神庭重信 医師 (かんばしげのぶ)

九州大学病院

福岡県福岡市東区馬出3-1-1

  • 精神科神経科
  • 教授

精神科 神経科

専門

精神医学、特に気分障害、精神科薬物療法、ストレス科学、行動遺伝学

神庭重信

日本うつ病学会の前理事長、日本精神神経学会の副理事長を務める、うつ病の診断・治療のオピニオンリーダー。精神医学を、生物学的、心理学的、社会的な次元に加え、実存的・哲学的問題も関与する、極めて幅広い領域と理解し、多様なアプローチで研究と治療に取り組んでいる。教鞭をとる九州大学では「『心を知り、脳を知り、人間とその社会を理解できる』優秀な精神科医」の育成に尽力中。多数の著書・エッセイを通じて、社会への発信も積極的に行っており、文化的な視点など、多彩な視野から語られるうつ病論のファンも多い。

診療内容

「うつ病治療で、私が一番大事だと思うのは、初診時の診たてを伝えることです。あなたの病気はどういう病気なのか? どのように治療したらいいのか? どのくらいの期間で治るのか? さらに『ほとんどの場合はよくなりますから、安心してください』と予後をお伝えします。そうやって信頼関係を構築するところから、治療が始まるのです」と神庭重信医師は言う。
診断から治療、その後のフォローに至るまで、最も重視しているのは面談だ「たとえば発達障害の人が、職場不適応をきっかけにうつ病になった場合にはまず『あなたは対人関係のスキルがもしかしたら苦手なのではありませんか。たぶんそこから来る葛藤や悩みが、うつ病の状態を引き起こしているのだと思いますよ。だから今はまず、仕事を休むなり、調子が悪いことを上司に伝えて、早めに帰れるようにしてもらうなどしながら、うつ状態を治していきましょう。その先には、あなたの対人関係のスキルを一緒にスキルアップしていきましょう』と話します。これが、職場に過剰適応し、がんばり過ぎて、疲弊型のうつ病になっている人の場合には、全然違う話になります。そういう人に『しばらく仕事から離れて静養したらどうですか』というと、だいたい責任感が強いので『自分は仕事を休むわけにはいかない、みんなに迷惑かける』とおっしゃいます。その場合は『今は病気のせいで、十分な力を発揮できていませんよね。これ以上悪くするよりは、早めに休んで、回復して、戻れるように頑張る方が先決なんじゃありませんか。急がば回れと言いますね』と説得して、休んでもらいます。そして回復してきたら『今度は職場に戻っても、普段は力8割で、いざというときには10割。ワークライフバランスも考えて働いてくださいね。上手にノーと言えるようになりましょうね』というようなアドバイスをします」かける言葉は、人によって違う。千差万別な人の心を診る精神科の治療には、究極のテーラーメイド医療とも呼べそうな細やかさが求められる。
「軽症の場合には、病気への理解を含めてもらい、現実的な問題を一緒に考えて環境調整を行い、薬を服用しないで治せる方法があるかどうかを探ります。認知行動療法は、自分のまわりのできごとを、どうせ駄目だとか、すべて自分が悪いなどと悲観的・否定的に考えてしまう癖を理解して、ほかのとらえ方ができるように訓練する療法です。こうした思考ができるようになれば楽になりますし、再発の予防にもなります。一方森田療法は、あなたはあるがままの生き方をしていい、変わらなくていいんだと肯定する療法です。両者は水と油ですが、私は患者さんの状態によって、認知行動療法が必要な場合と森田療法的な心理支援が必要な場合とがあると思います。また、自殺の可能性がひっ迫している、あるいは全身状態が悪化しているような、緊急性が高い患者さんに対しては、入院して頂くことや、さらには修正電気けいれん療法を行うこともあります。どれがベストチョイスかは、患者さんの全身状態を見ながら決めていきます」
さらに、回復後の職場復帰のサポートも、重要な治療の過程だ。
「回復して、復帰する過程では、職場との調整も必要です。産業医と連携して『まずは定刻勤務から再開しましょう』というように、徐々にステップアップするプログラムを作成してもらい、実行していただきます。会社によっては上司が相談に来てくれる、熱心なところもあります。すべては本人の許可を得てですが、このように、一緒に復職を進めて行くのも大事です」
本人の心の中に留まらない、取り巻く環境にも働きかける全人的理解と治療を行っているのである。
そんな神庭医師が、治療の際に心かげているのは「褒めること」
『よくやれましたね、がんばりましたねとか、外来にいらしてくれたら一言ねぎらうようにしています。2週間職場で頑張って、特にくずれもなく次の診察に来られたら、よかったですね、おつかれさまでしたとか、一言かけてあげたら、またがんばってくれるのではないかと思うのです』

医師プロフィール

1980年 慶應義塾大学医学部卒業、慶應義塾大学病院精神神経科入局
1984年 米国メイヨクリニック精神科 レジデント・講師
1993年 慶應義塾大学 講師
1996年 山梨大学精神神経医学講座 教授
2003年 九州大学医学研究院 精神病態医学分野 教授
現在に至る

「うつ病」を専門とする医師