男性性器の異常 家庭の医学

 睾丸(こうがん)が痛む場合、にぎると、かたくはれた精巣上体(副睾丸)を触れることが多く、精巣上体炎(副睾丸炎)が疑われます。陰嚢(いんのう)自体の炎症から起こるものには毛嚢炎や蜂窩織(ほうかしき)炎、鼠径(そけい)ヘルニアが考えられ、はれて痛みがあります。鼠径ヘルニアは、陰嚢のすこし上、大腿と腹の境がふくらみ、この中に腸やほかの臓器が出てくる状態です。大きくなると、陰嚢の中まで達します。ベーチェット病では、陰嚢がただれ、しこりや潰瘍がみられます。
 陰嚢水腫(すいしゅ)は陰嚢がはれる病気で、男児に先天的にみられることがあります。ふくろの中に水がたまっているため、光を当てると透けて見えます。また、陰嚢水腫は腎臓病、肝臓病や心臓病による全身のむくみに伴っても起こります。
 陰茎の症状として、尿道炎では排尿時痛があり、性感染症の軟性下疳(なんせいげかん)では潰瘍があってただれます。亀頭にしこりがあり、潰瘍がある場合は陰茎がんが疑われます。
 陰毛根部の発赤・腫脹は毛包炎、陰嚢に発赤・浸出液がみられる場合は白癬(はくせん)や湿疹(しっしん)が疑われます。陰部の白癬では、小さな水疱(水ぶくれ)をもつ赤い丘疹が輪状にみられます。湿気が多い部分なので、中心部は完全に治らず、湿疹様の変化が長く残ります。
 陰茎がなんとなくかゆいのは、尿道炎や、トリコモナスが入った可能性があります。トリコモナスは寄生虫の一種で、男性の場合は尿道の奥から前立腺にすみつき、なかなか治らないことがあります。
 淋菌(りんきん)性の場合は、黄色で濃いうみがみられ、排尿時の痛みも強いのが特徴です。いっぽう、非淋菌性尿道炎では、尿道の出口から、薄黄色か白色でサラサラしたうみが出ます。

■男性器の異常
症状病名そのほかの症状など
睾丸が痛む精巣上体炎睾丸の辺縁が痛い、陰嚢内の痛みを伴うしこり
陰茎・陰?が痛む毛包炎毛根部の発赤、腫脹
急性蜂窩織炎皮下の発赤、腫脹、熱感
鼠径ヘルニア股関節部の腫脹
ベーチェット病口内炎、陰部潰瘍、全身の発疹、視力低下
陰?がむくむ陰?水腫光を当てると透ける
腎臓の病気尿の回数や量が多い、食欲がない、むくみ、高血圧
心不全血たん、食欲がない、冷え
陰茎がはれて痛む尿道炎排尿痛、尿の濁り、発赤
軟性下疳うみをもった米粒大のできもの
陰茎がん腫瘤がみとめられる
陰部のかゆみ毛包炎陰毛根部の発赤、腫脹
湿疹ただれ、発赤、表面がジメジメ
白癬発赤、浸出液、陰部や趾間の湿疹
尿道炎排尿痛、尿の濁り、発赤
排尿痛トリコモナス尿道炎無症状の場合もある


(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 総合診療部 部長 細田 徹