帖佐悦男 医師 (ちょうさえつお)

宮崎大学医学部附属病院

宮崎県宮崎市清武町木原5200

  • 整形外科、リハビリテーション部
  • 副病院長
  • 科長 部長

整形外科 外科 リハビリテーション科

専門

関節外科(特に股関節)・スポーツ整形・骨粗しょう症・関節リウマチ・小児整形を専門とし、ロコモティブシンドロームに詳しい。

帖佐悦男

帖佐悦男医師は、関節外科からスポーツ傷害(外傷・障害)、骨粗鬆症まで幅広い臨床経験と知識に裏付けされた確かな診断と治療により、高い実績を持つ整形外科の名医で、下肢の中でも股関節手術(骨切り術や人工関節置換術)を専門とする。ロコモティブシンドロームに熱心に取り組み、寝たきりを防止し健康寿命を延ばすロコモ予防体操(ロコモーショントレーニング・ロコトレ)の普及を行う。スポーツランド宮崎を医療の面から支える「スポーツメディカルサポートシステム」を立ち上げ、その中心的存在として産官学のまとめ役となり、県全体の健康増進を目指してスポーツ医療推進活動に尽力する。

診療内容

同院は特定機能病院として変形性・リウマチなどの関節疾患、脊椎疾患やスポーツ傷害などの領域で高度先進医療を提供すると共に、宮崎県の中核病院として救急医療を含めた地域医療に貢献している。帖佐医師は2004年5月に同大学医学部整形外科学教室の教授に就任し、臨床、教育、研究に精力的な活動をしている。
同教室では研究面においてもあらゆる症例の臨床研究はもとより、バイオメカニクス、骨・軟骨再生、疾患遺伝子解析などを中心に行っているが、帖佐医師はそうした研究の推進役として最新、最良の医療を提供できるよう尽力している。高度な医療水準を保ち、さらにはそれを実践できる人格と能力を持つ医師を育成することを最終的な使命としている。
同科では下肢、脊椎、スポーツ整形、上肢の4つのグループに分かれて診療しており、1日外来患者数は院内トップを維持している。診療は骨折や脱臼などの外傷はもとより、関節外科(変形性関節症、関節リウマチなどに対する関節温存手術や人工関節置換術等)から顕微鏡を導入した脊椎外科、靱帯再建や選手管理を行うスポーツ整形、手の外科(手の機能再建)まで幅広い分野を網羅する。専門の股関節疾患は先天性股関節脱臼、ペルテス病などの小児疾患から日本人女性に多い変形性股関節症や大腿骨頭壊死症などの治療にあたっている。基本は保存療法であるが、変形性股関節症は臼蓋形成不全に起因する二次性股関節症が多いため臼蓋形成不全の程度が高度であれば前・初期股関節症(軟骨が残存している病期)の時に関節を温存可能な寛骨臼骨切り術(スイスのガンツ教授の開発したPAO:periacetabular osteotomy)を実施している。しかし、受診する患者は既に軟骨が減り関節症が進行してからの患者も多いので、絶好の機会(window of opportunity:関節温存手術が可能な時期)を逃さないことが重要であり定期的診察の必要性を訴えている。また、ガンツ先生が提唱したFAI(femoroacetabular impingement)の概念を日本に最初に導入し診療にあたっている。
スポーツに関しては県内外のプロ選手や実業団のチームドクターとしてメディカルサポートにあたり、日常の午後は将来を期待されている学生たちが受診し早期発見・早期治療をすることでスポーツ復帰を果たし、国際・国内大会での優勝を含め活躍している姿を見ることが楽しみと話している。さらにはサッカーやラグビーのナショナルチームにチームドクターを派遣するなどスポーツ振興にも貢献している。
帖佐医師の力を入れている分野に運動器疾患に関する病態解明および治療法の開発がある。とくにロコモティブシンドロームの治療及び予防と啓発活動について積極的に行っている。「超高齢化社会を迎え、運動器の障害であるロコモティブシンドロームの一つである変形性膝関節症、腰部脊柱管狭窄症や骨粗鬆症などの予防、早期発見、早期治療が重要な課題となっています。治療の目標は疼痛の軽減はもとより、関節機能の維持・改善であり、筋力訓練や関節可動域訓練などの運動療法や有酸素運動、さらには柔軟性、バランス能力や筋力の獲得のための体操の指導のみならず、生活環境までを包括したアプローチが必要だと考えています」と話す。
ロコモティブシンドローム(運動器症候群)とは骨や筋肉・関節などの運動器が衰えて、転倒や骨折をしやすくなったり、将来、介護が必要になったり、寝たきりになることやその可能性が高い状態を指す。略称として“ロコモ”と呼ばれるが、加齢に伴う骨や筋肉、関節などの運動器の衰えが原因となる。こうした関節疾患や転倒・骨折により「立つ」「歩く」などの日常の基本的な動作が困難になっていたり、その予備軍と考えられる人は、現在、4,700万人にものぼるといわれており、超高齢化社会を迎えて今後のさらなる増加が危惧されている。
こうしたロコモティブシンドロームは50代から急増するが、女性では40代から膝の軟骨の変性や骨粗しょう症が始まっており、男性も40代で5割弱の人が腰椎椎間板の変性が始まっているとされ、早い年代から運動器が傷んできていることがわかる。早めに対策を取ることが求められるが、膝や腰の違和感に気づいた段階からでも適切な運動を行うことで将来の運動器の衰えを予防することができる。
運動器は連携して働いているため、どこか1カ所悪くなっただけで身体全体がうまく動かなくなってしまう。したがって、ロコモでは骨と関節、筋肉などを個々に捉えるのではなく、身体全体に注目することが大切であると考えている。目標は「日常生活において、歩き続けられること」にあり、そのために身体全体をいかにバランスよく使っていくかが重要と考えている。好きな言葉に運動器の10年のキャッチフレーズでもある「動く喜び、動ける幸せ」があり、子どもたちにも「運動器の大切さ」を教えている。
帖佐医師は市民公開講座、健康教室や総合型地域スポーツクラブをとおして、高齢者への配慮にも言及している。高齢者の場合ロコモの進行に個人差が大きく、不適切な運動やトレーニングによってかえって運動器を痛めたり転倒してしまう危険もあるので、インストラクターは高齢者が安全に運動するために注意が必要としている。「ロコモになるとバランス能力が衰え、脚も上がりにくくなるため、運動に時間もかかります。その人の運動能力を見分けるための障害物をまたいで歩くテストなど活用しながら、インストラクターが運動能力の個人差をしっかり把握して安全にトレーニングをすることが重要です」(帖佐医師)
また、ロコモは子どものころの運動習慣と密接に関わっていると考えられており、大人ばかりではなく、子どもへの注意も必要である。
子どもの運動器は未発達であるため、過度の運動や不適切な運動方法によりスポーツ傷害を引き起こす可能性があり、大人になっても痛みが残っていたり、動作に支障を来してロコモにつながることも少なくない。
最近では幼少期からの運動不足が原因で基本的な運動能力が低下し、それが将来、ロコモに結びつきやすいこともわかってきた。いずれにせよ、子どもの頃によい運動習慣を身につけることが将来のロコモ予防につながるとし、帖佐医師は子どもに向けた活動にも積極的に取り組んでいる。
帖佐教授は「人は動けることが基本で動けば人とのかかわりが生まれる。足腰がしっかりして自分で何でもでき、軽い運動ができる人は介護が必要な状態にならず、精神的にも安定しています。ロコモ予防を通して健康寿命を延ばしたい」と意欲を語る。
さらに帖佐医師は県全体の健康増進活動の一環としてのスポーツ医療推進活動についても積極的に取り組み「スポーツメディカルサポートシステム」を立ち上げ、文部科学省の連携融合事業を2007年4月からスタートさせている。スポーツキャンプ地のメッカである宮崎の地域特性を活かして宮崎県や企業と連携して、メディカルチェック、メディカルサポートを行うと共に、豊富なデータを基に種目特性などにも注目し、障害の病態解明を行い、予防や早期発見に役立てるというもの。ひいては地域住民の健康維持や向上にも貢献するという目的を持つ。
同院のスポーツ外来の設置は1993年と国立大学としては最も早い時期にスタートしており、スポーツ選手へのメディカルサポートについても熱心に行ってきた。帖佐医師は国体など宮崎県選手団にスポーツドクターとして帯同するほか、自身も小学生時代は野球を楽しんでいたが、肘や肩の痛みのため中学校ではサッカーに転向するという経験を持つ。スポーツ傷害を持つ選手の辛さや悔しさがわかるだけに、スポーツ傷害については早くから取り組んできた。この「スポーツメディカルサポートシステム」においても、外傷や障害のためにスポーツができない人やできなくなる人をなくしたいと、同科のスポーツ外来を通して宮崎県体育協会、医師会などと協力し、長年にわたり取り組んできたテーマを産学官が一帯となった連携融合事業として発展させている。「故障やケガなどのためリタイアしなければならなくなった選手の原因を検討し、データを解析することで同様の症状に陥ったり、その可能性がある人たちの予防や改善に役立てることができます。その結果、故障などのためにせっかくの希望や夢をあきらめる子どもや選手たちをなくすことだけでなく、さらにトップアスリートの子供の頃からのデータを蓄積し解析し、トップアスリートの子供の頃の基礎体力の特徴を明らかにすることで、子供の隠れている資質を引き出すことや最適なスポーツを見つけてあげることも可能になります」(帖佐教授)。自身の経験や野球傷害(野球肘や野球肩など)のため楽しい野球ができなくなっている子どもたちをなくすため、「子どもに笑顔を!―野球傷害を防ごうー」の全国規模の野球検診プロジェクトを柏口新二先生らとともに開始し、特に野球肘の早期発見に貢献している。
“スポーツランド宮崎”を支えるシステムとして期待も大きく、帖佐医師は推進役としての役割を担う。こうした活動の中から、新たに2010年10月には「健康スポーツナース」制度も発足させている。「スポーツメディカルサポートシステム」をサポートするために重要な役割を果たす看護士を対象に「発育・発達」を意図した運動機能評価「健康づくり」としての運動指導「健康回復」への看護介入やスポーツイベントへの同行・支援を行うことを目的に創設された。「より専門的知識を修得した健康スポーツナースが運動やスポーツの現場にかかわることで、スポーツ外傷・障害、ロコモティブシンドローム、生活習慣病などの予防に貢献し、一人でも多くの人の明るく元気な老後が実現できるよう期待したい」と帖佐医師は語る。

医師プロフィール

1984年 大分医科大学医学部医学科 卒業
1996年 宮崎医科大学医学博士
1998年 宮崎医科大学医学部助教授
2004年 宮崎大学医学部整形外科教授
2005年 宮崎大学医学部附属病院 副病院長

「スポーツ整形外科」を専門とする医師