重症熱性血小板減少症候群〔じゅうしょうねっせいけっしょうばんげんしょうしょうこうぐん〕 家庭の医学

 重症熱性血小板減少症候群(SFTS:Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome)ウイルスによる感染症で、マダニ媒介感染症です。
 2011年に中国の研究者らによりはじめて報告され、その後、日本と韓国でも報告されています。国内では、西日本を中心に患者の報告があります。シカ、イノシシ、イヌ、アライグマ、タヌキなどの野生動物とマダニの間にSFTSウイルスの生活環ができていると考えられています。人への感染は、主にSFTSウイルス保有マダニにかまれることによりますが、中国や韓国では、患者血液・体液との接触による人から人への感染も報告されています。
 潜伏期は5~14日間で、発熱、消化器症状(食欲不振、嘔気〈おうき〉、嘔吐〈おうと〉など)、頭痛、筋肉痛の症状が出現し、病状が進行してくると意識障害などの神経症状、歯肉出血や下血などの出血症状を伴うようになります。身体所見では、表在リンパ節の腫脹や、上腹部の圧痛がみとめられ、血液検査では白血球減少、血小板減少、肝機能障害がみられます。致死率は10~30%と高いです。
 診断は、血液、咽頭ぬぐい液、尿からの病原体、病原体遺伝子の検出、血中特異抗体の検出によりおこないます。特異的な治療法、予防法はありません。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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