歯の異常 家庭の医学

 冷たい水や空気に触れたときにだけ歯が痛む場合には、初期のう歯(むし歯)や歯のすり減りが考えられます。このような初期に治療をすれば、比較的簡単に完全に治ります。
 歯根膜炎では、歯を動かしたりたたいたりしたとき、かみ合わせたときに痛みがあります。ひとりでにズキズキ痛む場合には、急性歯髄炎や歯根膜炎からあごの骨の炎症に移行するサインで、激しい痛みのために夜も眠れないことがあり、ときに頭や耳にもひびきます。
 歯の周囲の骨や歯根膜に炎症があるときや、歯槽膿漏(しそうのうろう)やあごの腫瘍により歯のまわりの骨が吸収・破壊されると、歯がゆるみます。金属をかぶせた歯がゆるみ、にぶい痛みを感じるのは慢性歯根膜炎です。
 熱のある病気、腎臓病、糖尿病などでは、歯が浮いて食事がとりにくくなることがあります。また、酸っぱい物を食べたときやかたい物をかみすぎたときにも歯が浮きます。
 特に運動したときなど、一時的に奥歯や下あごの痛みが生じる場合には、狭心症など心臓病が原因の可能性があります。多くは胸や背中の痛みを伴いますが、歯を調べても異常がない場合には内科を受診するとよいでしょう。

 歯をみがいたり、りんごなどをかじったりしたときに血が出る場合は、歯肉炎や歯槽膿漏が考えられます。出血が持続してとまりにくいときは、白血病や紫斑(しはん)病など血液病の可能性も考えなければなりません。奥歯の根の部分が赤くただれてくずれ、歯が浮くようなときは、がんや肉腫、血液の病気の可能性があり要注意です。

 歯ぎしりは、過度の精神的緊張などのために、無意識に力が入って咀嚼(そしゃく)筋がけいれんを起こし、かみ合っている上下の歯が左右に動くときに、すれて音を立てるものです。緊張の原因がなくなれば、自然に治ります。

■歯の異常
症状病名そのほかの症状など
歯が痛む齲歯(う歯)冷たい物でしみる
急性歯髄炎歯周のはれ
急性歯根膜炎歯がゆるむ、浮く、たたくとひびく
歯がゆるむ、浮く歯槽膿漏歯肉のはれや痛み、歯ぐきからの出血、口が臭い
あごの腫瘍あごの変形、腫瘤
慢性歯根膜炎くり返す歯肉の痛み、はれ、熱感
歯ぐきからの出血歯肉がん歯肉のはれ
歯肉炎歯肉のはれ、痛み、口が臭い
歯槽膿漏歯肉のはれや痛み、歯がゆるむ、浮く、口が臭い
白血病鼻血、貧血、皮下出血、息切れ
紫斑病鼻出血、発作性の腹痛、皮下出血
壊血病皮下の点状出血、ビタミンCの欠乏
血友病大きな紫斑、関節内出血、遺伝性
歯ぎしり神経症不安、皮膚のかゆみ


(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 総合診療部 部長 細田 徹