レプトスピラ症〔れぷとすぴらしょう〕

 スピロヘータの仲間の病原性レプトスピラ(Leptospira interrogansなど)による人獣共通感染症です。
 ウシ、イヌ、ウマ、ブタなどの家畜にみられましたが、それだけではなくネズミ、キツネザルにも感染します。病原性レプトスピラを保有しているネズミ、イヌ、ウシ、ウマ、ブタなどの尿で汚染された下水や河川、泥などにより経皮的に(皮膚を通して)、時には汚染された飲食物の摂取により経口的に人に感染します。ブラジル、ニカラグアなどの中南米、フィリピン、タイなどの東南アジアなど、熱帯、亜熱帯の国々で流行がみとめられています。国内では、衛生環境の向上などにより近年患者数はいちじるしく減少しましたが、現在でも散発的な発生は各地でみとめられており、特に沖縄県では散発、集団発生事例が多く報告されています。
 症状は多彩で、3~14日の潜伏期の後、突然の悪寒(おかん:さむけ)、戦慄(せんりつ)、高熱、筋肉痛、眼球結膜の充血が生じ、その後黄疸、出血傾向、腎障害などの症状がみられる場合があります。重症型の黄疸出血性レプトスピラ病(ワイル病)と、軽症型の秋季レプトスピラ病やイヌ型レプトスピラ病などがあります。
 確定診断は、血液、髄液、尿からの病原体もしくは病原体遺伝子の検出などによりおこないます。
 治療にはテトラサイクリン系やペニシリン系の抗菌薬が有効です。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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