太田博明 医師 (おおたひろあき)

山王メディカルセンター

東京都港区赤坂8-5-35

  • 女性医療センター
  • センター長、教授

婦人科 産婦人科

専門

婦人科(骨粗しょう症、生活習慣病、婦人科腫瘍、更年期障害、婦人科全般)

太田博明

女性の健康長寿をめざす女性医療の分野で、日本をリードしてきたパイオニア。複数の疾患で専門医、認定医、教育医など多数の資格を有しているが、特に造詣が深いのは、骨粗鬆症や婦人科腫瘍など女性疾患で日本骨粗鬆症学会理事長を務める婦人科医。女性の全人的かつ統合的な医療を心がける数少ない臨床医だ。病気にかかる前から検診を受ける予防医療の重要性を説き、女性の生涯にわたる健康支援をモットーに、ウェル・エイジング(よりよく生きる)のための医療を実践している。

診療内容

大学病院時代の治療中心の医療から予防中心の医療へのパラダイムシフトをはかり、山王メディカルセンター・女性医療センターを拠点にエネルギッシュな活動を展開している。
「生を得たからには、元気で長寿を享受することは誰もの願いです。特に女性の元気は家庭内でも社会的にも、男性の元気にも通じる二重の効果があります。そこで私は、ウェルエイジング(よりよく生きる)のための女性医療には、各種医療の相互の連携・協力により総合的な考え方のもとに全体的に診る全人医療的取り組みが必要であると考え、山王メディカルセンター・女性医療センターで実践いたしております」また太田医師は、日本骨粗鬆症学会の理事長として、骨粗しょう症診療の進展にも情熱を傾けている。
「骨の健康ははあらゆる健康のベースです。今や女性には人生90年時代が到来しています。しかし、寿命は延びても、必ずしも健康長寿には直結していませんし、健康格差があります。女性が老いを恐れることなく、健康長寿を安心して享受するには、骨の健康が大切です。骨の健康をまもることは、ヒトとして生きていく上で不可欠であり、ほかの生活習慣病の予防にもつながります。たとえば、介護・寝たきりになる原因のトップは脳血管障害ですが、2位は骨粗しょう症による骨折です。死亡リスクも、脊椎を骨折した骨粗しょう症の方は、健常者の8倍から9倍も高いのです」
学会を挙げて骨折防止に取り組んでいるが、「日本の骨粗しょう症診療に関する現状は、まだ満足のいくものではない」という。
「患者数は1,300万人とも推定されていますが、治療を受けているのはそのうちの30%程度です。ほとんどの方は病気と認識せず、加齢による不調と片付けて放置している。たとえば身長が2cm以上縮んだら、背骨の骨折を疑うべきです。検査をすれば、50%の確率で骨折が見つかるはず。背骨は、骨粗しょう症になると最も骨折しやすい部位です。日本人女性の3人に1人は背骨を骨折しています。骨粗しょう症になって骨折を起こし、背骨が変形してくれば、内臓の諸臓器を圧迫する呼吸不全、逆流性食道炎、便秘等々、さまざまな病気のリスクが高まります。骨がスカスカになると骨折する前に身体の不調から動けなくなり、肥満度も高まります。しかしながら、一般の方々は骨粗しょう症を年のせいとし、立派な病気であることを知りません」しかも問題は、病院を受診しないことばかりではない。
「一番の問題は、せっかくの医療環境が活用されていないことです。薬剤使用料は世界でも有数なのに、骨折が減らない。その理由の一つは服薬実効率の低さです。60%が1年以内に飲むのを止めてしまいますし、飲み続けても既定の量を飲んでいません。ちゃんと飲まなければ十分に効きません」治療も重要だが、発症予防も重要だ。
「日本はどうしても、発症後の骨折の防止が主体に考えられていますが、骨折があってから薬剤を使うのでは治療効率が極端に悪くなります。無症状のあいだに発見して、予防を開始すべきです。そのためには骨粗しょう症検診や、スクリーニングのための骨量測定が欠かせません。今後10年間にどれくらい骨折リスクがあるかが判る通称フラックス(FRAX)という『WHO骨折リスク評価ツール』があるので、もっと普及させたいと考えています」
予防は、若いうちから始めるのがいいらしい。昨今耳にすることが増えた「骨貯金」だ。
「若い時に『骨の貯金』を多く出来れば、年をとってから骨粗しょう症になるのを防げます。特に、母親が骨粗しょう症の人は遺伝的に骨がもろくなりやすく、若い頃から骨を強くする生活習慣を心がけて欲しいです。10代から体形を気にしてダイエットなんてとんでもないですよ。丈夫な骨は作れません。きちんと食べてしっかり運動するという生活習慣を小学生のころから続けることが何より大切なんです」
骨粗しょう症といえば高齢者が気を付ければいい病気、と思っていたら大間違い。すでに小学生の頃から、骨貯金を増やし、予防をスタートさせるべき病気なのである。

医師プロフィール

1970年 慶應義塾大学卒
1980年 米国ラ・ホーヤ癌研究所留学
1995年 慶應義塾大学産婦人科助教授
2000年 東京女子医科大学産婦人科主任教授
2010年 国際医療福祉大学・臨床医学研究センター 教授、山王メディカルセンター・女性医療センター長
現在に至る