見えにくい 家庭の医学

 見えにくいとうったえるときは、視力が低下している場合と、視野が狭くなっている場合があります。視力低下の原因で多いのは、近視、遠視、乱視、老眼といった屈折異常で、目の水晶体の調節作用が低下したために起こり、眼鏡やコンタクトレンズで矯正します。

 白内障は水晶体が白く濁る病気で、生まれつきの場合もありますが、多くは高齢者や糖尿病、目の外傷後に生じます。緑内障は、眼圧が異常に高くなった状態で、ひとみの奥が青く見え、放置すると視力が徐々に低下します。
 ビタミンの不足でも視力が低下します。ビタミンAが欠乏すると、夜盲(とりめ)が起こり、夜間や暗いところでよく見えなくなります。ビタミンB1が欠乏すると視神経炎となり、明るいところでまぶしく、見ようと思うところに影ができます。ビタミンB2欠乏によるびまん性表層角膜症では、くろめに薄い濁りが無数にでき、涙が出ます。
 角膜ヘルペス実質型やぶどう膜炎でも視力低下をきたしますが、ぶどう膜と網膜に炎症を起こす膠原(こうげん)病にベーチェット病があります。視力の落ちる網膜の病気としては、糖尿病性網膜症、硝子体(しょうしたい)出血、中心性漿液(しょうえき)性網脈絡膜(もうみゃくらくまく)症、網膜剥離(はくり)などがあり、いずれも全身の重大な病気に伴う可能性があります。
 視神経系の萎縮(いしゅく)でも視力が低下し、脳腫瘍の場合には視野の欠損が起こります。
 そのほかに、遺伝的に色の区別がつきにくい色覚異常があります。全色盲はまれで、日本人には、赤系や緑系の識別に困難を感じる赤緑色弱が多い傾向にあります。

■見えにくい
症状病名そのほかの症状など
見えにくい近視遠くが見えにくい
遠視近くも遠くも見えにくい
乱視物が歪んで見える、二重に見える、回転性のめまい
老眼40歳代以降、近くが見えない
白内障かすんで見える
緑内障眼痛、頭痛、吐き気
夜盲暗いところで見えにくい
視神経炎中心部が見えない、急な視力低下
点状表層角膜症異物感、流涙、痛み
角膜軟化症両眼の角膜がかわく、栄養不足
角膜ヘルペス実質型進行性の片側の視力障害、充血
ぶどう膜炎霧視(かすみがかかった感じ)、まぶしい
ベーチェット病口内炎、陰部潰瘍、全身の発疹
糖尿病網膜症眼底出血、失明
硝子体出血飛蚊症、視野が狭くなる
中心性漿液性網脈絡膜症中心部が暗く見える、物が歪んで見える
網膜剥離飛蚊症、視野が狭くなる
脳腫瘍耳鳴り、吐き気・嘔吐、頭痛、片まひ、しびれ、けいれん
脳出血(後頭部)急に視野の一部あるいは片側が見えなくなる
動眼神経まひ物が二重に見える
色覚異常色の区別がつきにくい


(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 総合診療部 部長 細田 徹