舌の異常 家庭の医学

 舌は、健康の一つの指標になります。舌があれて痛み、吐き気・下痢・食欲不振を伴うときは、胃腸病、慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍が考えられます。
 さらに舌がかわいて割れる場合は、重い全身病、特に肝がん、膵(すい)がん、直腸がんなどが考えられます。

 ただれて痛むのは舌炎、舌潰瘍のほか、舌がんでも、舌のへりに治りにくいただれができたり白くなったりします。舌炎・舌潰瘍や蜂窩織(ほうかしき)炎が進行すると、舌が赤くはれて動かしにくくなります。薬の副作用でも口内炎を生じ、舌にも強い炎症を起こすことがあります。
 舌全体に異様な強い痛みをうったえることがあり、舌痛症といわれ、心因的な要因が考えられます。白い斑点ができるものには、アフタ性舌炎や鵞口瘡(がこうそう)、ベーチェット病が考えられます。鵞口瘡は、口腔内に常在するカンジダが原因で、新生児や乳幼児、高齢者にみられ、免疫力の低下や口腔の不潔さを契機に発症します。口腔粘膜、歯肉、舌表面に扁平(へんぺい)な白色膜が付着し、むりにはがすとびらんができたり出血したりします。ベーチェット病では、口腔粘膜に痛みを伴う潰瘍があらわれ、眼の脈絡膜(みゃくらくまく)炎による視力低下、四肢に痛みのあるクルミ大の発疹(ほっしん)や、陰部潰瘍がみられます。

 子どもの急性の感染症には、麻疹(はしか)でみられる赤い発疹(ほっしん)など、特徴的な症状があります。川崎病では、発熱後2~3日で目が充血し、くちびるも赤くなります。全身の皮膚に赤い発疹が出て、口の中も赤くなり、舌はいちごのように赤くブツブツになるのが特徴です。
 舌のしびれは、薬物中毒や糖尿病などで起こります。また、神経筋疾患で舌にシワがよって小さくなること(萎縮)があります。

■舌の異常
症状病名そのほかの症状など
舌があれる慢性胃炎胸やけ、食欲不振、口が臭い、胃のもたれ
胃・十二指腸潰瘍食欲不振、上腹部痛、胸やけ、吐き気・嘔吐、吐血、黒色便(血便)
肝がん黄疸、やせ、食欲不振、疲れやすい
膵がん黄疸、やせ、食欲不振、便通異常
直腸がん血便、下腹部のしこり、便秘
舌がただれて痛む舌炎舌の局所の発赤、腫脹、味覚障害
舌がん舌の局所の発赤、腫脹
急性蜂窩織炎皮下の発赤、腫脹、熱感
舌痛症精神的
白い斑点アフタ性口内炎痛みや潰瘍
鵞口瘡(口腔カンジダ症)乳幼児や高齢者、苔状白斑、味覚障害
ベーチェット病口内炎、陰部潰瘍、全身の発疹、視力低下
赤い斑点川崎病いちご舌、発熱、目の充血、全身の発疹
舌のしびれ薬物中毒薬の服用、皮下出血、鼻出血、不随意運動
糖尿病口渇、尿の回数や量が多い、尿の甘いにおい、夜間尿、全身倦怠感、やせ
神経筋疾患手の筋力低下、筋萎縮、肩こり


(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 総合診療部 部長 細田 徹