播種性クリプトコックス症〔はしゅせいくりぷとこっくすしょう〕 家庭の医学

 カビの仲間であるクリプトコックス属真菌による感染症のうち、この菌が髄液、血液などの通常は無菌の部位から検出された感染症、または脳脊髄液のクリプトコックス莢膜抗原(きょうまくこうげん)が陽性となった感染症です。健常者における侵襲性真菌感染症では、国内で頻度がもっとも高いとされています。
 クリプトコックス属真菌は、おもに肺や皮膚から感染して病巣を形成します。肺クリプトコックス症が多いですが、播種(はしゅ)性感染症を起こすことがあり、特に中枢神経系(脳や脊髄)に侵入して、脳髄膜炎を起こすことが多いといわれています。腎疾患、膠原病、悪性腫瘍、糖尿病やステロイド投与などがクリプトコックス症のリスク因子であり、ヒト免疫不全症候群ウイルス(HIV)感染はクリプトコックス脳髄膜炎のハイリスクとなります。
 診断は感染部位からの病原体の検出、クリプトコックス莢膜抗原の検出によりおこないます。
 フルシトシン、アムホテリシン、フルコナゾールなどの抗真菌薬により治療します。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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