茶木修 医師 (ちゃきおさむ)

労働者健康安全機構 横浜労災病院

神奈川県横浜市港北区小机町3211

  • 産婦人科・分娩部
  • 部長

産婦人科 産科 婦人科

専門

加齢、更年期医療、女性医学、骨粗鬆症

茶木修

茶木修医師は、産婦人科医としての立場から女性の骨粗鬆症の治療や研究に力を入れており、更年期からの健康管理に関するアドバイスも含めた治療を行う。その際は、服用コンプライアンスも重要視している。また、診療における骨代謝マーカーの臨床意義・適正使用・利用上の課題などについても研究しており、マーカーは健康診断でも利用。患者の病態把握や治療効果判定に、効果的に活かしている。次々と登場するマーカーや薬剤に対しては「情報をうのみにせず、まず検証する」という姿勢をもつ。

診療内容

婦人科においては、通常では骨粗鬆症には至らないレベルでの骨量減少、あるいは骨量減少症と呼ばれるレベルからを治療の対象とするのが特徴。つまり骨粗鬆症の人ばかりでなく、その予備軍の人も治療の対象となる。更年期以降に生理不順や閉経を迎えた女性を中心に、二次性あるいは早発性閉経、がんなどで若いうちに卵巣を摘出した女性も対象となる。 治療の流れとしては、まずは入念に検査をして症状を正確に把握。次に患者に十分な説明と情報提供をして治療方法を決定し、かつその結果を検証していく。
検査では、DXA法で腰椎や大腿骨の骨密度を測定。ただし、骨密度が極端に低く、骨粗鬆症が進行して骨がつぶれてしまっている患者の場合、DXA法で良い値が出てしまうことがあるため、同時に必ず骨の単純レントゲン撮影をして骨折がないかどうかを確認。同時に問診も十分に行うほか、一通り全身のチェックもする。さらに詳細な骨代謝マーカーを測定し、骨代謝の状態の把握にも努める。ひと口に「骨密度が低い」といっても、閉経後の骨粗鬆症のように高回転型の骨代謝の場合と、別の理由で骨密度が低いという場合では、薬剤も使い分けなければならないため、検査は重要である。また、当科は婦人科ということもあり、骨量減少以外にも更年期症状などがみられた場合は、患者に対しホルモン補充療法を中心とした治療方法の提案や薬剤の説明を行う。さらにその効果判定として、1カ月目、3カ月目、6カ月目に骨代謝マーカーや問診、副作用のチェック、血中カルシウム濃度の変化、尿中のカルシウム排泄量など細かなチェックを行う。
骨粗鬆症治療の目的は、骨折の予防。最も効果が高いのはビスフォスフォネートであり、2番目がホルモン補充療法、次いでビタミンDとなる(カルシトニンの場合、効果は認められているが注射薬で週1回の通院が必要となり患者への負担が大きいため、積極的には取り入れていない)。最近では、骨形成促進剤である副甲状腺ホルモン(PTH)も使用している。
ホルモン補充療法については、骨粗鬆症以外にも高脂血症の抑制など良い面が大きいが、懸念は副作用。そのため、ホルモン補充療法を採用した場合は、乳がんと子宮体がん、子宮頚がんのチェックを行う。子宮体がんや頚がんは、細胞検査を。内診と超音波検査により、卵巣がんもチェックする。がんのチェックは約6カ月ごと、乳がんは6カ月ごとの触診と年1回のマンモグラフィーと密にフォロー。安全かつ有効にホルモン補充療法をすすめるには、このくらいのチェックが必要と考える。
骨に対するホルモン補充療法の効果は、個人差が大きい。顕著に骨密度が高まる患者も多いが、2~3年経過すると骨の増加作用は落ち着く。維持効果は残るものの増加効果は少しずつ薄れてくるので、骨代謝マーカーなどで常に評価することが必要。効果があまりに薄くなっている場合には、ホルモン補充療法が不必要になることもある。なお、ホルモン補充療法には出血が起こるケースが多いため、患者が拒否した場合にはビスフォスフォネートなど別の薬剤を提案。その際は、それぞれの特徴、期待される効果、副作用などすべて説明し、患者に選んでもらう。また、日本人は潜在的にカルシウムやビタミンDが不足しており、特に高齢になるとカルシウム吸収率が低下するので、吸収率を上げるにはビタミンDが適当。薬剤というよりサプリメントとして利用するのが良いと思われる。さらに、ホルモン補充療法との併用で相乗効果も期待できる。
閉経期以前の性成熟期にある女性でも、神経性食思不振症、両側卵巣摘出、過度の運動による無月経などの他、降圧剤(レセルピン、メチルドーバなど)や胃腸薬(スルピリド、メトクロプラミドなど)の長期服用など、何らかの原因により性腺機能が低下し、エストロゲンの分泌が低下すると、骨量の低下が起こり、骨粗鬆症やそれに伴う骨折のリスクが高まる。明らかな原因がわからない続発性の無月経や稀発月経も、性腺機能の低下を疑う必要がある。性腺機能低下による骨量減少の治療の原則は、性腺機能の回復。原因と考えられる因子の除去が大切で、適度の運動の勧め、ダイエットの中止、また薬剤性の場合は中止や他の薬剤への変更を行う。下垂体腺腫では外科的治療を行うことも。それでも改善が認められない場合は、薬物療法を開始する。薬物療法の第一はエストロゲンの補充療法(ERT)。とはいえ、それだけでは完全な骨量の回復が得られないことも多く、その際にはビスフォスフォネートやビタミンD、ビタミンK2といった薬剤を使用。なお、エストロゲンを用いた治療では、乳がん、子宮体がんや血栓症のリスクが指摘されているため、その管理には十分注意が必要となる。さらに、性成熟期の骨粗鬆症では、治療によって骨量増加が認められたとしてもその頂値が低く、閉経や加齢に伴う原発性骨粗鬆症の予備軍であることが多い。そのため、長期間のフォローが必要となる。

医師プロフィール

1987年 横浜市立大学医学部 卒業
2002年 横浜市立大学医学部助手
2004年 横浜市立大学医学部付属病院講師
2005年 横浜市立大学医学部総合医療センター病院准教授
2008年 横浜労災病院産婦人科副部長
2011年 横浜労災病院分娩部部長