ジカウイルス感染症〔じかういるすかんせんしょう〕 家庭の医学

 ジカウイルスによって起こる感染症です。
 ジカウイルスは、1947年にウガンダのZika forest(ジカ森林)のアカゲザルからはじめて分離され、人からは1968年にナイジェリアでおこなわれた研究のなかで分離されたのが最初です。
 デング熱と同様に、ネッタイシマカやヒトスジシマカなどのヤブカの仲間により媒介される、蚊媒介ウイルス感染症の一つですが、血液や体液の中にウイルスが存在するため、輸血や性交渉により人から人への感染を起こす場合もあります。また、感染した母親から胎児に垂直感染を起こし、小頭症や頭蓋内石灰化、その他の先天性障害を来す先天性ジカウイルス感染症を起こすことが知られています。

 先天性ジカウイルス感染症以外のジカウイルス感染症(ジカウイルス病)の場合、一般的には媒介蚊に刺されたり性交渉のあと、2~12日(多くは2~7日)の潜伏期を経て発熱(多くは38.5℃以下)、発疹(ほっしん)などで発症します。感染したにもかかわらず感染症状が出てこない不顕性感染が多く、感染者のうち、発症するのは約20%とされています。関節痛、結膜充血、頭痛、後眼窩部痛、筋痛、関節腫脹などを伴いますが、多くの場合重症化することなく数日程度で回復します。先天性ジカウイルス感染症は母体が不顕性感染の場合でも発症します。2016年の南米大陸での流行では、多くの水頭症の児が出生し、問題となりました。
 診断は、血液、臍帯(さいたい)、臍帯血、胎盤、尿、髄液からの病原体および血液、髄液からの特異抗体の検出によりおこないます。
 特異的な治療法、予防法はありません。
 流行地ではヤブカに刺されないよう日中の防蚊対策をおこなうことと、流行地滞在中および流行地から帰国後一定の期間は、性交時にコンドームを着用すること、女性は妊娠しないようにすること、献血をしないことを心掛けましょう。最近の流行地は中央および南アメリカ大陸、カリブ海地域、南太平洋地域、東南アジアなどです。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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