野兎病〔やとびょう〕 家庭の医学

 野兎病は野兎病菌(Francisella tularensis)による発熱性疾患で、保菌しているノウサギ、ネコ、リスなどとの接触により感染します。傷口や気道から感染しますが、ダニやアブが媒介することもあります。野兎病は北米、北アジアからヨーロッパに至る、ほぼ北緯30°以北の北半球に広く発生していて、国内では東北地方全域と関東地方の一部が多発地域となっています。冬季に多いのが特徴です。
 3日~2週間の潜伏期ののち、高熱と頭痛、関節痛などで発病します。菌の侵入部の皮膚には炎症が強く潰瘍ができます。リンパ節腫脹を主症状とするリンパ節型と、脳や肺、肝などの内臓を障害する内臓型があります。内臓型は重症化しやすいのですが、さいわい日本では大部分がリンパ節型で、内臓型はあまりありません。
 リンパ節型では侵入部位の皮膚の炎症についで、所属リンパ節が腫大し、しばしば融合して自潰(じかい)します。
 確定診断は、病巣部ぬぐい液、摘出リンパ節、リンパ節穿刺(せんし)液、咽頭ぬぐい液からの病原体または病原体遺伝子の検出によりおこないます。
 治療には、ストレプトマイシンもしくはゲンタマイシンとテトラサイクリンを併用します。
 予防には、流行地のノウサギなどの動物で弱ったものや死んだものにはさわらないようにし、また、生肉なども食べないようにすることが大切です。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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