武田正之 医師 (たけだまさゆき)

山梨大学医学部附属病院

山梨県中央市下河東1110

  • 泌尿器科
  • 教授

泌尿器科 がん

専門

前立腺肥大症、腹腔鏡下手術、下部尿路機能障害、前立腺がん、腎がん、膀胱がん、小児泌尿器、腹圧性尿失禁、慢性腎不全(腎移植、血液透析、腹膜透析)

武田正之

1992年に世界ではじめて腹腔鏡下での副腎摘出手術に成功し、その後は小児に対する腹腔鏡下手術、腎腫瘍などの各種泌尿器科悪性腫瘍に対する腹腔鏡下手術、腎移植ドナーに対する後腹膜腔鏡下腎摘出術など、さまざまな腹腔鏡下手術に熟練したエキスパート。2013年からは、最新型手術支援ロボットである
ダビンチSi(Rマーク)を導入して、ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術を実施している。武田医師が取り組む腹腔鏡下手術や小切開手術などの低侵襲手術法の開発・普及により、手術を受ける患者の入院期間の短縮と退院後の社会復帰が格段に早くなった。同院は我が国を代表する泌尿器科腹腔鏡外科施設といえる。

診療内容

前立腺肥大症は、尿道のすぐそばにある前立腺の移行領域という場所にこぶのようなもの(腺種)ができるため、尿道が狭くなって尿が出にくくなる病気である。症状や治療法について、長く前立腺肥大症の研究と治療をおこなってきた武田医師は「症状は大きく分けて2つあります。まず尿を出しにくくなるなどの下部尿路閉塞症状があります。そしてもうひとつは、とくに夜間に多い頻尿や突然トイレに行きたくなって我慢ができなくなる尿意切迫感などの膀胱刺激症状(または蓄尿症状)です。この両方の症状を持つことも多くあります」と言う。
最近はこうした症状を客観的に評価するために、IPSSと呼ばれる国際前立腺症状スコアが用いられるようになった「IPSSは患者さんの自覚症状を定量化し、治療方針の決定や治療効果の判定に用いています。たとえば夜間頻尿を主訴とするケースがありますが、この原因が必ずしも前立腺肥大症とはかぎりません。夜間多尿や睡眠障害などが原因になっていることもあります。そこで患者さんに数日間、排尿日誌(排尿時刻・1回排尿量・尿失禁量・残尿感の有無・飲水量等)を記載してもらうのです。それを見れば排尿パターンが把握できますので、夜間頻尿の原因を調べるのに有用なデータとなるのです」と武田医師は言う。
では、原因が前立腺肥大症となった場合、どのような治療法があるのか「前立腺肥大症の治療法は薬による治療と手術療法に分けられますが、すべての患者さんが治療対象になるのではなく、一般的に IPSSで中等症以上の人が治療対象になります。まず 薬物療法ではα1-ブロッカーがよく使われます。これは前立腺や膀胱頸部の平滑筋の収縮を防ぎ、尿道内圧を低下させます。これによって排尿がしにくいなどの自覚症状を改善させ、残尿量も減少させることができます。
もともと勃起障害治療薬であったPDE5阻害薬は、α1-ブロッカーと同様に前立腺や膀胱頸部の平滑筋の収縮を防ぎ、尿道内圧を低下させます。欧米では2011年に前立腺肥大症治療薬として承認されましたが、わが国でも2014年4月からは、PDE5阻害薬が健康保険適用になりました。
前立腺肥大症が大きくてα1ブロッカーだけでは症状の改善が不十分な場合には、5α還元酵素阻害薬を併用します。前立腺肥大症の患者さんは、トイレが間に合わない・尿が漏れるといった過活動膀胱症状を伴う方が多いですので、抗コリン薬やβ3受容体活性薬なども用います。我々はこうした新規治療薬の開発には、基礎的研究の段階から取り組んでおり、また、日本やアジアでの排尿障害に関する診療ガイドラインの作成も行っています。
次に手術療法ですが、これにもいくつか種類があり、内視鏡で前立腺を細かく削る経尿道的前立腺切除術(TUR-P)をはじめ、前立腺被膜下摘出術、レ-ザ-治療法、高エネルギ-焦点式超音波治療法、前立腺高温度療法などがあります。これらは症状に合わせ、最善のものを選択していきますが、病状と治療方法、治療方針については、できる限り分かりやすくご説明し、よりよい日常生活を送ることができるように患者さんと共に考えていきます」(武田医師)
武田医師は治療薬や治療法の開発にも旺盛で、もっとも得意とする腹腔鏡下手術などの低侵襲手術法の開発はもちろん、前立腺肥大症・腹圧性尿失禁などの排尿障害に対する新しい治療薬として可能性のある物質の発見、膀胱がんや前立腺がんに対する新しい化学療法の導入、腎不全患者さんに対する腎移植、人工透析や腹膜透析、さらには女性骨盤底障害(腹圧性尿失禁、膀胱脱など)の患者に対して、TOTスリング手術や人工材料によるメッシュ補強術などの新しい低侵襲手術の開発をおこなっている。
それらはすべて、今よりももっと体への負担が少ない手術や、より効果のある薬など、どれも患者のつらさを軽減するものばかりだ「患者さんの満足できる質の高い最小侵襲医療」を目指す武田医師の医療に対する強い意思が、そこにある。

医師プロフィール

1981年3月 新潟大学医学部医学科 卒業
1987年8月 新潟大学医学部附属病院 助手(泌尿器科)
1987年11月 新潟大学医学部附属病院 講師(泌尿器科)
1991年4月 新潟大学医学部 助教授(泌尿器科学講座)
1999年6月 山梨医科大学教授(泌尿器科学)
2002年10月 山梨大学教授(泌尿器科学講座)
2009年4月 山梨大学医学部附属病院副院長、日本排尿機能学会理事長
2011年9月 国際禁制学会(ICS: International Continence Society)理事
2013年4月 山梨大学医学部長