険認可となり、経済的負担が軽減されている。さらに近年、ロボット支援手術が登場し、前立腺がんの手術を中心に行われている。
腹腔鏡手術の世界も日進月歩であり、寺地医師は「患者さんに対して低侵襲な治療は術者の確かな技術力があってこそです」と話す。
そうした腹腔鏡手術の高度な術式を習得するには開放手術とは異なった様々な知識と専門的なテクニックを身につけなければならない。同教室では2003年から他施設に先駆けて本格的な腹腔鏡トレーニングコースを教室内に設置している。内視鏡カメラとモニターを備えたトレーニングボックスでは鉗子や糸等も実際に手術で使用しているものを使用するなど実践さながらの実習体験ができる。同教室では寺地医師の指導のもと、若手医師は腹腔鏡手術の習得に熱心に取り組んでいる。
寺地医師は泌尿器科学会の泌尿器腹腔鏡技術認定制度の委員長も務める。同制度の認定医となるには、腎臓または副腎の基礎的な手術ができて、日本泌尿器科学会認定医取得後2年間の腹腔鏡手術の研修、無編集ビデオでの審査など厳しい基準をクリアしなければならない。こうした認定医制度の整備などが進み、日本の腹腔鏡手術のレベルは世界でもトップクラスとなり、各国から研修に訪れる医師も絶えない。
寺地医師自身は12巻からなる腹腔鏡手術のDVDを監修し、泌尿器内視鏡手術の様子をノーカットで収録するなど自身が行う手術映像を駆使して腹腔鏡手術のコツを解説している。
2011年には泌尿器内視鏡手術の技術向上と教育の功績により、日本内視鏡外科学会員にとっての最高の栄誉とされる「大上賞」を受賞。内視鏡手術の草分けであり、盟友でもあった故・大上正裕医師の名を冠した賞の受賞に寺地医師は感無量と語る。
寺地医師自身は子ども時代は田畑の仕事や山仕事を手伝うなど自然の中でのびのびと成長し、医師になるとは夢にも思わなかったという。ただ、お年寄りと接する機会も多く、対話の大事さには早くから気づいていたという。
「医師の仕事の8割が外来での患者さんとの対話にあり、手術というのはその中の一部であると思います。ですから、手術がすべてではなく、その前後の患者さんとのお付き合いの中でいかに信頼関係を築けるかが大切だと思っています」(寺地医師)
泌尿器科の多くのがんを手がけてきた寺地医師だが、がんの告知をするということは、その患者さんを生涯にわたり全力でサポートしていくことにほかならず、手術をすればそれで終わりではけっしてないという。手術がいかに完璧でも、結果として患者さんが負ける手術はしない方がいいというのが自身のモットーだ。
「患者さんが勝つための手術をして患者さんに幸せだと思ってもらわなければ、手術をする意味がないのですね」(寺地医師)
病気のことを忘れて生活できる時間をいかに増やしてあげられるかという患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を大切にしている。
患者の側も、この人ならば大丈夫だという医師を見つけて信じることも大事だという。
「信じるに足る人なのかどうか、人を見分ける力を身につけることも、患者さんにとって大切だと思います」と、寺地医師はアドバイスをする。

医師プロフィール

1978年 京都大学医学部卒業, 京都大学医学部付属病院泌尿器科研修医
1979年 倉敷中央病院泌尿器科医員
1988年 米国クリーブランドクリニック留学
1990年 京都大学医学部助手に復職
1994年 京都大学医学部講師
1999年 京都大学大学院医学研究科泌尿器病態学助教授
2000年 天理よろづ相談所病院部長
2002年 東海大学医学部教授(泌尿器科学)、東海大学医学部外科学系泌尿器科科長
2017年4月 医療法人別府玄々堂 上人病院 名誉院長に就任