爪周囲炎と陥入爪〔そうしゅういえんとかんにゅうそう〕 家庭の医学

 爪周囲炎(爪囲炎とも)と陥入爪(かんにゅうそう)は本来、別々の疾患ですが、いっしょに生じることも多いため、ここではまとめて述べます。

■爪周囲炎
 爪周囲炎は爪の周囲に細菌感染が起こったものをいいます。爪の周囲にはれ、痛み、発赤(ほっせき)が生じ、指で押したり靴で圧迫されると強く痛みます。治療は患部の清潔保持と消毒、抗生物質の服用が中心になります。感染を悪化させないことが重要で、悪化すると「ひょう疽〈そ〉」と呼ばれる状態になることもあります。

■陥入爪
 陥入爪は爪の角の部分が皮膚に食い込んだ状態を指します。爪が食い込むことで痛みが生じるほか、前述の爪周囲炎が生じてしまうこともあります。陥入爪はきつめの靴による圧迫が原因となるほか、爪を短く切りすぎることによっても生じます。
 陥入爪の状態となり痛みが生じた場合は、かかとの低い、先のゆったりした靴を選んで履くように心掛け、爪は短く切りすぎないようにし、爪部の清潔保持に努めます。また、爪の皮膚への食い込みを避けるためにテーピングをしたり、爪と皮膚の間に小さな綿球をはさむこともあります。軽症であればこういったセルフケアで改善することもありますが、痛みが続く場合や感染が生じた場合は医師による治療が必要になります。
 医師による治療には、爪の一部を切除する手術や薬剤で爪の幅を狭くする治療(フェノール法)、アクリル製の人工爪を使って爪の食い込みを防ぐ方法などがあります。なお、爪が横方向に彎曲する巻き爪の状態になると陥入爪が起こりやすくなります。巻き爪に対しては手術のほか、特殊なワイヤーを用いた矯正もおこなわれるようになっています。

【参照】形成外科:陥入爪・巻き爪

(執筆・監修:東京大学大学院総合文化研究科 教授〔広域科学専攻生命環境科学系〕 福井 尚志)
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