意識障害・失神
気を失ったり、意識が遠のいたりするようなことがはじめて起こったときには、たとえすぐに回復したとしても、医療機関を受診して原因を調べたり、治療を受けたりする必要があります。早期の治療を要する重大な病気がある可能性が考えられるためです。原因があきらかになるまでは、なるべく一人歩きや車の運転を控えたほうがよいでしょう。以前から同様の発作をくり返していて、医師から対処の方法を教えられている場合には、必ずしも慌てることはありませんが、もしも以前の症状と異なることがあれば、やはり医療機関を受診して相談したほうがよいでしょう。
意識を消失した人が周囲にいた場合、肩をたたきながら大声で呼びかけて反応するかどうかを確かめ、反応がなければ、応援を求めて119番通報を依頼し、AED(自動体外式除細動器)があれば持ってくるように周囲の人にお願いします。胸やおなかの動きを見て、正常な呼吸をしていなければ、すぐに胸骨の圧迫を開始します。心肺蘇生の訓練を受けている人がいれば、その指示に従い、119番通報した場合は、電話をつないだまま指示に従います。意識が回復するか、救急隊員が到着するまで蘇生処置を続けてください。
けいれんと同時に起こる意識障害は、心臓病に伴う房室ブロックや洞機能不全症候群、中高年では脳卒中、小児ではてんかんなどでみられます。けいれんを伴う場合、舌をかんだり、吐いたもので窒息したりしないように注意する必要があります。いずれにせよ、どのような状態で気を失ったかが重要な情報になりますが、ほとんどの場合、本人は意識が戻ったあとも当時の状況を覚えていませんので、目撃したまわりの人の話が診断の決め手となることもよくあります。
時間とともに自然におさまるような失神やめまいの大半は、脳循環不全や低酸素血症によって起こります。この際、回転性、つまりグルグル回るようなめまいではなく、フワーッと感じるようなめまい感を生じます。失神の原因の過半数は反射性失神で、長時間の立位や頸部の圧迫等を契機に血圧が下がって脳の血液の循環がわるくなり、一時的に意識がなくなります。特に高齢者では食後に血圧が下がることがあり、飲酒後に立ち上がって失神することがあります。排尿後にスーッと気が抜けて起こる排尿後失神や、激しいせきのあとに起こるせき失神などもあります。肺気腫や肺線維症では、低酸素血症とともに二酸化炭素が蓄積しやすく、意識障害の原因となります。心臓がドキドキと脈うつ動悸(どうき)に続いて失神したのであれば、頻拍症や徐脈などの不整脈による可能性が考えられます。
発熱を伴い意識障害を起こす病気では、脳炎や髄膜炎、狂犬病、肺炎、腸チフス、破傷風などがあります。発熱を伴いませんが、糖尿病では血糖値が下がりすぎた場合にも意識障害を生じますし、かぜをひいたり、おなかをこわしたりしたときに、急にだるくなり口渇が強くなって、さらに重症になると意識が低下することがあります。重い肝臓病や腎臓病では、体内でできた老廃物を十分に処理しきれず、中毒症状として意識障害があらわれます。
内臓(胃など)からの大出血によるショックと意識障害も危険な状態であり、すぐに対処が必要です。外傷による脳震盪(のうしんとう)のように、直後に生じた意識障害では、原因をまちがえられることはまずありませんが、硬膜下血腫では、受傷から数日ないし数週間たってから意識の低下を生じる場合があり、注意が必要です。
外部環境によって生じるものとして、炎天下でのクラブ活動などに伴う熱中症や、高温多湿の室内で働く人がかかりやすい熱中症があります。いずれも、その予防には水分の補充が重要です。また、最近では夏場のゲリラ豪雨により、ぬれたからだが気温の低下や強風によって急激に冷却され、低体温症から意識障害におちいったというニュースが、しばしば報道されています。特に、筋肉量の少ない子ども・女性・高齢者のリスクが高いとされており、注意が必要です。
このほかに、自殺行為を含めて、アルコール、一酸化炭素、睡眠薬、光化学スモッグなどの中毒も、意識障害の原因となり、早急な対応が求められます。
(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 総合診療部 部長 細田 徹)
意識を消失した人が周囲にいた場合、肩をたたきながら大声で呼びかけて反応するかどうかを確かめ、反応がなければ、応援を求めて119番通報を依頼し、AED(自動体外式除細動器)があれば持ってくるように周囲の人にお願いします。胸やおなかの動きを見て、正常な呼吸をしていなければ、すぐに胸骨の圧迫を開始します。心肺蘇生の訓練を受けている人がいれば、その指示に従い、119番通報した場合は、電話をつないだまま指示に従います。意識が回復するか、救急隊員が到着するまで蘇生処置を続けてください。
けいれんと同時に起こる意識障害は、心臓病に伴う房室ブロックや洞機能不全症候群、中高年では脳卒中、小児ではてんかんなどでみられます。けいれんを伴う場合、舌をかんだり、吐いたもので窒息したりしないように注意する必要があります。いずれにせよ、どのような状態で気を失ったかが重要な情報になりますが、ほとんどの場合、本人は意識が戻ったあとも当時の状況を覚えていませんので、目撃したまわりの人の話が診断の決め手となることもよくあります。
時間とともに自然におさまるような失神やめまいの大半は、脳循環不全や低酸素血症によって起こります。この際、回転性、つまりグルグル回るようなめまいではなく、フワーッと感じるようなめまい感を生じます。失神の原因の過半数は反射性失神で、長時間の立位や頸部の圧迫等を契機に血圧が下がって脳の血液の循環がわるくなり、一時的に意識がなくなります。特に高齢者では食後に血圧が下がることがあり、飲酒後に立ち上がって失神することがあります。排尿後にスーッと気が抜けて起こる排尿後失神や、激しいせきのあとに起こるせき失神などもあります。肺気腫や肺線維症では、低酸素血症とともに二酸化炭素が蓄積しやすく、意識障害の原因となります。心臓がドキドキと脈うつ動悸(どうき)に続いて失神したのであれば、頻拍症や徐脈などの不整脈による可能性が考えられます。
発熱を伴い意識障害を起こす病気では、脳炎や髄膜炎、狂犬病、肺炎、腸チフス、破傷風などがあります。発熱を伴いませんが、糖尿病では血糖値が下がりすぎた場合にも意識障害を生じますし、かぜをひいたり、おなかをこわしたりしたときに、急にだるくなり口渇が強くなって、さらに重症になると意識が低下することがあります。重い肝臓病や腎臓病では、体内でできた老廃物を十分に処理しきれず、中毒症状として意識障害があらわれます。
内臓(胃など)からの大出血によるショックと意識障害も危険な状態であり、すぐに対処が必要です。外傷による脳震盪(のうしんとう)のように、直後に生じた意識障害では、原因をまちがえられることはまずありませんが、硬膜下血腫では、受傷から数日ないし数週間たってから意識の低下を生じる場合があり、注意が必要です。
外部環境によって生じるものとして、炎天下でのクラブ活動などに伴う熱中症や、高温多湿の室内で働く人がかかりやすい熱中症があります。いずれも、その予防には水分の補充が重要です。また、最近では夏場のゲリラ豪雨により、ぬれたからだが気温の低下や強風によって急激に冷却され、低体温症から意識障害におちいったというニュースが、しばしば報道されています。特に、筋肉量の少ない子ども・女性・高齢者のリスクが高いとされており、注意が必要です。
このほかに、自殺行為を含めて、アルコール、一酸化炭素、睡眠薬、光化学スモッグなどの中毒も、意識障害の原因となり、早急な対応が求められます。
症状 | 病名 | そのほかの症状など |
---|---|---|
意識障害・失神 | 反射性失神 | 長時間の立位で起こる |
脳出血 | めまい、頭痛、高血圧、吐き気、顔面や手足のまひ | |
脳梗塞 | 頭痛、嚥下困難、感覚障害、めまい、片側の顔面や手足のまひ | |
くも膜下出血 | 頭痛、けいれん、吐き気・嘔吐、くびのうしろがかたくなる(項部硬直) | |
一過性脳虚血発作 | めまい、脱力発作、感覚鈍ま | |
てんかん | 発作をくり返す、筋の急な収縮や脱力 | |
脳炎 | 発熱、吐き気・嘔吐、頭痛 | |
髄膜炎 | 発熱、頭痛、嘔吐、吐き気 | |
硬膜下血腫 | 頭部外傷後、数日後にあらわれることもある | |
頭部外傷による脳震盪 | ||
房室ブロック | めまい、息切れ | |
洞機能不全症候群 | めまい、息切れ | |
低血圧症 | 眠け、だるい、めまい | |
ファロー四徴 | チアノーゼ(皮膚が青紫になる)、息切れ | |
肺炎 | せき・たん、発熱、疲れやすい、胸痛、食欲がない、息切れ | |
間質性肺炎 | 脈が速い、からせき、息切れ | |
狂犬病 | 嚥下で強い痛み | |
腸チフス | 発熱、発疹、頭痛 | |
破傷風 | けいれん、口が開きにくい、発熱 | |
低血糖症 | 全身のけいれんや運動まひ | |
糖尿病の悪化 | ||
肝不全 | 羽ばたき振戦、だるい | |
出血性ショック | 外傷など | |
低体温症 | 尿が少ない、頭痛、吐き気 | |
熱中症 | のぼせ、頭痛、尿が少ない、吐き気 | |
急性アルコール中毒 | 飲酒後 | |
一酸化炭素中毒 | 頭痛、脱力、視力障害 | |
睡眠薬による中毒 | ふらふらするめまい、眠りすぎ | |
慢性アルコール中毒(ウェルニッケ脳症) | 眼球運動障害、運動失調 |
(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 総合診療部 部長 細田 徹)