中里良彦 医師 (なかざとよしひこ)
埼玉医科大学病院
埼玉県入間郡毛呂山町毛呂本郷38
- 脳神経内科・脳卒中内科
- 副院長
- 教授 診療副部長
専門
自律神経疾患、神経感染症、認知症。とくに発汗障害、無汗症に詳しい。
医師の紹介
発汗はヒトやウマなど一部の哺乳動物に備わった優れた体温調節機構である。ヒトは汗の蒸発による気化熱で体温を下げて、熱に弱い脳を保護している。したがって、もしも全身の発汗がなくなると体温は上昇し、たちまちうつ熱になって脳に障害が生じてしまう。汗が全く出なくなる疾患を無汗症、発汗が著しく減少した状態を乏汗症という。先天性(遺伝性)に生じる場合と後天性に生じる場合がある。先天性疾患には先天性無痛無汗症や先天性魚鱗癬などの皮膚疾患があるが、現在のところ無汗に対する治療法はない。後天性無汗症は無汗の分布によって、全身性無汗症と汗の出ない範囲が限られる局所性、分節型無汗症がある。全身性無汗症の場合は、運動時や高温環境下ではうつ熱、熱中症になる危険性がある。そのため、常に体温上昇に注意を払う必要がある。とくに夏場の外出や運動は避けなければならないなど生活面での支障が多く、QOLが著しく損なわれる疾患といえる。後天性全身性無汗症については、その原因の特定できるもの(各種皮膚疾患、シェーグレン症候群による汗腺障害、糖尿病等の全身疾患や種々の神経疾患に伴う自律神経や脳、脊髄の神経系の異常、自己免疫性疾患、薬剤など)と、原因不明の特発性後天性全身性無汗症に分類されている。中里医師は特発性後天性全身性無汗症のうち、無汗の原因となる皮膚疾患や無汗以外の自律神経異常を伴わない症例において、いくつかの共通した臨床的特徴を有する症例群を見出し、idiopathic pure sudomtor fairlure(IPSF)として分類、ひとつの疾患単位とするよう提唱している。その共通する特徴とは 1)若年男性に多いこと、2)急性発症し疼痛やコリン性蕁麻疹を伴っていること、3)精神性発汗は保たれており、4)治療には副腎皮質ステロイドが有効であるという点である。そして、IPSFの病態としてエクリン汗腺のアセチルコリン受容体に対する自己免疫疾患である可能性を指摘した。患者は高温環境下や運動で発汗が誘発されると、著明な皮膚疼痛やうつ熱になるが、安静や冷温環境ではまったく異常がない。したがって、安静時に病院を受診しても何ら異常は認めない。IPSFは新しい疾患概念であり、一般人のみならず一般の医師もその疾患の存在を認知しておらず、しばしばヒステリーや心因的問題と誤診されていることがある。これまで、まれな疾患と考えられてきたが、正しく診断されてこなかった可能性があり、潜在的な患者数は多いと思われる。IPSFは早期に診断し治療することで完全寛解が得られることから、中里医師らは本症の啓蒙に努めている。そのため、中里医師のところでは常に10人以上の患者さんと連絡をとり治療を継続している。また、特発性後天性全身性無汗症は平成27年7月1日に国が行っている難治性疾患克服研究事業のうち公費助成の対象となる特定疾患、いわゆる難病には指定されたため、治療を受けやすい環境となった。
診療を受けるには
医師プロフィール
2009年 埼玉医科大学医学部神経内科・脳卒中内科准教授
2019年4月 埼玉医科大学医学部神経内科・脳卒中内科教授
2022年8月 埼玉医科大学病院 副院長
所属学会
主な著書
『感染症内科クリニカルスタンダード』(2008年 文光堂)
『自律神経機能検査法 第4版』(2007年 文光堂)
『橋中心髄鞘ジストロフィー 講義録』(神経学)
『副腎皮質ジストロフィー 講義録』(神経学)
『異染性白質ジストロフィー 講義録』(神経学)
『内科救急プロトコール第2版』(2004年メディカルサイエンスインターナショナル)
『自律神経機能検査 第3版』
『Annual Review 神経 2006』(2006年 中外医学社)
『インターベンション時代の脳卒中学 下』(2006年 日本臨牀社)
『新・図解日常診療手技ガイド』(2003年 文光堂)
『専門家による私の処方』(1996年 日本医事新報社)
『神経内科』
『脳神経筋の自己免疫疾患:無汗症』(Brain medical)
『無汗症と多汗症』(Brain Medical)
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精神・神経科 特任教授
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