ベネズエラウマ脳炎〔べねずえれうまのうえん〕 家庭の医学

 ベネズエラウマ脳炎は、トガウイルス科アルファウイルス属に属するベネズエラウマ脳炎ウイルスによりひき起こされる蚊媒介感染症です。自然界では、イエカとネズミなどの間でウイルスの生活環が維持されており、人とウマが終末宿主(感染源とはならない最終的な宿主)となります。人への感染は感染した蚊に刺されることにより成立し、実験室内においてはエアロゾルの吸入による感染も報告されています。
 人が感染した場合、1~6日間の潜伏期ののち軽度のインフルエンザ症状、すなわち激しい頭痛、悪寒(おかん)、発熱、筋肉痛、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)、眼窩(がんか)痛を示します。脳炎を発症した場合には、けいれん、まひなどの脳炎症状が観察されます。脳炎を発症した場合の致死率は20%前後で、感染者全体の0.5~1%にあたり、特に15歳以下の子どもの発症リスクが高いとされています。
 コロンビア、ベネズエラなどの中南米を中心に発生が報告されており、1995年にはベネズエラを中心として10万人以上が感染し、300人ほどの患者が脳炎を発症しました。これまで日本国内での発生はみとめられておりません。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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