新型コロナウイルス感染症〔しんがたころなういるすかんせんしょう〕

[原因]
 人に感染するコロナウイルスには、日常のかぜの原因となる4種類のほか、近年動物から人に感染して重症の肺炎をおこす2種類(重症急性呼吸器症候群コロナウイルスSARS-CoVと中東呼吸器症候群コロナウイルスMERS-CoV)が知られていました。2019年12月に中国の武漢で集団発生した新型肺炎の原因として新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が特定され、またたく間に全世界へとその感染がひろがりました。
 感染経路はおもに飛沫(ひまつ)感染ですが、ウイルスに汚染された環境に触れることによる接触感染もあります。換気のわるい密閉空間ではウイルスを含むエアロゾールが数時間空気中を漂い、感染に関与することがわかっています。

[症状]
 潜伏期は1~14日(オミクロン株では2日程度)です。せき、のどの痛み、発熱、倦怠(けんたい)感などの感冒症状のほか、味覚や嗅覚(きゅうかく)の障害を伴うことがあります。成人では1週間後に20%程度が肺炎になり、さらに5%程度はその後数日以内に重症の呼吸不全に進行しましたが、オミクロン株からは病原性が弱まりました。小児では、かぜ症状がほとんどですが、熱性けいれんクループ肺炎、まれに重症な脳炎を起こすこともあります。
 症状出現の2日前から10日後まで、ほかの人へ感染させる可能性があります。
 一部の症状(倦怠感、脱毛、睡眠障害、嗅覚障害、味覚障害、せき、頭痛、関節痛など)が長びくことがあり、後遺症として報告されています。後遺症の多くは時間の経過とともに軽快していく傾向があります。

[検査]
 診断は鼻咽頭ぬぐい液や唾液のPCRなどの核酸増幅法(検出したい特定のウイルスの遺伝子を試験管内でふやすことによって、高感度に検出する方法)がもっとも信頼性が高い検査です。検査結果が15分程度でわかる抗原検査キットも広く用いられています。

[治療]
 せきや発熱への対症療法が中心ですが、中等度以上の肺炎に対しては抗ウイルス薬のレムデシビルやステロイド薬を用います。ニルマトレルビル/リトナビル、エンシトレルビルなどの内服薬もありますが、重症化リスクの有無、発症からの日数、すでに内服している薬剤などを考慮して適応が決まります。クループ、脳炎などは、病気に対する特別な治療が必要です。

[予防]
 手洗いの励行やマスクの着用、人との距離を2m以上あける、3密対策(密集、密接、密閉を避ける)をおこないます。
 ワクチンはきわめて効果的であり、変異株では感染予防効果は下がりますが、重症化予防は高く保てています。子ども用のワクチンも用いられています。

【参照】呼吸器の病気:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)

(執筆・監修:自治医科大学 名誉教授/茨城福祉医療センター 小児科 部長 市橋 光

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