Q熱〔きゅーねつ〕 家庭の医学

 リケッチアの一種のコクシエラ・バーネティーによって起こる感染症です。
 重要な人獣共通感染症の一つで、1935年オーストラリアの屠畜(とちく)場の従業員の間で流行した原因不明の熱性疾患として発見されました。Q熱という病名は、「Query fever(不明熱)」に由来しています。ほかのリケッチア症は媒介動物に刺されることによって感染しますが、Q熱の場合には媒介動物はいません。通常は家畜やネコなどのペットの流産や出産に関連して、胎盤に感染しているコクシエラ・バーネティーを吸入するなどによって、2~3週間の潜伏期を経て発症します。
 急性Q熱ではインフルエンザのように突然の高熱、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感、眼球後部痛の症状で始まります。自然治癒傾向が強く、多くは14日以内に解熱します。間質性肺炎が主体の肺炎型や、肝機能異常が主体の肝炎型があり、予後(病気の経過についての見通し)は一般によいとされていますが、急性型の1割程度が慢性Q熱に移行するとされ、弁膜症などの基礎疾患をもつ例で心内膜炎を起こすと難治性となり、致死率が高くなります。
 診断は血液からの病原体、病原体遺伝子、特異抗体の検出によります。
 テトラサイクリン系などの抗菌薬が治療に用いられます。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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