三浦裕正 医師 (みうらひろまさ)

愛媛大学医学部附属病院

愛媛県東温市志津川454

  • 整形外科 人工関節センター
  • 病院長
  • 教授、センター長

整形外科 外科

専門

膝関節外科、変形性膝関節症 、バイオメカニクス

三浦裕正

三浦裕正医師は、整形外科専門医であり膝関節外科のエキスパート。変形性関節症に関してはヒアルロン酸関節内注入による保存的治療や、人工関節置換術をはじめとする手術療法にも詳しく、最新の人工関節についても豊富な研究実績をもつ。中高年に多い膝の痛みやロコモティブシンドローム(運動器症候群)への注意を呼びかけるなどの啓蒙活動も行う。生体工学的研究のセミナーを立ち上げて最先端の情報を学ぶ場をつくるなど「現状維持は後退である」のモットー通りチャレンジ精神に富む医師である。

診療内容

近年「ロコモティブシンドローム(以下、ロコモ:運動器症候群)」という言葉が聞かれるようになったが、まだメタボリックシンドロームほどの市民権までは得ていないのが現状であろう。ロコモとは、2007年に日本整形外科学会が提唱した新しい概念である。加齢に伴う筋力低下や関節や脊椎の病気、骨粗しょう症などにより運動器(骨・関節・筋肉など)の機能が衰え、要介護や寝たきり、あるいは要介護リスクの高まった状態を表す言葉である。加速する高齢化に比例して、ロコモの早期予防の重要性が増しつつあり、同学会によると現在ロコモは予備軍も含めると4,700万人にものぼるとされている。ロコモの原因疾患には変形性膝関節症、脊柱管狭搾症、骨粗しょう症があげられるが、変形性膝関節症治療に詳しい三浦医師は次のように語る。「最近、膝の痛みを訴える中高年の人が大変増えていますが、命にかかわらない上、年のせいだとして軽視されがちです。しかし受診の結果、変形性膝関節症と診断されるケースが多く、膝の痛みで病院を訪れる中高年患者のうち、実に7~8割がこの病気なのです。変形性膝関節症は徐々に進行し、痛みが治まることがあっても、放置すると確実に悪化していきます。早めの受診が大切です」。変形性膝関節症は、膝の軟骨が摩耗(擦り減ること)するために起こるが、三浦医師によると現在のところ変形性膝関節症の潜在患者は2,530万人にも達し、うち850万人に痛みなどの症状があるとの調査結果もあるという(東京大学の調査による)。
変形性膝関節症の治療として、まずは内服による薬物療法(痛み止め)や、ヒアルロン酸関節内注入(ヒアルロン酸を関節に直接注射する方法)が行われる。ヒアルロン酸といえば美容医療のイメージが定着しているが、元来は軟骨や関節液を構成する成分である。「ヒアルロン酸は注射することで潤滑油の役割を発揮し、軟骨のすり減り、痛みや炎症の軽減につながります。毎週の注射を5回続け、さらにその後は月1~2回ペースで継続していきます」。ヒアルロン酸注入は、さらなる悪化を防ぐ効果も期待でき、軽症のうちにこそスタートすると効果的であるという。さらに病気が進行した状態では、関節鏡による手術や、骨切り術(骨を少し切ってO脚を矯正する)、人工関節置換術などが適応となる。「人工関節置換術は主に変形性膝関節症、関節リウマチに対して適応されます。人工関節に置き換える、と聞いただけで抵抗感を抱く患者さんが多いのですが、医療技術がめざましく進歩した現在では傷跡も小さくて済み、以前と比べると患者さんが受ける負担も減ったと言えます」
愛媛大学医学部附属病院では2014年1月に人工関節センターを設置した。「本人工関節センターは、臨床部門、研究開発部門、手術教育部門、オステオサイエンス部門の4部門から構成され、臨床・研究・教育の統合型センターを大きな特徴としています。臨床部門は高度の人工関節手術を患者さんに提供する部門であり、研究開発部門では、医工連携研究を通して、オリジナルの次世代人工関節の研究開発を進めています。手術教育部門では、手術手技研修センターとの連携のもとに、献体を用いた手術トレーニングによって、未来の人工関節医療を担う医師や看護師の技術向上をはかります。また、オステオサイエンス部門は、骨に関する基礎研究を行う部門です。愛媛大学に集結した骨関連領域の優れた基礎研究者が連携し、変形性関節症の病因・病態の解明や合併症の予防に取り組んでいます。今後は、このセンターから、よりよい人工関節をより多くの患者さんに提供できるようにしていきたいと考えています」
運動器の病気を防ぐには早目の受診がカギであるが、最近では「ロコトレ」と呼ばれる、ロコモ予防トレーニングも紹介されている(詳しくは日本整形外科学会HP:http://www.locomo-joa.jp/に掲載)。メタボ同様にロコモティブシンドロームが広く世間に認知され、早期予防に向けた取り組みが活発化することを期待したい。

医師プロフィール

1982年3月 九州大学医学部  卒業
1997年 九州大学医学部附属病院 講師
2008年 九州大学医学研究院 准教授
2010年 愛媛大学大学院医学系研究科運動器学教授
2012年 愛媛大学医学部附属病院 副院長
2015年 愛媛大学医学部附属病院 病院長