腹部のしこり 家庭の医学

 腹部のしこりに自分で気づいている人は意外に少なく、医師の診察中に偶然見つかることがあります。腹部のしこりは、硬くなった便が触れていることも多いですが、がんなど重大な病気がひそんでいることもあり、医師に診てもらう必要があります。
 上腹部のしこりであれば、胃がんや肝臓の病気の可能性が高く、しこりが硬く、あまり動かない場合は膵臓がんも考えられます(膵がん)。左上腹部のしこりなら脾臓のはれを、下腹部のしこりなら大腸がんや婦人科の腫瘍(子宮筋腫、子宮がん、卵巣がんなど)が疑われます。
 やわらかいしこりでは、腹部のヘルニアの可能性があります。外ヘルニアと呼ばれ、腹腔内臓器がヘルニア嚢(のう)に包まれたまま皮下に脱出したものです。臍(さい)ヘルニア、正中腹壁ヘルニア、腹壁瘢痕(はんこん)ヘルニア、鼠径(そけい)ヘルニアなどがあります(参照:腹壁の構造とヘルニア)。

(執筆・監修:国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 名誉院長 大西 真)