中村祐 医師 (なかむらゆう)

香川大学医学部附属病院

香川県木田郡三木町大字池戸1750-1

  • 精神科神経科
  • 主任教授

精神科 神経科

専門

老年精神医学、神経化学、認知症、新薬開発

中村祐

中村祐医師はノーベル医学生理学賞の選考委員会が設置されていることでも有名なスウェーデンカロリンスカ研究所で老年医学講座の客員教授を務めるなど、長年、アルツハイマー型認知症の生化学的な病態の解明やアルツハイマー型認知症の治療薬などの新薬の研究・開発に取り組んでいる。2011年に自身が開発に深く関与した抗認知症薬3剤が承認された。これによって患者の選択肢が増え、患者・介護者いずれも認知症治療に対する満足度が上がったという。早期発見・治療による症状の進行抑制の重要性を訴える。

診療内容

2010年までは、抗認知症薬(アルツハイマー型認知症(以下AD)中核症状治療薬)として市販されている薬剤は、コリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジル(アリセプト(Rマーク)、1999年11月薬価収載)のみであったが、2011年に新しく3剤が製造承認を受けた。新しく製造承認された3剤は、コリンエステラーゼ阻害剤であるガランタミン(レミニール(Rマーク))、リバスチグミン(イクセロン(Rマーク)パッチ、リバスタッチ(Rマーク)パッチ)及びNMDA受容体に対する非競合的アンタゴニストであるメマンチン(メマリー(Rマーク))である。コリンエステラーゼ阻害剤同士の併用は現在のところ認められていないが、コリンエステラーゼ阻害剤とメマンチンの併用は可能であり、治療の幅が格段大きくなった。
ガランタミンは、元々マツユキソウの球茎から分離されたものである。ガランタミンには、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用の他に、ニコチン性アセチルコリン受容体(アセチルコリンやニコチンにより刺激を受けると活性化する)へのAPL(Allosteric Potentiating Ligand)作用を持っている。この作用によりalert作用(注意力の向上)があることが特徴。長期的には24mg/dayを服用することにより進行抑制効果を最大限に引き出すことができる。普通錠、OD錠、分包液剤、瓶入り液剤の3剤形と液剤の剤形を有していることも特徴である。尚、液剤には人口甘味料により弱い甘味がつけられている。
リバスチグミンは、元々経口剤として開発されたが、吐き気などの消化器系の副作用が強く、これらの副作用を軽減する目的で貼付剤が開発された。アセチルコリンエステラーゼ阻害作用の他に、ブチリルコリンエステラーゼ阻害作用を有する点にあり、強力に脳内のアセチルコリンを増やすことが期待できる。ADでは、進行に伴いブチリルコリンエステラーゼを多く放出するグリア細胞(神経細胞を支持する細胞)が増えると考えられている。その為、ある程度進行したADにもリバスチグミンは有効であると考えられている。本邦での臨床相試験では、認知機能の他にADL(日常生活機能、Activities of Daily Living)に有効であることが示されている。
メマンチンはNMDA受容体に対して弱く結合することから、正常なグルタミン酸を介する神経伝達には影響しないが、それ以外の過剰なグルタミン酸の刺激から神経細胞を保護する作用がある。メマンチンはコリンエステラーゼ阻害薬(ドネペジル、ガランタミン、リバシチグミン)と全く異なる作用を発揮することから、コリンエステラーゼ阻害薬と併用投与が可能である。メマンチンは、認知機能悪化を抑制する作用以外に、徘徊や常同行為、興奮・攻撃性の予防・改善作用が認められている。
このように、コリンエステラーゼ阻害薬から最も合ったものを1剤、また、メマンチンを併用することにより、これまで以上に認知症の進行を抑制することが可能性が高まった。早く発見できれば、早い段階からこれらの薬が服用でき、進行を抑制することが期待される。

医師プロフィール

1986年 大阪大学医学部 卒業
1996年 大阪大学医学(系)研究科(研究院)助手
2002年 奈良県立医科大学 講師
2003年 奈良県立医科大学 助教授
2005年7月 香川大学医学部 主任教授

「認知症」を専門とする医師