顔のかたち・顔つきが変わる 家庭の医学

 顔の一部分の外傷や腫瘍のように、外見ですぐわかる場合のほかに、耳鼻咽喉(いんこう)や歯・あごの病気のためにはれる場合、内臓の病気によってむくむ場合、脳・神経や精神の病気が原因で表情が変わる場合、などがあります。

 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)は子どもに多く、耳の下がふくれ、押すと痛みがあり、ひどくなると痛みのために、口を大きくあけたり、かたいものを食べたりできなくなります。う歯(むし歯)や歯槽膿漏(しそうのうろう)から起こる急性化膿(かのう)性歯根膜炎や智歯(ちし〈親しらず〉)周囲炎では、ほおやあご、ときには上唇が急にはれます。三叉(さんさ)神経痛では顔がピリピリ痛んで顔のかたちが変わり、夜も眠れないことがあります。
 脳卒中や顔面神経まひでは、まひのために顔の片側の緊張がなくなって、よだれを垂らしたり、片方の目が閉じにくくなったりします。顔面神経まひは、神経が急に冷やされたとき、たとえば、窓をあけたまま眠り、冷たい風に当たったときなどに起こります。
 パーキンソン症候群では、無表情な顔つきとなるのが特徴です。それに加えて、小刻み歩行、手足のふるえ、聞き取りにくい小さな声などの症状があらわれます。

 顔のむくみは、飲酒後などにみられ、病的でないものもありますが、糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、心不全などの内臓疾患では、全身のむくみの一環として出現します。クッシング症候群や副腎皮質ステロイドの長期服用により、顔が赤く、満月様になります。
 発作的に顔の筋肉の一部にけいれんを起こすのはチックで、てんかんや破傷風では、突然笑ったような顔つきになります。
 目が飛び出したようにギョロッと大きくなるのは、目の腫瘍やバセドウ病の特徴で、痩せたり、動悸(どうき)がしたりします。

■顔のかたちが変わる
症状病名そのほかの症状など
顔の一部がはれる流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)耳下部のはれ、痛み、発熱
歯根膜炎歯肉のはれ、痛み
智歯周囲炎奥歯のはれ、痛み
三叉神経痛片側の顔面の痛み
唾石痛み
片側の顔面のまひ脳卒中意識障害、吐き気・嘔吐、便秘
顔面神経麻痺口や目が閉じない
無表情パーキンソン症候群小刻み歩行、手足のふるえ、筋肉のこわばり
薬物中毒薬の服用、舌のしびれ、皮下出血、鼻出血、不随意運動
赤く円形の顔貌クッシング症候群皮下出血、肥満、皮膚の赤い線条、多毛、高血圧
ステロイド薬の長期服用臓器移植後、自己免疫性疾患など
むくみ急性糸球体腎炎発熱、尿が少ない、血尿
ネフローゼ症候群全身のむくみ、尿が泡立つ、体重増加
慢性腎臓病倦怠感、尿が少ない、食欲がない
心不全血たん、疲れやすい、食欲がない、息切れ、冷え
けいれんチック子どもに多い、顔面や肩の急な運動
てんかん発作的な意識消失、発作をくり返す、筋の急な収縮や脱力
破傷風意識障害・失神、口が開きにくい、発熱
目が出たように大きい目の腫瘍進行性
バセドウ病動悸、やせ、甲状腺のはれ、多汗


(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 総合診療部 部長 細田 徹