加隈哲也 医師 (かくまてつや)

大分大学医学部附属病院

大分県由布市挾間町医大ヶ丘1-1

  • 大分大学保健管理センター
  • 准教授

内分泌科・糖尿病 内科 内分泌内科

専門

内分泌・糖尿病、肥満症

加隈哲也

メタボリックシンドロームや肥満症をはじめとする生活習慣病に対する治療とともに、その予防に関する研究に携わる。患者が日々の体重を測定し記録する「グラフ化体重日記」を主とした行動療法など、患者の病識向上にも取り組んできた。生活習慣病の中に潜む内分泌疾患の診断を重視し、これを見逃さないようにきめ細かな診断を行っている。脂質代謝調節や過栄養性脂肪肝の病態生理学的メカニズム、レプチン(肥満抑制ホルモン)による脂肪代謝と脂肪蓄積の制御などの研究実績も豊富である。

2016年4月より大分大学保健管理センターに異動、現在大学では、外来診療を行っていない。

診療内容

肥満症治療においては食事療法と運動療法が主な治療であり、過食や間食、運動不足などの生活習慣改善が必須である。しかし肥満の原因はさまざまで、過食や運動不足以外にも原因があるため、患者一人ひとりの問題を引き出して治療に結びつけるアプローチが欠かせない。しかし、その方法を患者に指導するだけで減量を実現するのは難しく、患者の病識不足という根本的な課題から改善していくことが有効である。
加隈医師によればヒトの食行動には野生動物には認められないパターンがあり、1.目の前においしそうなものがあるとつい手が出る、2.残すのがもったいなくて食べる、3.残すと悪いから気兼ねして食べる、4.イライラして食べ過ぎるなど多様である。動物とは違う食行動だからこそ、認知調節をつかさどる高次脳機能へのアプローチが必要。その手段として効果的なのが行動療法だという。
「肥満症患者は体重を計りたがらない、あるいは体重を測定する習慣がない人が大半です。肥満治療における行動療法の基本は、まず体重計に乗ること。それ自体が最も単純かつ重要な行動療法です」
同院は日本肥満学会が認定する肥満症専門病院の一つであり、体重を測定し記録する「グラフ化体重日記」を考案したことで広く知られる(考案は坂田利家医師)。これは毎日の体重測定結果をグラフ化するという簡単な方法で、体重計とグラフ用紙があれば誰でも取り組むことができる。1日4回(起床直後、朝食直後、夕食直後、就寝直前)体重を測定・記録し、悪い生活習慣が続くとグラフが乱れるように、毎日の体重測定の中で誤った食行動や生活習慣を認識して改善するものだ。「体重記録だけで減量できるのか?」との思いを抱きやすいが、グラフが右肩下がりになっていく「快感」が高次脳機能へ作用し、過剰な食欲が自然に抑えられることが証明されている。
血糖値の変化については、体重測定習慣の有無によってHbA1c値(ヘモグロビン・エイワンシー)がどう変化するかを比較調査したデータによると、体重測定習慣があり測定頻度が多い人ほどHbA1c値が低いという結果が出ている(大分県別府市のデータによる)。体重測定の習慣が少ない人はリバウンド率が高いという結果もあり、測定習慣そのものが血糖コントロールに寄与している訳だ。
加隈医師が注目するのは、コメディカルも含めて、行動療法を中心とした肥満症治療を行っていくという点である。「厳しい食事制限を前面にだした指導ではなく、グラフ化体重日記を中心に体重測定習慣を意識づけ、記載に問題がある場合にstep by stepで継続した記載ができるように指導を行う、その際に少しずつ食生活への振り返りを行うのが重要」こうした指導を管理栄養士に実践してもらったところ、例えば運動療法を指導していないのに、4人に1人は運動習慣が自然に身についたという。食生活に関しても同様で、厳しい食事指導をしていないにもかかわらず、高カロリーの食物摂取が減り、魚や野菜を摂る人が増えた、つまり患者が自発的に改善するようになったというのだ。体重測定を習慣づけることは、本人の意識改善という面から減量効果を維持・促進できるのである。
肥満治療にあたっては食事療法や運動療法、行動療法といった内科的治療・指導に加え、薬物治療の併用、外科治療との連携も欠かせない。外科治療には、内視鏡的胃内バルーン留置術、腹腔鏡下調整性胃バンディング術、腹腔鏡下胃縫縮術などがあり、内科的治療だけでは減量維持が困難な高度肥満の症例に対して適用される。「肥満はコラボで治療する時代。行動療法は独立した治療ではないのです」(加隈医師)
加隈医師は、医療従事者―患者関係も減量に大きく影響すると述べる。「減量のために低カロリーの食事療法と運動療法を“強要”し、指示に従わない患者を“叱る”状態になると中長期的な減量に結びつきません。指導が“強要”に、説得が“叱責”になると、それは医療従事者の自己満足にすぎないのです。医師は、患者が自己管理できるようサポート役に徹することが何よりも重要。その結果として得られる減量という報酬を分かち合える治療を目指しています」

医師プロフィール

1990年3月 大分医科大学卒業
1990年4月 大分医科大学医学部第一内科研修医
1991年 大分市医師会立アルメイダ病院内分泌科
1992年 大分医科大学医学部医学研究科生化学部門大学院入学
1992~1995年 九州大学生体防御医学研究所生化学部門
1996年 大分医科大学医学部医学研究科生化学部門大学院卒業
1998~2000年 米国テキサス大学サウスウエスタンメディカルセンター糖尿病研究センター留学
2001年 大分医科大学医学部第一内科助手
2007年 大分大学医学部生体分子構造機能制御講座・内科学第一助教
2010年 大分大学医学部附属病院内分泌糖尿病内科 講師
2013年 大分大学医学部内分泌代謝・膠原病・腎臓内科学講座 講師
2016年4月 大分大学保健管理センター 准教授

「肥満症」を専門とする医師