鼻の異常 家庭の医学

 ある物質に対するアレルギーによる鼻炎がアレルギー性鼻炎で、くしゃみ、鼻汁、鼻づまりがみられ、目がかゆくなります。スギの花粉によるものは早春に、ブタクサによるものは夏~秋に起こります。これに対し、血管運動性鼻炎では、アレルギーの原因物質が見あたらず、くしゃみや急な鼻汁はみられるものの、目の症状は少ないのがふつうです。
 急性鼻炎では、はじめ鼻の中がかわいて痛いような感じがし、水様の鼻汁が出て、だんだんと濃い、うみのような鼻汁に変わり、発熱やさむけを伴います。急性副鼻腔(ふくびくう)炎では、多くは片側の鼻づまりがひどく、膿汁(のうじゅう)が出ます。慢性鼻炎や慢性副鼻腔炎でも、同様の症状がみられます。また、扁桃(へんとう)肥大やかぜの初期には、よく鼻がつまります。
 鼻を打ったときや強くかみすぎたとき、鼻の内部を傷つけたときには、誰でも出血します。鼻とのどとの境界に、出血しやすい部分があります。高血圧や心臓の病気、肝臓の病気、白血病、紫斑(しはん)病など、出血傾向をきたす病気でしばしば鼻血が出ます。鼻のがんは、鼻出血の見のがせない原因です。片側性の血がまじる鼻汁が続く場合は、早めに耳鼻科を受診するのがよいでしょう。鼻茸(はなだけ)や鼻ジフテリア、月経時のほか、交通事故の際の鼻血は、頭蓋底骨折による可能性があるため、注意しなければなりません。
 鼻の病気のために嗅(きゅう)神経がおかされ、末梢神経に臭気がとどきにくくなり、嗅覚がにぶくなることがあります。かぜや副鼻腔炎のときに起こります。逆に嗅覚が過敏になることもあり、ヒステリー、神経衰弱、妊娠、月経時などにみられます。また、実際にはにおいがないのに感じることがあり、薬物中毒やノイローゼでみられます。

■鼻の異常
症状病名そのほかの症状など
鼻汁と鼻づまり血管運動性鼻炎急な鼻汁、くしゃみ、かゆみはない
急性鼻炎くしゃみ
急性副鼻腔炎頭痛、膿性鼻汁、顔面の痛み
慢性鼻炎粘性の鼻漏
慢性副鼻腔炎顔面の痛み、鼻の奥の痛み、膿性鼻汁
鼻血が出る高血圧症不眠、めまい、耳鳴り、頭痛、肩こり
白血病歯ぐきからの出血、貧血、皮下出血、息切れ
紫斑病歯ぐきの出血、発作性の腹痛、皮下出血
鼻の腫瘍片側に血がまじる鼻汁、進行性
鼻茸鼻閉感
鼻ジフテリア鼻づまり
頭蓋底骨折さらさらした鼻血


(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 総合診療部 部長 細田 徹