斎藤博久 医師 (さいとうひろひさ)

国立成育医療研究センター病院

東京都世田谷区大蔵2-10-1

  • 副研究所長

アレルギー科 皮膚科 内科

専門

アレルギー疾患全般、アトピー性皮膚炎

斎藤博久

斎藤博久医師は、長年にわたってアレルギー疾患の診療に携わり、アレルギー研究の第一人者として知られる。厚生労働科学研究や環境省による大規模疫学調査など、さまざまな場で責任者として研究を牽引し、リーダーシップを発揮してきた。日本アレルギー学会理事長として専門医の育成にも熱心で、すべての医師が高い水準の治療を提供するべきだという“均てん化”対策にも注力する。テレビなどのメディアを通した啓蒙活動にも積極的で、アトピー性皮膚炎を予防する「肌の保湿」の重要性を説いている。

診療内容

アトピー性皮膚炎に代表されるアレルギー疾患は、いまだメカニズムが解明されていない部分が多く、2010年以降も新しい報告が相次ぎ、状況はめまぐるしく変化している。この状況下、斎藤医師は2013年6月に日本アレルギー学会理事長に就任し、アレルギー疾患研究の第一線で研究に携わっている。

アレルギー疾患には多くの誤解があり、今なお悩む患者が多い。たとえば、食物アレルギーは、妊娠中・授乳中の母親が摂取した食物が原因だという理由で、卵や牛乳などのアレルゲンとなりうる食物を避ける女性が少なくない。これについて斎藤医師は「食物アレルギーを発症した子どもにはその食物の摂取を制限することは必須であるものの、日本小児アレルギー学会の診療ガイドラインでは、子どものアレルギー発症を予防するために母親がアレルゲンを含む食品を避けることは推奨できないとしています。子ども自身がその食品を食べることについても、食べたほうが免疫寛容が機能してアレルギーを防ぐことにつながります。」と指摘する。

治療にステロイド外用薬を用いるべきではないという説も、アレルギー疾患を取り巻く誤解の一つだ。かつてこの説が一般の人々の間に広がったため、斎藤医師はその対応に追われた苦い経験を持つという。「私が国立相模原病院の小児科医長だった頃、多くの患者さんがメディアの情報を信じ込んでステロイドを使わなくなってしまいました。薬を中断して悪化した人が増え、一日で20名ものアトピー性皮膚炎新患患者が来院したほど。現在はそういった人もいなくなりましたが…」と過去を振り返る。

こうした誤解に対し、斎藤氏は、患者だけではなく医師への啓発の必要性を説く。班長を務めた「アレルギー疾患対策の均てん化に関する研究班」(厚生労働科学研究)では、2014年に全国調査を実施。「同研究班の調査で、アレルギー科を標榜している医師の中には、学会推奨の標準治療を実施していない医師もいることが浮き彫りになりました。症状に合った治療を受けられないまま改善しない患者がいるのは残念なことです」(斎藤医師)。たとえば、アトピー性皮膚炎に対してステロイド外用薬を必要な量を塗布するよう指導するはずが、半数を超える患者が薄く塗布するよう指導されていることがわかったという。規定量を期間内に使うのであれば副作用はほとんどないので、過不足なく薬を使用することが必要だ。

現在、アトピー性皮膚炎を予防する上で斎藤医師が注目するのは、肌の保湿だ。「食物アレルギーが皮膚から起こる可能性があるというのは、イギリスのラック教授の研究に基づく説です。私たちの研究グループが行った調査(2014年)でも、肌をきちんと保湿すればアトピー性皮膚炎を発症する可能性が3割以上も下がるという結果が出ました。アレルゲンが皮膚から入ることは確実で、アレルギー発症の根本的な原因が乳幼児期の、特に湿疹のある皮膚のバリア機能の低下にあることがわかっています」(斎藤医師)。大部分の食物アレルギーは経皮感作によって起こり、アレルギー性鼻炎や喘息などのアレルギー発症につながるというのが現在主流の説だ。斎藤医師は、生後半年までは肌の保湿を徹底するよう指導する。

アレルギーを引き起こす原因となるIgE抗体が発見されたのは1966年、50年あまりが経過した。その発見者の石坂公成医師は、斎藤医師の恩師にあたる人物。斎藤医師はその志を引き継ぎ、アレルギー疾患への誤解をなくし、適切な治療が提供される体制づくりに向けて、今後も研究に注力する方針だ。

医師プロフィール

1977年3月 東京慈恵会医科大学卒業
1986年2月 米国Johns Hopkins大学Research Fellow
1988年7月 国立小児病院 アレルギー科医員
1994年1月 国立相模原病院 小児科医長
1996年5月 国立小児病院小児医療研究センター・免疫アレルギー研究部部長
2002年3月 国立成育医療研究センター研究所 免疫アレルギー研究部部長
2003年8月 東京慈恵会医科大学小児科客員教授(兼任)
2008年4月 東邦大学大森病院小児科客員教授(兼任)
2010年4月 独立行政法人国立成育医療研究センター 副研究所長
2015年4月 国立研究開発法人国立成育医療研究センター 副研究所長
2015年4月 東北大学客員教授(兼任)

「アトピー性皮膚炎」を専門とする医師