デング熱〔でんぐねつ〕

 ヤブ蚊の仲間のネッタイシマカ、ヒトスジシマカなどによって媒介されるデングウイルスによる感染症です。比較的軽症のデング熱と、重症型のデング出血熱とがあります。

 デングウイルス感染症がみられるのは、媒介する蚊の存在する熱帯・亜熱帯地域、特に東南アジア、南アジア、中南米、カリブ海諸国ですが、アフリカ・オーストラリア・中国・台湾においても発生しています。全世界では年間約1億人がデング熱を発症し、約25万人がデング出血熱を発症すると推定されています。国内では、海外渡航で感染し国内で発症する例(輸入症例)がほとんどですが、2014年の夏季には輸入症例により持ち込まれたと考えられるウイルスにより150例以上の国内流行が発生しました。国内では、おもにヒトスジシマカが媒介蚊となります。
 デングウイルスに感染した場合、約50~80%は感染したにもかかわらず感染症状が出てこない不顕性感染に終わると考えられています。
 症状を示す患者の大多数は、デング熱と呼ばれる一過性熱性疾患の症状を呈します。通常2~14日(多くは3~7日)の潜伏期のあと、突然の発熱で始まり、頭痛特に眼窩痛・筋肉痛・関節痛を伴うことが多く、発熱のパターンは二峰性になることが多いようです。発症後、3~4日後より胸部・体幹から始まる発疹(ほっしん)が出現し、四肢・顔面へひろがります。これらの症状は1週間程度で消失し、多くは後遺症をみとめることなく回復します。
 デングウイルス感染後、デング熱とほぼ同様に発症し経過した患者の一部において突然、血漿(しょう)漏出と出血傾向を主症状とする重症のデング出血熱を発症することがあります。重篤な症状は、発熱が終わり平熱に戻りかけたときに起こることが特徴的です。
 デングウイルスには4つの血清型(細胞表面の抗原の違いを基にした分類を血清型という)がありますが、ある血清型のウイルスに感染したのちに別の血清型のウイルスによる二度目の感染を起こしたときに、重症化する確率が高くなるといわれています。
 血液中のウイルス遺伝子の検出、非構造タンパク抗原(NS1抗原)の検出などにより診断が確定します。
 特異的な治療はありません。
 予防には、日中に蚊に刺されない工夫が重要です。ワクチンが開発され、海外で承認されていますが、国内では未承認です。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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