ペニシリン耐性肺炎球菌感染症〔ぺにしりんたいせいはいえんきゅうきんかんせんしょう〕 家庭の医学

 肺炎球菌は肺炎の原因として、もっとも頻度の高いものです。このほか、しばしば中耳炎や髄膜炎の原因ともなります。
 ペニシリンは細菌のペニシリン結合たんぱくに結合し、細菌の細胞壁の合成を阻害して細菌を殺しますが、ペニシリン結合たんぱくに変化が生じると、ペニシリンや同系統であるセファロスポリン系抗菌薬が結合しにくくなり、効きにくくなってしまいます。このような変化したペニシリン結合たんぱくの遺伝子は、レンサ球菌などから入ってくると考えられています。
 ペニシリンが効きにくくなった肺炎球菌が、ペニシリン耐性肺炎球菌です。ペニシリン系やセファロスポリン系抗菌薬をくり返し、または長期に使っていると、このような耐性菌が優勢になります。むかしはペニシリンが効きましたが、セフェム系抗菌薬がよく使われるため、1980年代後半からペニシリン耐性肺炎球菌がどんどんふえ、肺炎球菌の60%以上がペニシリン耐性肺炎球菌によって占められるようになってしまいました。ペニシリン耐性肺炎球菌はペニシリンに耐性であるばかりでなく、ペニシリンの仲間のセファロスポリン系などの抗菌薬やマクロライド系抗菌薬など、ほかの多くの抗菌薬が効かないため、治療上の問題となります。
 ただ、小児に対する肺炎球菌ワクチン接種が進んだ最近では、ペニシリン耐性肺炎球菌は減少傾向にあります。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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