くびの異常 家庭の医学

 数日のうちにくびがはれて痛むものには、おできの?(せつ)や癰(よう)、リンパ節炎、急性蜂窩織(ほうかしき)炎があり、だんだんとグリグリができて長く続くのはリンパ節の病気を考えてよいでしょう。甲状腺がはれるバセドウ病や甲状腺腫では、くびの前がふくらんで見えます。バセドウ病は女性に多く、眼球突出、動悸(どうき)や多汗が主症状ですが、甲状腺のはれは意外と気づきにくいものです。
 くびが痛い場合は、手を使う仕事をしている人にみられる頸肩腕(けいけんわん)症候群、頸椎(けいつい)の骨折・脱臼(だっきゅう)、起床後に片側のくびが痛む寝ちがえ、肩こりに伴ってくびから後頭部にかけて不快な痛みがくる緊張型頭痛などが考えられます。
 くびが曲がっている場合には、斜頸や、くびが回らない頸椎の脱臼、後縦靱帯骨化症(こうじゅうじんたいこつかしょう)などがあります。後縦靱帯骨化症では、手の知覚まひや歩行障害を伴います。
 くびの筋肉が硬直し、発熱・頭痛・吐き気を伴う場合には、脊髄の病気、髄膜炎、脳炎、くも膜下出血に注意しなければなりません。

■くびの異常
症状病名そのほかの症状など
くびがはれる?(せつ)癰(よう)局所の化膿
リンパ節炎リンパ節の発赤、腫大、発熱、悪寒(さむけ)
急性蜂窩織炎皮下の発赤、熱感、痛み
バセドウ病動悸、やせ、甲状腺のはれ、眼球突出、多汗
甲状腺腫くびの前面のはれ
結核性リンパ節炎リンパ節が赤くはれる
くびの痛み頸肩腕症候群手のしびれ、肩こり、肩の痛み
頸椎捻挫手足のしびれ、外傷の既往
寝ちがえ寝たあとの片側の痛み
緊張型頭痛肩こり、慢性的な頭痛
むち打ち症手足のしびれ、頭痛、交通事故後など
くびが曲がる斜頸顔を回しにくい
後縦靱帯骨化症手の知覚障害、歩行障害、肩の痛み
髄膜炎発熱、頭痛、嘔吐、意識障害・失神、吐き気
脳炎発熱、意識障害、吐き気・嘔吐、頭痛


(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 総合診療部 部長 細田 徹