下村伊一郎 医師 (しもむらいいちろう)

大阪大学医学部附属病院

大阪府吹田市山田丘2-15

  • 糖尿病・内分泌・代謝内科
  • 教授 科長

内分泌科・糖尿病 内科 内分泌内科

専門

肥満症、内分泌疾患、メタボリックシンドローム、糖尿病、高脂血症、高血圧症、動脈硬化症

下村伊一郎

肥満症研究のプロフェッショナル。内科疾患のうちでも特にメタボリックシンドローム、糖尿病、高脂血症、動脈硬化症などの成因解明と、その新たな診断・治療法の開発に意を注いできた。生活習慣病の原因因子であるアディポネクチン(脂肪細胞から出る重要なホルモン)を発見したことで広く知られている。研究者としての実績に基づいた確かな診療に多くの患者が信頼を寄せている。栄養マネジメント部長も兼任するなど、多角的な患者指導にあたっている。

診療内容

「脂肪組織がホルモンを出す」とは誰も考えなかった頃、脂肪細胞から出る「アディポネクチン」を共同研究者らと発見したのが下村医師である。この発見を機に、肥満研究は脚光を浴びるようになった。アディポネクチンとは脂肪細胞から大量に分泌される善玉ホルモンである。動脈硬化のみならず、さまざまな炎症・腫瘍に関係しているキーホルモンであり、特に組織修復にも重要な役割を果たしているという。
糖尿病や高脂血症など、生活習慣病のベースが脂肪蓄積にあることから、下村医師は脂肪組織からさまざまな内分泌因子の働きを明らかにし、生活習慣病の予防、診断、治療法の開発を目指す研究を続けてきた。
しかし、従事するのは研究ばかりではない。学生への講義や病院での診察も日常的に行う。「研究も大切ですが、病に苦しむ患者さんをきめ細かく診察し、その過程で出てきた疑問や問題点を研究で解決し、ふたたび患者さんに還元したい。私は常にこう思っています」と下村医師は語る。これは恩師(大阪大学 松澤名誉教授)がかつて発した「試験管の向こう側に患者さんの顔が見えるか?」という言葉が胸に刻まれているからだという。
「脂肪細胞から発見したホルモンを患者に投与し、回復して“ありがとう”と言葉をかけられるのは本当にうれしいものです。私にとって研究は、人間が健康に生きていくための“手助け”なのです」(下村医師)
下村医師が率いる大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学では、医師約60名(糖尿病専門医、内分泌代謝専門医、甲状腺専門医を含む)により、糖代謝疾患(糖尿病など)、肥満症、脂質代謝異常、痛風、甲状腺疾患、副甲状腺疾患、視床下部下垂体疾患、副腎疾患、性腺疾患、骨粗鬆症などの診療を行っている。
外来部門に「糖尿病ケア・看護外来」「糖尿病・メタボリックステーション」を置いている点が特徴である。「糖尿病ケア・看護外来」は糖尿病患者へのフットケアを行い、糖尿病足病変の発症や再発の予防、足の自己管理啓発を促している。また、インスリン製剤をはじめとする自己注射や血糖自己測定の指導も行う。
「糖尿病・メタボリックステーション」は国立大学初の試みとして2008年10月に開設され、脳・心血管疾患の大きな危険因子である糖尿病、メタボリックシンドロームを有する患者の内臓脂肪量、動脈硬化進展状態を検査し、適切な診療科に橋渡しすることをコンセプトとしている。内分泌・代謝内科全体の診療をカバーし、内分泌・代謝内科の特徴を生かした診療を行い、地域の医師と協力した医療をめざしている。
「糖尿病・メタボは全身の病気です。さまざまな診療科にかかっている人が糖尿病を持っているケースも増えています。関係する診療科と連携し、患者さんが戸惑わなくて済む優しい医療をめざしています」と下村医師は語る。
21世紀は「生活習慣病の時代」と言われる。肥満と疾患の関係性を明らかにする研究の重要性は、増加の一途をたどるばかりである。患者と向き合いながら、肥満研究の最前線に立つ下村医師の研究と治療に期待したい。

医師プロフィール

1989年3月 大阪大学医学部医学科卒業
1989年4月 大阪大学第2内科学入局
1993年3月 大阪大学大学院医学博士課程修了(内科学)
1993年6月 市立豊中病院内科医員
1995年9月 テキサス大学サウスウエスタンメディカルセンター研究員(分子遺伝学講座)
1997年9月 同講座 Instructor
1999年6月 同講座 Assistant Professor
2001年4月 大阪大学大学院医学系研究科分子制御内科学(第2内科学)特任研究員
2001年度 日本肥満学会賞
2001年度 ベルツ賞(松澤佑次先生、船橋徹先生、木原進士先生との共同受賞)
2002年4月 大阪大学大学院生命機能研究科・医学系研究科 病態医科学教授
2002年度 読売新聞・東京テクノフォーラム「ゴールド・メダル賞」
2002年度 日本医師会医学研究助成
2003年度 日本糖尿病学会賞(リリー賞)
2004年4月 大阪大学大学院医学系研究科分子制御内科学(第2内科学)教授
2005年4月 大阪大学大学院医学系研究科内分泌・代謝内科学教授
2012年4月 同院栄養マネジメント部長も兼任

「肥満症」を専門とする医師