女性性器の異常 家庭の医学

 下腹部が痛む婦人科領域の原因としては、外陰炎、バルトリン腺炎、ヘルペス腟(ちつ)炎、子宮内膜症、子宮頸管(けいかん)炎、子宮腟部びらん、卵巣嚢腫(のうしゅ)などが考えられます。外陰炎や子宮内膜症では悪臭を発する場合があります。また、産科の病気としては、流産、異所性妊娠(子宮外妊娠)、胎盤早期剥離(はくり)、胞状奇胎(ほうじょうきたい)などが考えられます。特に、卵巣嚢腫の茎捻転(けいねんてん)と異所性妊娠に伴う卵管破裂は、緊急の手術が必要です。
 陰部のかゆみの原因には、カンジダ腟炎、トリコモナス腟炎、糖尿病などがあります。
 性器からの出血は、通常の月経のほか、性交、外傷、異物、炎症、腫瘍などが原因となります。また、排尿時に少量の出血をみとめるものとして、子宮頸部のびらん、子宮頸がん、子宮体がんなどがあります。血液の病気や肝臓病などでも性器出血が起こります。

■女性性器の異常
症状病名そのほかの症状など
下腹部の痛み外陰炎外陰部の発赤、はれ
バルトリン腺炎腟口の発赤、痛み
ヘルペス腟炎腟の激しい痛み、ただれ
子宮内膜症月経の周期で痛みが変化、月経過多、下腹部圧痛
子宮頸管炎おりものがふえる
子宮腟部びらん性器出血、おりものがふえる
卵巣嚢腫下腹部のしこり、片側性、寝るとひっこむ
流産性器出血
異所性妊娠(子宮外妊娠)不正出血、腰痛、破裂するとショック
胎盤早期剥離性器出血
胞状奇胎性器出血
ベーチェット病口内炎、陰部潰瘍、全身の発疹、視力低下
陰部のかゆみカンジダ腟炎ヨーグルト状のおりもの
トリコモナス腟炎悪臭を伴う黄色い泡状のおりもの
糖尿病口渇、尿の回数や量が多い、尿の甘いにおい、夜間尿、全身倦怠感、やせ
性器出血子宮頸部のびらんおりものがふえる
子宮頸がん不正出血、比較的若い女性
子宮体がん閉経後の不正出血
前置胎盤妊娠後期
肝硬変黄疸、腹水、出血傾向、息切れ、吐血、食欲不振、疲れ


(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 総合診療部 部長 細田 徹