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今年、新入社員に気を付けてほしいこと
~適応障害にならないためのアドバイス~ 第60回

 新入社員の研修が行われる季節になりました。昨年はすべてリモート研修という企業が多く見られました。今年は企業により研修のスタイルがまちまちで、会議室に集まって実施する企業もあればリモートで行う企業もあるようです。また、一応会議室で集まり研修をしても、少人数のグループに分けて行い、研修後はコロナ以前のような歓迎会はなく終了、というスタイルです。

各支店をリモートで結び実施された九州電力の入社式(福岡市の九電社員研修所で)

 昨年は新卒の社員が5月から6月にかけて適応障害で体調を崩したり、中にはせっかく就職したのに適応できず夏前に退職したりするような例もありました。学生生活から社会人になって、環境が変わり適応できない、また、直接同僚や上司とコミュニケーションをとる機会が減少して孤独感を感じるなどの背景があると思われます。そこで、新入社員が今、気を付けたいこと、また周りが気を付けたいことについて考えてみました。

 ◇適応障害の症状

 適応障害とは、環境が変わるなどはっきりしたストレス要因があってから3カ月以内に起こる症状をいいます。症状は人により異なりさまざまですが、以下のような症状のうち、いくつかが組み合わさって出現することが多いといえます。

 睡眠障害:眠れない、朝早く目が覚める、睡眠の質が低下

 食欲の変化:食欲がない、過食

 気分の変化:やる気が出ない、楽しいことがない、うつ気分、いらいら

 体調の変化:頭痛、発熱、下痢や胃腸障害

 行動の変化:朝起きられない、おっくうで動けない、物事が決められない

 新入社員が適応障害にならないために大事な四つの対策

 1 起床時間を一定にして生活リズムをキープする

 生活リズムをキープすることは体調を崩さないために大事なポイントです。朝起きる時間を仕事開始に合わせて決めておきます。土、日や休日につい遅くまで寝ていると生活リズムが後退してしまい月曜の朝、起きられなくなったりします。仕事がない日でも、いつもの起床時間より2時間以上遅くまで寝ていないことが大事です。いつも7時に起きている人は、休日でも9時までには起きるようにしておくと夜寝る時間も自然に一定になります。朝起きる時間を守ると夜の寝つきがよくなるはずです。

朝陽を浴びて早朝の高層ビル屋上施設でのヨガイベント(東京・渋谷の渋谷スクランブルスクエアで)

 2 朝時間を生かす

 朝時間は1日の体調や仕事パフォーマンスをキープする決め手になります。朝時間の活用は、その日一日の体調を左右します。朝起きたらカーテンと窓を開けて陽の光を浴びてください。これは朝日を浴びてから14-16時間後に脳の松果体から睡眠を誘導するメラトニンというホルモンが分泌されるからです。それと同時に軽くストレッチや深呼吸をして、自律神経のバランスをとるようにします。朝食も必ず軽く食べてください。朝食を食べないと昼前に血糖値が低くなり、集中力がなくなります。ヨーグルトや果物など簡単に食べられる食材を用意しておいてはいかがでしょう。


 3 バイオレットライトを活用する

 バイオレットライトという名前を聞いたことがありますか。太陽光に含まれるバイオレットライトという成分は、うつ気分に陥るのを防ぐ作用があることが報告されています。このバイオレットライトは近視の予防にも役立つとされていますが、問題はガラスで遮断されてしまうという点です。なるべく外に出て、あるいは窓を開けて太陽の光を浴びることが気分の改善に役立つといえます。昼休みに外に出て散歩する、ランチを外でとる。太陽の光を浴びることが、気分をうつから守る対策になります。

 4 身体を動かす時間を決める

 座りっ放しのデスクワークが続くと、気分がそれだけで落ち込んできます。身体を動かすことが気分を改善することが報告されています。朝のストレッチ、昼休みのちょっとした戸外でのワーキング、仕事終わりでできる運動のメニューを決めて習慣にしておくことが効果的です。

 上司が気をつけてほしい新入社員の適応障害対策二つ

 1 新入社員の孤独を軽減する

 新入社員は、学生から社会人になり、これまで教師から褒められて教育を受けてきた場合が多いのですが、社会人になると周りは褒めてくれることはまずなくなります。研修で厳しく指摘された後、立ち直れなくなる新卒社員もいます。コロナ以前は、厳しい研修でも研修後の飲み会や親睦会で同僚や上司と話し合う機会があり、そこで気分を改善したり、社会人の常識を学ぶ機会があったりしました。しかし、コロナ禍でこうした機会が減り、自信喪失したまま回復するチャンスが少なくなったことも適応障害を生じる背景になっていると思われます。

 その背景を理解しつつ、新入社員が不安を抱えたまま研修を終わらせないように質問時間をとりながらの研修が必要と思われます。一方通行的な研修ではなく、新入社員が孤独感に陥らない工夫が必要でしょう。例えば、不安を抱えたときに相談する部署の周知(産業医や保健師、健康支援室などの連絡先)なども役立ちます。特に、地方から出てきた1人暮らしの新入社員が、孤独感を感じない支援が必要です。「気に掛けてもらっている」と分かる支援が大事です。

 2 新入社員のサインをキャッチする―遅刻に要注意

 適応障害は体調や気分の変化が主体ですが、その最初のサインを見逃さずに声掛けしてほしいものです。最初のサインとして遅刻があります。適応障害では身体がだるくおっくうになるので朝起きられなくなることがしばしばです。遅刻が多くなる、という場合は声掛けして社員がストレスを抱えていないか、聞いてみるなどしてみてください。また、身だしなみが悪くなったりすることも多いので、このような時も声掛けしてください。サインに気がついたら、声掛けして話を聞き、必要に応じて医療機関と連携することも必要です。

(文 海原純子)

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