キャサヌル森林病〔きゃさぬるしんりんびょう〕 家庭の医学

 キャサヌル森林病ウイルスによる感染症です。
 このウイルスは、インドで発見され、自然界では、マダニとネズミなどのげっ歯類を主とする脊椎動物の間で感染環が維持されています。人への感染もマダニにかまれることで生じます。これまで国内での発生はありません。
 潜伏期は3~12日であり、突然の発熱、頭痛、筋肉痛、せき、徐脈、脱水、低血圧、消化器症状、出血などをきたします。約40%に出血性肺水腫がみられ、時に腎不全も生じます。患者の15~50%では1~3週間寛解(病気による症状がおさまっている状態)が続いたのち、再度発熱がみられ、髄膜炎脳炎を生じて項部硬直(くびすじがかたくなること)、精神障害、振戦(しんせん)、めまいなどをきたします。致死率は3~5%で、後遺症を残すことはありません。
 診断は血液・髄液からの病原体、病原体遺伝子、特異抗体の検出によります。特異的な治療法や予防法はありません。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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