メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症〔めちしりんたいせいおうしょくぶどうきゅうきん(えむあーるえすえー)かんせんしょう〕

 黄色ブドウ球菌は、けがをしたとき傷口に膿瘍(のうよう)を形成する化膿菌で、むかしは病勢が進行すると敗血症となり、全身の臓器に転移性膿瘍を形成し、多くの人が死亡しました。ペニシリンGの登場により治療可能となりましたが、ペニシリンGを破壊するペニシリナーゼという酵素を産生する耐性菌が院内感染症の起因菌としてまん延しました。ペニシリナーゼに抵抗性のある抗生物質としてメチシリンが開発され、黄色ブドウ球菌感染症に有効となりました。その後、治療医薬としての主役はセファロスポリン系抗菌薬にゆずりましたが、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA:Methicillin‐Resistant Staphylococcus aureus)感染症が院内感染の起因菌として増加し始めました。
 MRSAは敗血症のほか、肺炎、消化管感染症、膿胸、褥瘡(じょくそう:床ずれ)、新生児に多い新生児TSS(Toxic Shock Syndrome:トキシックショック症候群)様発疹(ほっしん)症(新生児の発熱性発疹性疾患)などを起こします。
 このようにメチシリン耐性黄色ブドウ球菌は院内感染対策上重要な細菌として位置づけられておりますが、近年は市中感染においても伝染性膿痂疹(とびひ)や重症肺炎などの原因菌として問題となっています。
 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は、メチシリンのみならず多くの抗菌薬に耐性があり、セファロスポリン系抗菌薬をはじめとするすべてのβ-ラクタム系薬(ペニシリンの仲間の抗菌薬)に対して耐性を示します。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌に対しては、バンコマイシン、テイコプラニン、アルベカシン、ダプトマイシン、リネゾリドなどの抗MRSA薬が有効です。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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