便秘〔べんぴ〕 家庭の医学

 便秘は排便の回数が減って、便が硬くなることをいいます。通常1日1回排便がありますが、2~3日に1回、または週に1回しか便通がないこともあります。便通がなくても、症状がなければ医学的にはさしつかえないと思われます。しかし、便通がなくて不快感を伴うようなら、原因をはっきりさせて治療をしなくてはなりません。
 問題のある便秘としては、大腸で便の通りがわるくなること(大腸がんや直腸付近の腫瘍、腸の癒着〈ゆちゃく〉など)があります。肛門の病気、たとえば痔(じ)で便秘になることもあります。これは、便通によって肛門に痛みを感じ、排便を避けようとするためです。
 そのほか、手術のあとに腸の動きが悪くなり、便秘になることがあります。また、先天性の腸の異常で便秘をきたす場合もあります。
 これまで述べた便秘は原因のはっきりしたものですが、原因のよくわからないものを「常習性便秘」といいます。常習性便秘は2つあり、1つは、腸の緊張がわるくなっているために起こる「弛緩(しかん)性便秘」で、便をためておく癖のある人にみられますが、それほど症状はありません。もう1つは、逆に腸の緊張が強くて起こる「けいれん性便秘」で、多くは頭痛、イライラ、のぼせ、めまい、吐き気、不眠などを伴います。

■養生法
 原因がはっきりしている便秘の場合はその治療をします。
 常習性の便秘の養生法は次のとおりです。
 1.毎日1回、決まった時間にトイレに行く習慣をつけます。便意がなくても、朝一度はトイレに行き、排便しようと努力します。ただ、出そうもないのに長時間座り続けるのはよくありません。
 2.体操や水泳などの運動をして、腹筋を鍛えます。腹筋を強くすることは、排便するうえで大切です。腹部のマッサージをするのもよいでしょう。
 3.食事療法…朝起きぬけに冷水または冷たい牛乳をコップ1~2杯飲んでみるのもよいでしょう。食事内容としては、繊維の多いもの、豆類、海藻、こんにゃく、芋、きのこ、竹の子などをできるだけ食べるようにします。水分をとるのも大切です。
 4.下剤と浣腸(かんちょう)…便秘がなかなかな治らないときは、薬としての下剤をのむ前に、健康食品として市販されている繊維製品をとってみます。それでだめなら、下剤をのみますが、下剤にもさまざまな種類があり、便の量を多くする薬や便をやわらかくする薬から始めます。腸を刺激する下剤もありますが、はじめからこれを使うことはすすめられません。下剤はできるだけ続けて服用しないようにします。常用すると、かえって便秘がひどくなることがあるからです。さらに浣腸はできるだけ使わないようにし、医師の指示に従います。

(執筆・監修:国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院 名誉院長 大西 真)
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