Bウイルス病〔びーういるすびょう〕 家庭の医学

 マカク属のサルに常在するBウイルス(ヘルペス群ウイルス)による熱性・神経性疾患です。サルにかまれて傷ができたあと、症状発現までの潜伏期は早い場合には2日、通常2~5週間です。
 早期症状としてはサルとの接触部位(外傷部)周囲の水疱(すいほう)性、あるいは潰瘍性皮膚粘膜病変、接触部位の疼痛(とうつう)、そう痒(よう)感、所属リンパ節が腫大し、中期症状としては発熱、接触部位の感覚異常、接触部位側の筋力低下、あるいは、まひがみとめられます。目にサルの分泌物などが入った際には結膜炎を起こします。
 晩期には副鼻腔炎(ふくびくうえん)、項部強直(こうぶごうちょく)、持続する頭痛、悪心(おしん)・嘔吐(おうと)、脳幹部症状としては複視、構語障害、めまい、失語症、交差性まひおよび知覚障害、意識障害、脳炎症状をきたし、治療しない場合の死亡率は70~80%です。生存例でも重篤な神経障害が後遺症としてみられます。
 感染経路は実験室、動物園あるいはペットのマカク属サルとの接触(咬傷〈こうしょう〉、擦過傷)およびそれらのサルの唾液、粘液と人粘膜との接触(とびはね)などが考えられます。また、実験室ではサルに使用した注射針、培養ガラス器具による外傷によっても感染することが知られています。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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